あらすじ
後宮で人質兼八十七番目の愛妾として、王の訪れもなく孤独に暮らす小国の王子リクハルド。絵を描くことだけを楽しみに、十二歳からの十年を慎ましく過ごしてきた。ある時、そんな彼の元へこの国の第三王子であるフェリクスが忍んできた。実はフェリクスは第一側妃シルヴィアの不義密通を暴くために、後宮での協力者を得ようとしていた。王太子を排除し、病床に就く現国王の跡を継ぐという野心を持っていたからだ。フェリクスは目的を知らせず、リクハルドに近づいて彼と親しくなる。リクハルドの単調な日々は、フェリクスの訪れにより彩られていく。母国から十分な仕送りがない上にシルヴィアの横領で後宮費は届かず、つましい生活をおくるリクハルドにとって、フェリクスの笑顔は心を温め、画材や薪などの差し入れは心身を助けるものだった。リクハルドはフェリクスに惹かれ始め、いつしか彼の肖像を描きたいと願うようになる。一方、フェリクスは苛立っていた。ずっと放置されてきたに等しいリクハルドが何も欲せず、誰も恨まず、儚い笑顔を浮かべつつも淡々としているからだ。そんな純真無垢なリクハルドを利用して、手駒にすることに迷いが出始める。こうしてフェリクスも、いつしかリクハルドに惹かれていたのだが……? 野心家の王子×純真無垢な王子、宮廷シークレット・ロマンス!!
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読みやすくわかりやすい
ある王国の王子と、属国の王子で後宮の人質兼側妃のお話。贅沢三昧の第二側妃を追い落とそうと画策する王子が、後宮の駒として目をつけたところから始まる。不義の証拠を見つけさせる使い捨ての駒だと思いながら、誰も恨まず穏やかで慎ましく暮らす誠実な人柄を知るにつけ想いを募らせるようになる。王道展開で特に酷い場面もなく、安心して読めた。ずっと気になっていたのが、愛妾という呼称。気にも止められていない側妃を愛妾と呼ぶのはかなり違和感。寵愛著しい側妃の事を呼ぶ呼称だと思っていたので。あと、人質の取り方が雑。まるで数を競うように集めた、との記述があり、なかなか酷いと思った。王太子になった王子の婚約破棄も唐突すぎて、遺恨が残りそうで心配。かなり展開が速いとは感じた。でも、薄幸の側妃が幸せになるハピエンは大好き。