あらすじ
「SFが読みたい! 2024年版」国内篇第1位著者が描く
本好きの、本好きによる、本好きのための本
消えてゆく本
書けなくなった詩人
「本の魔窟」に暮らす青年
本であふれた世界に、希望はあるか?
本を、小説を、書くことを愛しすぎている人たち<ビブリオフォリア>の紡ぎ出す、どこか切ない未来
作家は、小説は、本は、どういう未来に向かっているのかーー
読書に関する特殊な法律が課された世界の作家 「ハンノキのある島で」
正確に訳すことが限りなく不可能なマイナー言語の日本で一人の翻訳者 「バベルより遠く離れて」
あらゆる小説を斬りまくる文芸評論家が出会った、絶対に書評できない本 「木曜日のルリユール」
書けなくなった元「天才美人女子大生」詩人のたったひとつの願い 「詩人になれますように」
「本の魔窟」に暮らす蔵書家が訪れた不思議な古本屋 「本の泉 泉の本」
いろいろな書き手のもとを巡っていくダブルクリップの旅と、本にまつわる5つの物語
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
〇ハンノキのある島で
本の寿命を定め古典以外は断裁する読書法が制定された世界で、自分の著書をハンノキのある島に流そうとする。
〇バベルより遠く離れて
戦後の近未来、チャツネ・キムチ・メシウマの小説の翻訳家と日本語で呪いをかけられたフィンランド人の帆のhン文化研究家
〇木曜日のルリユール
メッタ切の小説評論家が学生時代書いて破棄した小説を書店で見つけて。
Posted by ブクログ
短編集。世の中には無数の本がある。かつて出された本。これから出る本。自分には読めない言語で書かれた本。本になる見込みはなく本にしようというつもりで書かれたわけでもないけれど、いつか、誰かによって書かれた文章。読み尽くせるわけがない、全ての言語が理解できる者など存在するわけがない、読んだとしても理解できているとは限らない、なにかの賞をとったとして、その受賞にどれだけの意味があるのかもよくわからなくなっている。そのような諦念がどの作品にも充満している。無限に広がっていくような古書店のなかをさまよう『本の泉 泉の本』が一番好き。最後のほうに描かれている情景は、わたしも二〇一一年に経験しているので、当時を思い出した。
Posted by ブクログ
本を主軸にしたSFチックな短編集。可愛らしい表紙とは裏腹に、重めで思考させるような作品が続く。本が好きな人には是非読んでほしい。
『ハンノキのある島で』は増えすぎた娯楽作品を制御するため「読書法」という仕組みができた世界。溢れかえる娯楽作品に翻弄されることに共感はするものの、こんな世界にならないことを願う。
『バベルより遠く離れて』は悩める翻訳家の物語。翻訳というものの妙や翻訳家の悩みが身に染みる。訳すとは何か、物語を受け取るとは何か、ということを考えさせられる。
『木曜日のルリユール』は辛口でぶった斬る系書評家の書評できない作品『木曜日のルリユール』という作品をめぐる話。書評家と『木曜日のルリユール』の著者による罵倒合戦では、それまで小難しい言葉を捏ねくりまわしていた書評家が小学生のような語彙を連発する。メッキが剥がれたような描写で面白かった。
『詩人になれますように』は一躍詩人として時の人となった主人公が詩を書けなくなり、しがない事務員として働く毎日。そこへ過去を知る人物が現れる話。産みの苦しみがひしひしと伝わりこちらも苦しくなるが、他作品よりも着地点には希望を感じる。
『本の泉 泉の本』は『ハンノキのある島で』の世界。(おそらく少し前の時系列)四郎が友人と本を物色し、帰る間際になり地震が起こる。SFというよりは幻想小説に近い気がする。タイトル通り様々な本が矢継ぎ早に出てくるが、それらが作品世界においてどんな意味を持つのかこの短編では分からなかった。この世界観の長編を読んでみたい。
Posted by ブクログ
短編の主人公たちそれぞれの作品に対する想い。いつの時代も、救いになる本もあれば、ただ読み捨てられていく本もある。一冊一冊に著者がいて、そこに想いがあって、思いがけず読む人の糧になっているものだと思う。無駄な本なんてない、と思いたい。
Posted by ブクログ
【収録作品】ダブルクリップ-プロローグ-/ハンノキのある島で/バベルより遠く離れて/木曜日のルリユール/詩人になれますように/本の泉 泉の本/ダブルクリップ再び-エピローグ-
「ハンノキの……」本は出版されるものの、保存されないことが基本となった世界。作家はある噂を頼りに進む。
「バベルより……」南チナ語の翻訳者が出会った、不死の呪いをかけられたという異国人。呪いを解く方法について相談される。
「木曜日の……」辛口書評家が出会った幻の自作小説。
「詩人になれますように」詩人になりたいと願った少女の現在の姿。
「本の泉 ……」「本の魔窟」に埋もれる青年。
本の呪いか祝福か。足下がふと揺らぐような怖さを感じる。
Posted by ブクログ
へんてこな話だなぁという印象を強く受けた。
連作短編集なのかと思いきや短編集で、ただ共通しているのは本や言葉がテーマになっている点だ。
どれもショートショート的にオチのつく話ではなく、ポンと投げ出されたように終わる話もあるので評価が分かれるところ。個人的にはちょっと変わった話として好みである。
Posted by ブクログ
本にまつわる5篇で構成された短篇集。
「読書法」なる法律が施行され、出版された本は6年で“完全に”抹消される世界を描いた「ハンノキのある島で」。
南チナ語の日本でただ1人の翻訳者が出会った奇妙な外国人との交流を描く「バベルより遠く離れて」。
すべての小説に牙を剥く文芸評論家が書評できない唯一の本とは?「木曜日のルリユール」。
願いを2つ叶えてくれる勾玉に「詩人になれますように」と願った少女の顛末「詩人になれますように」。
奇妙な古本屋で古本を渉猟する2人の男を描いた「本の泉 泉の本」。
つまらなくはないが、特におもしろいとも思わなかった。好き者向けの1冊。