あらすじ
自分はなぜ生きているのか、自分はなぜ死なないのか、逡巡の中にいるすべての人へ。私がずっとデビューを待ち望んでいた新人の、ユーモアと青臭さと残酷さと優しさが詰め込まれた快作です。ーー金原ひとみ
夏休みが終わる直前、山田が死んだ。飲酒運転の車に轢かれたらしい。山田は勉強が出来て、面白くて、誰にでも優しい、二年E組の人気者だった。二学期初日の教室。悲しみに沈むクラスを元気づけようと担任の花浦が席替えを提案したタイミングで教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきたーー。教室は騒然となった。山田の魂はどうやらスピーカーに憑依してしまったらしい。〈俺、二年E組が大好きなんで〉。声だけになった山田と、二Eの仲間たちの不思議な日々がはじまったーー。
歴代メフィスト賞受賞者推薦コメント
死んでも終わらない山田の青春に、ぼくらは笑い、驚き、泣く。
(第21回受賞)佐藤友哉
くだらないのに楽しい。けれど、ほろ苦くて切ない。青春とは、山田である!!
(第49回受賞)風森章羽
最強を最強と言い切れる山田こそが最強で最高。
(第53回受賞)柾木政宗
こんな角度の切り口があったのかと驚かされ、こんな結末まであるのかと震えた!
(第59回受賞)砥上裕將
自分には経験がないはずの男子校での日々が、妙な生々しさで蘇ってきました。
(第61回受賞)真下みこと
ダサくて、眩しくて、切なくて。青春の全てと感動のラストに、大満足の一作。
(第62回受賞)五十嵐律人
校舎に忘れてきた繊細な感情を拾い上げてくれるような物語でした。
(第63回受賞)潮谷 験
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
いきなり山田が死に、2年E組のスピーカーになってしまう。そんな山田と2Eの男子たちの物語。死んでから半年、2Eの友達といる時間がとれて初めは喜んでいたが、クラスメートが3年生に進級したり、卒業しても山田は2Eのまま。大人になっても2Eのまま。すごく辛いと思った。個人的に面白かったのは、「死んだ山田と誕生日」この本のすごいところは、コメディチックで面白いところもあれば、死んだ友達を悼む複雑な心情の変化も見られるところ。自分が友達だったら、あえて会わない選択をするかもしれないと思った。和久津のように何年もずっと会う事で、逆に山田を辛くさせてしまうのではないかと思った。
Posted by ブクログ
いやぁもう、なんなん?!マジで、やられたー。
交通事故で死んだ山田。
なぜか、2年E組のスピーカーとして蘇る。
2Eのみんなと楽しく喋りたい
って想いが強くて?
2Eのみんなと担任の花浦先生の中だけの秘密だった。だから、他のクラスがいない時、誰か来ないときだけ、山田に合言葉を言う「おちんちん体操第二」
私は女子で,相当BBAなのですがたまーによその男子数人が喋ってるのを横目で見て,何を楽しそうにしゃべってるんだろーと思うんですよね。
女子の会話は経験から分かるけど、男子って女子のいない時に何喋ってんの?
それが垣間見えましたね
いやぁ、馬鹿馬鹿しくて愛おしいww
だって、合言葉が「おちんちん体操第二」だからね。お察しw
学校にみんないる時はいいけど、休みの日や夜になると誰もいなくて寂しくなる。
寂しすぎて土曜日の夜は誰も学校にいなくなったら一人でラジオごっこやってたりする。
それを,クラスメイト知って聞きにきたり。
寂しいだろうからと、サプライズでクラスの子が突撃したり。
なんか本当に、いいなぁーって思う。
でもね、修了式が終わってみんなが3年になっても、
卒業しても、
山田は消えなかった。
もう誰も声を変えてくれない。
前半はめちゃくちゃ楽しいんだけど、後半は辛くなる。孤独をかかえる山田。
不老不死って、しんどい。
でも、一人,山田をわすれずに、山田のところに戻ろうとしていた友だちがいて。
最後は号泣でした。
最初のおちゃらけ部分があるからこその、辛さ。
いやぁ。なんかもう,読み終わったらやられたーっておもっちゃったよ
Posted by ブクログ
男子校ノリの軽快な会話が楽しくて、いつまでもそうしていたいけど、時の流れは悲しいかな…成長しなくてはいけないんですね。
和久津くんの気持ち、山田の気持ち、きっと二人はお互いに真の本当の友達だと確信したことだろう。
Posted by ブクログ
不慮の事故で亡くなった2年E 組の人気者、山田との再会を喜ぶ同級生がいる一方で、蘇るなんて気味が悪いと積極的に関わらない生徒もいて、爽やかな青春小説で終わらず生徒一人一人に生身の人間らしさがあって良かった。高校では人気者だったと認められる一方で、中学時代の同級生やバンドメンバーからは浮いていた山田。山田は山田なのに、周りの人間がその人の陰陽を作り上げている。少し態度を変えただけで変わる周りからの評価に拍子抜けすると同時に虚しさを感じる気持ち、自分の価値を見失う瞬間。自殺しようとは思わないけれどいつ消えてもいいという考えが悲しかった。
最終章は一気に畳み掛けてきて、最後に伝えられた想いと気迫に涙が出た。山田の再生を最も喜び、山田に人生を捧げたと言っても過言ではない和久津に死なせてくれと頼むのは酷である。でも和久津以上の適任者もいない。和久津みたいな友人、なかなか出会えない。生きるために成仏した山田、来世ではまた和久津と巡り合って親友でいてほしい。
あと最後に向かうにつれ自分の頭の中に流れ始めた音楽の題名なんだっけ…と思っていたらやっとわかった。『ボレロ』だ。
★自分的本屋大賞4位
★本屋大賞9位
Posted by ブクログ
ほぼ二年E組の会話劇だった。最初は、みんなから愛されるムードメーカーの山田が教室に憑依して、クラスのみんなとの青春ストーリーが繰り広げられると思っていた。しかし、年月が経つごとに会いに来てくれる人数も減っていき、山田のメンタルも次第に削られ、最終的に山田の真意が明かされた。年月が経つごとに、登場人物の感情が変化し、山田の悲哀が一層垣間見えるとこに感情が揺さぶられた。みんなが成長していく中、山田は成長できず、常時孤独を味わい、たまにある会話で幸せを感じていた。結局人は、一人の時間が大半で、たまにある幸せの為に、努力をするのだと改めて実感した。山田に関しては、努力ではどうしようもできない、不可抗力である為、可哀想だと感じた。友達を大切にするべきだと心から思った。隣に誰かがいてくれることがどれだけ幸せか
Posted by ブクログ
クラスメイトの山田が死んだ
なんでだよ!
…と思ったら
教室に山田の声が…
ん?スピーカーから聞こえる?
なんで?
う〜ん2Eのみんなが大好きだったからかな?
まじかよ!
それからスピーカーに憑依?した山田とクラスメイトたちの楽しい日々が始ま
ったんだけど
始まるからには終わるわけで
前半は男子校の面白おかしいノリで
バカバカしくもおかしみを味わえたが
学年が代わり
2年E組じゃなくなると
違う教室になるわけで
スピーカーの山田とクラスメイトは離れ離れ
みんなの人気者だった山田の
違う側面が見えてきたり
成長していくクラスメイトたちの心離れがあったり
なんとも切ない展開に
おとぎ話と同じ感覚だった
「王子とお姫様と幸せに暮らしました」
にも続きがあって
現実はそこで終わらないもんな
「スピーカー山田とクラスメイトは楽しく2Eで暮らしました」
なのはその年だけだもんな
和津井くんがそんなに山田に執着?するのなんで?
たしかに救われたかもしれないけど
高校生なんて
そんなに義理堅いもんかねえ
成長して外に目が行き始めるクラスメイトたちのほうがリアルだったな
なだけに山田の存在が切ないわけなんだけど
Posted by ブクログ
スピーカーに憑依した山田が最後どうなるのか、気にしながら読み進めた。ストーリーはなかなかぶっ飛んだ発想だけど、そこは気にせず読めた。クラスメイトの誰かが強く関係しているのかと思っていたけれど、自分自身に繋がって行く結末だった。そこは意外性があった。
Posted by ブクログ
最初は、テンポの良い会話とくだらない内容、友達を思いやる気持ちの純度が高く面白く読めたが、半分もいかないうちに、山田の過去や闇が見え始め、クラスメイトの成長とともに、変わらない山田だけが取り残されていくのは読んでいて辛かった。
でもそれが生きるってことで、みんな前に進んでいかないといけない。
空っぽならば、少しずつでも何かを詰めていかなければいけない。楽しいことだけでは生きていけいない。
和久津の山田に対する執着と、山田の死に対する執着が解き放たれた最後の一文はとても良かったと思う。
伏線が気付かず回収されていて、まさかそんな仕掛けがある内容とは思わず無防備に読んだから、ミステリーファンとしては失態。
読書に気を抜いてはいけない笑