【感想・ネタバレ】余命一年、男をかうのレビュー

あらすじ

「いきなりで悪いんだけど、お金持ってない?」この一言からすべてが変わったーー。
楽しくなくても、平気で生きてきたはずなのに。
コスパ重視の独身女性が、年下男に数十万円を渡してはじまる涙と笑いの物語

節約とキルト作りが趣味の40歳独身、片倉唯。健やかでコスパのいい老後を迎えるために頑張っていたが、
無料で受けた検診で子宮がんと告知される。病院のロビーで会計待ちをする唯に、
ピンクの髪の男がお金を貸してほしいと頼んできた。人生はどこまでお金で割り切れるのか。
涙と笑いの第28回島清恋愛文学賞受賞作。

幼いころからお金を貯めることが趣味だった片倉唯、40歳。
ただで受けられるからと受けたがん検診で、かなり進行した子宮がんを宣告される。
医師は早めの手術を勧めるも、唯はどこかほっとしていたーー「これでやっと死ねる」。
趣味とはいえ、節約に節約を重ねる生活をもうしなくてもいい。好きなことをやってやるんだ! と。
病院の会計まちをしていた唯の目の前にピンク頭(ヘア)の、どこからどうみてもホストである男が現れ、
突然話しかけてきた。
「あのさ、おねーさん、いきなりで悪いんだけど、お金持ってない?」。
この日から、唯とこのピンク頭の男との奇妙な関係が始まる。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

久しぶりに一気に読みました!キュンとくるラブストーリー。瀬名がどんなイケメンなんだろうと想像したり、ふたりの不器用な愛への展開がなんだかあたたかく。唯はこのまま長生きしてほしいな〜。
ほんと読後感良いいいお話でした!

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2025年12月09日

Posted by ブクログ

死生観が私と同じだった。独身40歳女性の主人公は癌で余命一年と宣告されて感じたのが「この先何年も生きなくていいんだ、と安堵した」。末期といえど一年。否二年三年正確な寿命がわからないなら今までの貯金をぜんぶ使おうとするも渋られ、では一年と決めて自殺するかと思っても迷惑を被る人がでてくる。1人で生きていくことも困難なのに、1人で死んでいくことも許されない。生きることを恐れていた。いつかくる貧困に怯え不安があるなかで余命一年は肩の荷がおりた。とあって共感しかなくこの本を買おうとおもった。そんな中でホストの男をかうことになる。買っても主人公の死生観はかわらなかったが、ホストという接客のプロの立ち振る舞いが「かった」事が正解だった。こんなに気持ちよく過ごせるなら財産ぜんぶこのホストに残そうと。あとはさっさと死んでしまう。それが良かった。終盤まではそのスタンスで、その死生観が私と同じで共感していた。

以下はネタバレになるので、読んでから見てほしい。
やはり男をかっても、一緒にいる事がながくなるとだんだん情がうまれてしまう。
死にたかったのでちょうど余命宣告はラッキーとばかりに思っていたのに、後ろ髪を生きてる人間に引っ張られてしまう。主人公は最後の喧嘩の後も一切をホストに依存などせず1人でも静かに死を待っていたのに
やはり最後には小説なので、生きていてほしいとか相思相愛とかでほだされ結局「理解ある彼君」のような存在が支えて、その彼の腕で抱きしめられながら、生きたいと決意する。
なんてハッピーエンドになってしまった。最初の死生観から真逆の結末、綺麗な終わりになってしまった。
不満ではないけれど、「やはりか」となった。まるであの死生観はだめだと諭されるている気分にもなるし、現実はそんな彼がうまく現れる事もあるかもないかも知れない、結局は1人で生きていくことより誰かと生きていくことが、正解なんだよ。といわれているかのよう。
それは本当に理解できないけど、本の3分の2ほどは最初の死生観のまま芯がありその中ででてくる考え方などに何度も付箋をはりたくなったので、やはりこの本を買おうと思う。

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2025年10月27日

Posted by ブクログ

以前、村田沙耶香さんのコンビニ人間を読んだ時のような衝撃を受けました。
うんうん、こういう人いるよねと思いながら、時折笑いもこみ上げながら読んでいましたが、次第に考えさせられる内容に形を変えていったのには驚かされました。
自分の当たり前とか自分が考える幸せの形とか、そんなものを人に押し付けたり当てはめたりすることはありがちかもしれませんが、それがいかに愚かしいことか、改めて気付かされました。

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2025年10月14日

Posted by ブクログ

ふらり立ち寄った本屋さんで「面白いタイトル!」だけで買ってました。
内容も面白くて、主人公の生き方に一部共感できたりして…後半のエピローグの手前であやうく泣きそうになりました(最近、涙もろい)

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2025年04月27日

Posted by ブクログ

お金がある人生が幸せかと、ありふれた言葉だけど、何が幸せかを改めて考えさせられました。

堅実な生活を送ってきた、40歳の独身OL片倉唯は、ある日、病院で余命一年の宣告を受ける。その帰りに、見ず知らずのホストの瀬名からお金を貸しいと言われ、お金を貸す代わりに、そのお金の分だけ唯に尽くして欲しいと取引を持ちかける。

人生楽しいことがなくちゃ、生きてちゃいけないのかという言葉が、心に残りました。人生楽しまなきゃ、損って思いましたが、それだってお金があるこらこそ。改めて、人生ってなんだろうなと思う。

お金よりも、人との繋がりも大切かもしれないけど、お金があるから割り切るという考えも怖いなと思う。出会いの方法も最近だとマッチングアプリで、課金しないと出会えない現状もあるのかな。

そういえば、老後2000万円問題の話も人間最後までお金の話だと思うと、幸薄い世の中ですかね。実際は、年間の安心100年でも、2000万円じゃ足りないとか。うーん、日本大丈夫か?

唯に対して、あなたはこういう人とカテゴリ化する態度に呆れる瀬名の言葉が、自分も多面的に人を見ない態度は似ているなと反省。平等であろうと思うほど、その傾向があったのかなと思う。良い子ちゃんすぎたのかな。

それでも、最後の最後で、お金があってもなくても、縋れるのは人なんだなと思うのは、唯の頑な態度が氷解していったから。お金がない人生も、人と関わりのない人生も辛い。結婚、恋愛はコスパ悪いなと言いますが、唯一の誰かに出会いたいのが道理。

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2025年03月06日

Posted by ブクログ

著者初読み。傑作!
カテゴライズ、これ用心。自分自身のカテゴライズも含めて。今の若い人の言葉遣いも勉強になったし、テンポ良い会話も凄い手腕。周りも良い。丸山さん。那智さん。「平井堅」には大笑い。

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2025年03月06日

Posted by ブクログ

ここ最近読んだ作品の中で最も感情を揺さぶられた。作品の中でも言われているいわゆる「余命もの」は私はあまり好きではないのだけれど、間違いなく傑作だった。唯と瀬名のこれからをもっと知りたい!個人的には丸山さんが好きで、唯にとってはありがたい存在なのではと思った。自分の人生の残り時間とお金の使い方について考えさせられたし、甘ったるくない唯と瀬名の関係も我がことのようにどちらの気持ちにも共感しながら読んだ。
ホストの内部事情にも興味が湧いて、事情はさておいて年下イケメンをお金で買える唯はほんの少し羨ましかった…

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2024年12月29日

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面白かった。好みに合った。
ホスト目線で主人公について語る場面で
「鳩のような目」という言葉にゾクッとし「静かに狂っている」という表現で心が痛くなった。
孤独をこじらせた主人公が淡々としている様子は、怖くも悲しくもあった。
温かい終わり方にほっとした。

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2024年09月14日

Posted by ブクログ

タイトルと可愛い表紙に惹かれて買いました。星5つじゃ足りない!星8つぐらいつけたい。

とても読みやすくて、面白い。読み始めたら止まらない、全く飽きない。文章が堅苦しくないので、最後まで楽しく読める作品。

コスパ重視の唯の生き方や考え方にすごく共感する。唯とは少し違うけど、私はバツイチ子持ちの三十代半ばで、買い物のときはコスパのことしか考えていない。常にマイボトルのお茶を持ち歩き、職場では地味なお弁当を食べてる。

唯の気持ちがすごく分かる。生きてる今も誰にも頼らずに、死んだ後にも人に迷惑を掛けないようにと常に考えながら生きるのは、とても苦しい。唯の病気が分かったときの気持ちに共感しすぎて、何度も泣きそうになった。

唯がピンク髪の瀬名に出逢えてよかった。出逢い方はどんな形であれ、エピローグを読んだら幸せな気持ちになった。唯と瀬名の楽しそうな会話を、ずっと読んでいたい。

もし、この作品が映画化もしくはドラマ化したら絶対に観る。ピンク髪の瀬名を演じるのは、EXITの兼近さんになるのかな。漫画化しても面白そう。

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2024年08月04日

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漫画みたいにサクサク読めて、余命ものでもそんなに重くない。だけど死生観についてちょっと考えさせられるそんな一冊。

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2025年08月06日

Posted by ブクログ

初めての作家さんでした。
なんだか漫画を読んでるみたいな感覚でサクサク読めました。

瀬名の口悪いしめちゃくちゃだけど情に熱くてあったかくて
家族思いの感じもかっこいいし、
唯の、ひねくれた口の利き方で相手や読み手をイライラさせるんだけど、コンビニなんかに置いてある寄付箱に必ず寄付をするとか、キルトづくりが趣味とか
強がっていろいろさめて生きている感じがするけど、やっぱり寂しがりやで頑張り屋さんで
毎日を慎ましく生きている感じとかもなんかかわいかったりとか…

余命宣告とか、お金で人を買うとかともすれば、暗い感じに受けがちなお話が軸になっているけど、
二人のお互いを思い気持ちが
喧嘩してるんだけど、伝わってきてハラハラしたり、キュンとしたり…
二人にはずーっと仲良く生きていってほしいな

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2025年08月01日

Posted by ブクログ

本屋でブラウジングをしていたら、印象的なタイトルに目が止まり、気になって買わずにいられなかった。

コロナ禍の話が懐かしくなって来た今日この頃、
でもあの頃より生活が苦しい気がする今日この頃…

何のためにお金を稼ぐのか、貯めるのか?
最低限の生活を送るため?
老後の不安のため?
では、1年後に死ぬと言われたらお金の不安に囚われないのか?その方が幸せなのか…?

私はお金は手段にすぎないことを忘れないようにしたい。
無駄を削ぎ落として効率的に生きるなら、とことんお金にこだわり、煩わしい人間関係に気を遣わず、淡々と仕事と家事をこなす生活を送ればいい。
でも私はそんな味気ない人生まっぴらだと思う。

主人公の唯も、一見そんな人生を送っているように見える。しかし、そんな唯でも、先立ってしまった母親が教えてくれたパッチワークだけは大切にしているところが良かった。愛すべき『無駄』だと思った。こういう『無駄』を私も持ち続けたい。

唯が瀬名に気付かされたように、他者に対する捉え方について、私もはっとさせられた。
見た目や一面的な印象だけで、他者を自分勝手にカテゴライズしないことも忘れないようにしたい。

【目の前の相手を単純にカテゴライズしてなんとなくの理解で済ませようとするのはわかりやすくて楽かもしれないが、それだと多くのことを取りこぼしてしまう。指先からこぼれ落ちたそれらのもののほうが、むしろその人自身をあらわしているんじゃないか_】

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2025年03月03日

Posted by ブクログ

中小企業の事務員という(収入がそこまで多くない)立場ながら、徹底した節約を続けてきた主人公(40歳独身OL)が、ある日突然子宮がんを宣告される。その瞬間、「孤独でつつましく生きていくよりサッサと死んだ方がマシ、ちょっと安心。せっかくだから散財しよ。」という思考に至るのでビックリ!
なんじゃコイツは、大丈夫か???と思ってしまう。彼女の恋愛観・結婚観・人生観もぶっとんでいて、男性読者としては「ヤバイ女」と序盤早々からレッテルを貼ってしまったのだが、ページが進むにつれて、これまでの人生や家族の事情(実母のこと)が次第に明かされていき、どうしてこのような歪んだ思考に辿り着いたのか、納得してしまう。
余命1年+α??の期間で不思議な関係を築いていくホストの瀬名やその家族、主人公の同僚や継母など、どの登場人物もなかなか良い味を出していると感じた。経理担当のOLの仕事ぶりや、ホストの業界の話、コロナ禍における自営業飲食店の話なども随所に現れ、ちょっとしたお仕事小説でもあった。

作中、主人公が実母から教わったキルト手芸について語られている。余った布生地を繋ぎ合わせて、チマチマと地味な作業を続けながら、じっくりと時間をかけて一つの作品を作り出す。市場価値は決して高いものではないかも知れないし、タイパは悪いのだろうが、作った人の人生が込められている小作品なのだろう。編んだ人の社会的地位に関係なく、その人が一生懸命生きた証(それなりの時間を費やした証)だから、もし私もキルト作品を手に取ることがあったら、簡単に捨てたりせずに大事にしたい。

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2025年02月24日

Posted by ブクログ

お金で買えないものなんてある?

子宮頸がんで余命1年といわれた40歳独身女性の唯。
これまで中小企業の事務員として、地道に働き節約し20歳で買ったマンションのローンも完済間近のところに告げられた余命宣告。そんな宣告を受けた後、病院のロビーでピンクの頭の男にお金を貸して欲しいと言われ、投げやりな気持ちでお金を貸し、返済しない代わりにそのお金でその男を「かう」という選択をしたという話である。

前半は唯の視点、後半はピンク頭の男、瀬名の視点で描かれて話は進んでいく。

子どもの頃から継母との関係性や家族の問題から、結婚やお金にドライな唯と、情に熱く貧しいながらに家族愛を大切にしてきた瀬名の考え方の相違やコントラストがとても興味深くおもしろい。
また文体もポップで非常にリズム良く読みやすく、終始「おもしろかった」が相応しい一冊だ。

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2025年02月04日

Posted by ブクログ

超絶現実的で超絶ロマンチック。
思わずニヤッとするおもしろさもあるし、ぐっと苦しく心を掴まれるところも。
大好きな作品です。

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2025年01月15日

Posted by ブクログ

一気に読んでしまいました。
序盤の
"べつに、楽しくなくても私は平気ですけど。
なんの楽しみもなく、ただ生きてるだけの人間がいたってよくないですか?
この世に生まれたからには生きなくちゃいけない。生きてる限り、生きなくちゃいけない。"

というような彼女の感覚に共感を覚えながら読みすすめたら、ええ?という展開に。
ジェットコースターのようなお話でした。

自分の人生の長さに諦めを感じつつ老後の心配をしてコツコツ生きてた唯が、余命がわかった衝動でお金を通して人と関わることをはじめ、いろんな怖さ故に突き放したり衝突したりしながら、諦めてたはずの人生を生きはじめる。
とても読みやすくて面白かったです。

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2024年11月20日

Posted by ブクログ

面白い小説だった。序盤から読みやすい。
人生には覚悟を決めなければならない場面がある。覚悟を決めた2人がいろんな角度からぶつかって自分なりの生き方を見出して行く、そんな小説に思えた。
『長生きは最高のエンターテイメントであり偉業だ』
歳や経験を重ねるごとに共感の度合いが増すセリフだと感じた。そんな風に思えるように生きて行くことが人生なのかもしれない。

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2024年11月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アラフォー節約大好き女性、片倉唯。
まず片倉唯の人間性がかなり賛否両論あるんじゃないかと思います。正直友達には欲しくないですし、御祝儀をケチって友人から縁を切られるというのはもう言いようがないほど片倉唯に問題があるのではないでしょうか。あくまでも私の感想です。
そんな片倉唯がある日子宮頸がんを患い病院で診断を受けた帰り、待合室で瀬名吉高というホストに出会うわけですが…個人的に瀬名、めちゃくちゃ好きなタイプの登場人物です。病気の父親、老いた母親、元旦那にDVを受けて出戻ってきた妹と姪っ子のために働くピンク頭のホスト。老後や貧困に怯え節約をし、医師に余命宣告をさせることでようやく解放されると安堵すらしていた片倉唯と比べるとかなり人間味があるような気がします。

私は片倉という女を、子供のようだと思っています。実母を亡くした時から中身が成長していない、思春期の女の子。一応瀬名のが年下ではあるんですけど、なんだか二人のやり取りを見ていると瀬名の方が兄のような話し方をするんですよね。多分妹がいるのも関係しているのでしょう。
とにかく片倉という女は不器用で、主人公に共感できないと作品を楽しめないタイプの方にはあまり大手を振っておすすめできる作品ではないのかなと思います。
ただ、片倉の周りにいる人達は逆に凄く人間味があって面白いです。
私は丸山さんが大好きでして。上辺だけの付き合いじゃなく、でも深くまで関わろうともしない。優しくないわけじゃない、でも他人事だと割り切れてしまう。こういう人間関係が今はかなり多いのではないでしょうか?しかし、これもれっきとした友情のような気がしてならないのです。
丸山さんが出てくる度にニコニコしながら読んでました。片倉は怒ってたりイライラしてる描写が多いので、丸山さんを見て均衡を保つのがおすすめですね。

ただ、私はラストシーンが凄く好きです。
ようやくこの人の時計が進み始めたのだと思えて、凄く穏やかな気持ちになりました。

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2024年08月16日

Posted by ブクログ

感動を誘う余命ものとは違った。
なんのために生きてるか分からないとお金の使い道も分からない。人生の終わりが見えて初めて使い道が見えた主人公。
お金はあの世に持っていけないからとよく言うけど、この世で尽きてしまったら困る。
でも働いてお金をもらう以上、自分の好きなことに使ったらいい。
恋愛面よりも金銭面が心に残った。笑

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2024年08月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第28回島清恋愛文学賞受賞作。
第30回の同賞受賞作『光のとこにいてね』があまりにも素晴らしく、他の受賞作も読んでみたいと思ったのが、この本との出会いのきっかけだった。

読後に強く残ったのは、「私は金で何を買っているのか?」という問い。

主人公片倉唯は、超がつくほどの倹約家。
一切の無駄を排除し、資産運用をしながら堅実に生きる。ミニマリストと呼べば聞こえはいいけれど、そんな人生に何の楽しみがあるのだろうと思ってしまうほど、無味乾燥な生き方をしているように見えた。
けれど、子宮頸がんを宣告され、余命一年と知った瞬間に世界が一変する。
初対面で金の無心をしてきたピンク髪の男・瀬名との出会いをきっかけに、唯は“お金で人の時間を買う”という大胆な行動に出る。最初は1時間1万円で70時間の契約、そしてついには遺産を渡す代わりに結婚を申し込む。
唯の振り切れた決断に、思わずスカッとした。
人が金を後先考えずに使う姿は痛快で、地味なOLの唯がそれをやるからこそ、共感できて親近感も湧いた。

唯がお金に執着していた理由は、二つあるように思う。
一つは、男性社会の中で経済的に優位に立ちたかったから。もう一つは、愛や永遠といった曖昧なものが怖かったから。気持ちは測れないけれど、お金は数値で表せる。人は裏切るけれど、お金は勝手に減らない。母を亡くし、家庭にしがらみを抱えていた唯にとって、それは“唯一裏切らない存在”だったのかもしれない。

ラストが前向きな余韻で終わるのもよかった。
ダイパやコスパだけを追っても人生はつまらない。
一人で堅実に生きるのも、誰かに翻弄されながら不確実な人生を歩むのも、どちらも悪くない。そんなふうに思わせてくれる、温かくも鋭い物語だった。

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2025年11月09日

Posted by ブクログ

【あらすじ】
 余命一年t宣告された独身OLの片倉唯は40歳。
 偶然出会ったホストの瀬名にお金を貸すことになり、その返済として、1時間1万円、70時間を自分のために使ってもらうという契約をする。
 70時間が過ぎ、最初はもう関わることもないだろうと思っていた唯だったが———。
【感想】
 知人に勧められて、読んでみました。
 唯の視点だけで進むと思っていたのですが、途中で瀬名側の視点で描かれた章もあり、それぞれの思いがストレートに描かれていました。
 時折キツイなぁと感じることもありましたが、きれいごとばかりではないところに共感を覚えました。

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2025年11月01日

Posted by ブクログ

余命一年と宣告された唯が、『もう節約なんかしない』と70万でホストの瀬名を買うところから話が始まる

「私が死ぬ時に泣いてくれる人」がいるのか、1番心に残った。自分にはそんな人いないよなあとため息をついたけど、それが残念なのかどうかは分からない。死ぬ間際にその答えは出るのだろう。

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2025年06月23日

Posted by ブクログ

タイトルからスラスラ読める内容ではあったが、最後のオチ、まとめ方が残念だったかも。少し先が読めてしまった。

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2025年06月01日

Posted by ブクログ

漫画みたいな展開はさらさら読みやすくでもありえないことの連続だけど、主人公の人生観はいちいち共感出来た。余命が宣告されて「やっと死ねる」、夢は「収支トントンで生きること」。

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2025年05月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この本を読んで思ったのが、主人公と私で似てる部分が多すぎること

・生きていくことに希望が持てない。どこかで死にたいと思ってる。
・保守的でリスクに以上な不安がある。
・会社の上司と不倫関係にある

この人、強迫性障害持ちなんだろうなと思った。
普段抑えられて生きてる人の方が、死ぬことがわかるとぶっ飛べる気がする笑

もし私が子宮頚がんになったら、きっとすごく不安だし嫌だと思うけど、心のどこかでホッとする自分もいるんじゃないかなと思う。

真面目な女の人がガンを宣告されて、男を買う。というストーリーが面白そうで買ったし、
オチは死ぬのかなってどこかで思ってたけど、結局、お金で買った男と結婚するというオチもそれはそれで面白かった。

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2025年01月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

余命一年というから重苦しいかと思えばそうでもなく
出てくる人が皆好印象
キルトを作って、ひたすらに節約をする唯
なんだか私も独身だったらそうやって生きてるかもしれないとさえ思った
毎日毎日何かチクチク進めることってかなり楽しいんだよなぁ

一つ
専業主婦は、家政婦であり売春婦である
という唯の家庭科の先生の言葉がなんだか忘れられない
男は結婚という契約で自分専用の家政婦と売春婦を手に入れるというわけか
妙に納得できた

みんなお金を何に使ってるんだろう
純粋に知りたいなと思う
食事に使う人もあれば食費を削る人もいるわけで
私は何に使ってるんだろうか

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2025年01月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読みやすかった。
瀬名がいいひとだったなあ。
唯の言動にはイライラすることが多かったけれど、瀬名と関わる中で唯が自分の良くない部分に気づかされていくところはよかった。

『これまで私は周囲にいる人間すべてにーーー自分自身にさえレッテルを貼り、そういう人だと見なして接してきた。』(P242)

第二章(P255)で瀬名が次のように考える場面があった。
『目の前の相手を単純にカテゴライズしてなんとなくの理解で済ませようとするのはわかりやすくて楽かもしれないが、それだと多くのことを取りこぼしてしまう。』
瀬名の中にこの気づきがあったから、唯が周囲の人や自分自身のことをカテゴリ分けしてレッテルを貼っていることに余計に腹が立ったのかな。

継母に、母親の遺品であるキルトをあらかた捨てられてしまったという唯のエピソードはとてもショックで悲しかった。継母のことを嫌いになるにはじゅうぶんな出来事だと思うし、唯が心を固く閉ざしてしまうのも理解できた。

愛はお金で買えないかもしれないけれど、お金があったから瀬名との縁がうまれたのだし、お金に執着することは悪いことではない。結果的にがんの治療にも役立ったわけだし、節約や倹約を心がけることは間違いではない。
わからないけれど、たとえば宝くじで高額当選しましたみたいなぽっと出たお金ではなくて、唯が自分自身で考え、工夫して頑張って貯めてきたお金だから意味があると思う。
唯のことは好きになれないんだけど、応援したい気持ちにはなる。こんな生きづらい世界、無い。唯なりに必死に生きてきた結果がエピローグであって、予定調和な結末だけれど、ベストな終わり方だと思った。

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2024年12月31日

Posted by ブクログ

タイトルと見た目から、
こんなピンク頭のチャラそうなやつにお金持ってる?なんて言われたら絶対詐欺を疑うし、どうせちゃらちゃらしたやつなんだろうと思ってた。
けど、意外とこのピンク頭の瀬名はまっすぐな男で、
言動はチャラいかもしれないが、がちがちに固まった唯の心を溶かしていく。
私も「人生に関わらせてほしい」って言われてみたい。

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2024年11月05日

Posted by ブクログ


余命系の話は苦手だけど、読んでみたらとてもおもしろくて、御涙頂戴ではなくて、男女の人生観や葛藤がつまったストーリー。

主人公の中年女性『唯』と、ベテランホストこと『リューマ(瀬名吉高)』って、なんだ結局似たもの同士だなぁ、と読みながら思った。

相手に強く当たったりするのって、
その人に許されるって甘えてる証拠だから、
我が身を振り返ってみるようなシーンがいくつかあったな..苦い..。

コスパ重視、自立したおひとりさまを極めていた唯の中に、母に先立たれ遺された12歳の唯がちらついて見えるのが切なくも感じた。

第2章で視点が変わるのも良かったです。
1人でも生きていけるように、と自立を心に根付かせることも役に立つと思うけど、
だれかと心を通わせることも人生を豊かにするものに違いないのだと改めて感じたな。

丸山さんみたいなおばちゃんが結局、付かず離れず見守ってくれていたりするんだよね。
1人で生きられてるような気がする時ほど、気づいていない周りのあたたかさに感謝を忘れずにいたい。

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2024年09月20日

Posted by ブクログ

現実にはありえないぶっ飛んだ設定、かつ都合が良すぎる展開ではあるんだけど、ハッとさせられるメッセージが沢山あった。今が絶望でも明日何があるかわからないこら長生きするもんだな、と思える本だった。瀬名みたいな人いいなぁ。

「三食ちゃんと食べてるはずなのに、いつもおなかが空いているような心細さがあって、四十一歳にもなって寂しさと空腹が似ていることに気づいた。」
「唯っていつもそうだよな。見た目とか雰囲気だけで勝手に人を判断して、勝手にカテゴライズする。」
「今後二度と私は瀬名を変えようとしない。だから、瀬名も私を変えようとしないで。」
「人間にはさまざまな側面がある。目の前の相手を単純にカテゴライズしてなんとなくの理解で済ませようとするのはわかりやすくて楽かもしれないが、それだと多くのことを取りこぼしてしまう。指先からこぼれ落ちたそれらのものの方が、むしろその人自身を表しているんじゃないか。」
「長く生きているといろんなことがある。長生きは最高のエンターテイメントであり偉業だ。」

唯と瀬名の会話の場面が好きだった。くだらないことをずっと話していられる関係。お互いボケてつっこんで、話題が尽きなくて、ずっと笑っていられる会話。

人をカテゴライズしていることを指摘される場面は、自分もハッとさせられた。自分の浅い経験や生きてきた世界だけで、この人はこういう人だ、と決めつける。そして分類する。人はそんなに単純ではないのに。そして自分も、そうやって見た目で判断されることに息苦しさを感じてきたのに。

良かれと思ってのアドバイスが、相手を傷つけることもある。人を変えようとしてはいないか。何を言っても否定されるように感じる、と過去に言われたことがあるけど、それはそういうことなんだろう。良かれと思って言ったことが、相手を変えようとしていると捉えられてしまうことは相性が悪かったというのではなくて、普通のことなんだな、と思った。相手に関することに介入するのはやめよう。意見を聞かれた時だけ、自分はこう思うを伝えて、聞かれてもいないのにこうしたら良いんじゃない?というのは傲慢だった。

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2024年07月28日

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