【感想・ネタバレ】経済学の思考軸 ――効率か公平かのジレンマのレビュー

あらすじ

経済学は、資源や財源など与えられた制約の中でどうやりくりするかという問題に絶えず直面し、解決策をひねり出そうとします。「拡大する格差を何とかするには」「全世代型社会保障は可能なのか」「市場メカニズムのカギを握る情報というファクター」「人口減少下におけるトレードオフの大命題」……難題の数々に、経済学の“ものの考え方”を駆使して、効率と公平という2本の評価軸をもとに、その発想と思考を交通整理します。「経世済民」をとことん突き詰め、社会全体の「幸せ」について追究する一冊。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

誰一人悪くならないで、少なくとも一人が良くなることをパレード改善的、という。
一人を良くするためには、誰かが悪くなる場合は、パレード効率的、という=パレード改善的になる余地がない。
補償原理=悪くなった人の分を補っても、より誰かが良くなること=カルドア基準。実際には実現しない。
GDPが増えても、国民全体が幸せか、とは別問題。

選択的夫婦別姓はパレード改善になる。しかし反対の人はそういう社会が嫌だと思っている。
社会保障は、社会連帯のみで考えるべきではない。給付と負担の損得勘定も正しい。在職老齢年金があるために働き控えをすることは、社会から見ると正しくないが、個人から見れば正しい。生活保護も同じ。
貧困の罠はモラルハザードの典型例。

経済学では幸せを効用で図ろうとする。

経済学では生活必需品こそ消費税を書けるべき、となる。需要の価格弾力性が低いため、税収が多くなる。そのほうが効率的、と考える=ラムゼーの逆弾力性命題。
低所得者ほど影響がでるが、それは所得補償などの再配分で補うほうが効率的、と考える。まず効率性を考えて、公平性はそのあと考える。
たばこ税は、この典型。たばこは需要の価格弾力性が低い。たばこ税は2兆円で大きな財源。たばこ税を上げるのは、税収の面では優れているが、負担しているのは主に低所得者。

税率は一律が望ましい。食料品を定率にすると高所得者のほうが恩恵が大きい。複数税率にするよりも所得によって給付するほうが効果的。
では、高所得者のほうが支出が高い項目に課税したらどうか。金持ちほど教育費にかけているが、教育費の消費税を高くすることは社会全体の労働生産性を考えると望ましくない。
消費税で所得再配分をすることは難しい。

所得格差は望ましくない、という格差回避をリスク回避という個人レベルに翻訳している。個人はリスク回避性が高いため、社会レベルの格差問題を個人に置き換えて訴えるほうが理解を得やすい。
格差回避は社会の問題、リスク回避は個人の問題。

ベンサム的立場は、社会全体の幸せが一人に偏っていようと、総数で多ければいい。効率性を重視。
ロールズ的立場では、最低の幸せの人を底上げしようとする。公平性を重視。
分けて考えることはできない。
所得格差を小さくしたら経済成長が高まる、という裏付けはない。
ベーシックインカムと負の所得税は、労働意欲を損なわない巧妙な仕掛け。

市場メカニズムに頼るのは楽観的すぎる。厚生経済学の第一定理は狭い範囲でしか該当しない。ただし、競争が良くないわけではない。前提条件が間違っている事が多い。失敗例は、公害、情報の非対称性、など。
医療保険の強制加入は効率的か。医療保険の逆選択があるとうまく行かないため、強制加入としているというのが経済学的な説明だが、公平性の観点から強制加入を説明できるのではないか。医療保険は、所得の移転効果もあるがこれを強調するのは無理がある。
医療保険の問題点は、保険料にリスクに応じた差をつけられないこと、高額医療費をどうやって賄うか。
教育も市場の失敗がありうる。教育の効果にはギャンブル性がある。公平性を教育前のチャンスに求めるか、教育後のアウトプットに求めるか。

情報収集にはコストがかかる。世の中にはそれをパスできる仕組みがある。年功序列はそのひとつ。成果主義を徹底するには、成果を正確に収集する事が必要。AIによる人事考課は有効かもしれない。
社会保障制度の中で年齢は有効か。

セカンドプライスオークション=嘘をついても意味がない=正しい自分の評価をいうことが一番いい。しかし困ったことになるかは不明。

議論の中に時間を組み入れると、厚生経済学の第一定理は成り立たない=動学的分析。
人口が順調に増加すると、世代間公平性は問題がなくなるが、減少すると問題になる。利子率と人口増加率が同じであれば問題はない。先進国では利子率のほうが高いことが普通。

人口減少では、社会保障は賦課方式よりも積立方式のほうが適しているが、積立方式は人々の行動には影響は及ぼせない。賦課方式のほうが易しい。
人口減少社会では、賦課方式は縮小せざるを得ない。マクロ経済スライド制。他の国でも縮小の方向にある。

人口減少では貯蓄が減りやすい。将来世代の効用関数は今と同じとは限らない。

国民貯蓄という尺度。将来世代に残す分の総計。医療や介護の給付は消費に該当する。
国債は国の借金だが、民から見れば資産、借金しただけならいいが、それが消費されれば、国民貯蓄は減る。
対外純資産は安心材料だが、将来の社会保障の財源に使えるほどはない。
現在の社会保障制度改革は、将来世代に先送りすることになる。少子化がさらに首を絞める。
社会保障は親孝行の社会化。そのため少子化になった。これを止めるには、公的な高齢者保護を見直す必要gああるのではないか。

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2025年08月26日

Posted by ブクログ

経済学からの視点で考えたり、物事を捉えたりできる内容でした。

勉強不足のため、引き続き学んでいこうと思います。

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2024年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

効率と公平なんだが、結構面白かった。将来世代との負担の話はまあこの政権では無理だし、そのためによそに出られる選択肢が必要なのかもです。

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2024年08月19日

Posted by ブクログ

とことん書名にある「経済学における効率と公平の問題」について、やさしい具体例で解説していく。著者は、学部から直ちにアカデミアに入ったわけではなく、官僚としての実務を経由しての経済学者であるので、説明がわかりやすい。「ライフサイクル仮説」が、うさん臭さがぬぐえない、と述べるあたり、共感。

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2024年07月28日

Posted by ブクログ

興味深い視点もあったが、真意がよくわからない所もあった。
これではますます経済学への不信感を助長してしまわないか心配だ。

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2025年02月27日

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