あらすじ
亡くなった夫に頭を撫でて欲しいと願った妻。亡き母の髪を泣きながら洗った美容師になりたての娘。お気に入りの洋服を着て何度も抱っこされた、小さな体の重さ……。故人を棺へと移す納棺式にひとつとして同じものはない。悲しく辛い時間。しかし、生と死のはざまのごく限られた時間に、家族は絆を結び直していく。4000人以上のお別れをお手伝いしてきたベテラン納棺師が出会った、家族の物語。
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Posted by ブクログ
亡くなった方生前の姿を一切知らないままお仕事を進めなければならない納棺師、千差万別のご遺族の方々の姿が平易な文章ながら克明に描写されていた。
誰もが死に向かって人生のコマを進めながら、突然訪れる今際を考えるきっかけをマイルドに与えてくれる良書です。
Posted by ブクログ
納棺師の大森あきこさん。貴重なお仕事だと思う。事故死した弟も納棺師さんのお世話になった。おでこの傷が嘘みたいに消えて、安らかな顔になったことは忘れられない。
「死は私に今をどう生きるかを問う」私も残り少ない人生を大切に生きていきたい。
Posted by ブクログ
故人を棺へと移す納棺式にひとつとして同じものはない。悲しく辛い時間。しかし、生と死のはざまのごく限られた時間に、家族は絆を結び直していく。4000人以上のお別れをお手伝いしてきたベテラン納棺師が出会った、家族の物語。
(あらすじより)
あの世からのお迎えが来るのが「いつ」なのか誰にも分かりませんが、「いつか」必ずその日が来ることは、誰もが分かっています。
その一方、普段の何かと忙しい生活の中では、ほとんど気に留めることがない(気持ちに余裕がない)方が大多数なのではないのでしょうか?
数年前までは、ご多分に漏れず私もその中の一人でした。
その私の意識が大きく変化し、日ごろから死を身近に感じるようになったのは、何よりも母親の死を経験したことです。
さて、本書は25話と3つのコラムからなる「ノンフィクション作品」であり、当たり前かもしれませんが、綴られている場面・文章から伝わるのは、圧倒的な「現実感」です。
愛する人の死と残された家族の心情が、圧倒的な現実として読者に伝わってきます。
また、納棺師とは、「亡くなった方を綺麗な状態にする」という職業であることは漠然とは分かっていても、その具体的な内容や苦悩、いつどのような経緯でその職業が生まれたのか等は、本書を読んだことで初めて知ることが出来ました。
とりわけ感銘を受けた場面・文章を抜粋します。
『お母さんのにおい』より
・・・
部屋の中央にベッドが置かれ、亡くなったお母さんが寝ています。お母さんの横には、小学生低学年の弟さんと高学年のお姉ちゃんがちょこんと座っていました。
・・・
「はじめまして、今日はよろしくお願いします」
声をかけると、お子さんたちもベッドの上からぴょんとおりて、人懐っこく微笑みながら私の挨拶に応えてくれます。
・・・
「お母さんのお化粧と着せ替えをするからお手伝いしてくれる?」
・・・
準備をしていると、お子さんたちが時々お母さんのところに来ては鼻を近づけてにおいを嗅ぎ、離れて行きます。
何だろう?
見た目はいつもと変わらなくても、亡くなってしまうと口や鼻などからにおいが発生してしまいます。お別れの時間を邪魔しないように、私はいつもにおいがないことを一番にお体の手当を行っていました。
しっかりと手当をしたけど・・・と心配になり、
「何かいつもと違う?」
と聞くと、
「お母さんのにおいがない」
思いがけない返事に驚きながらも、続けて、
「お母さんのにおいってどんなにおい?」
と聞くと、すぐに、
「お化粧のにおい!」
という返事。
じゃあ一緒にお化粧しましょう、と提案すると、お子さんたちがニコニコしながら顔を見合わせました。・・・
お姉ちゃんが説明をしてくれます。
「これがお気に入りのファンデーションと口紅。これが大切なチーク。いつも朝はこのチークをつけるの。つける順番はねえ・・・」
・・・
もう我慢できないという感じで、弟さんも教えてくれます。
「この、ヘアーオイルは海外のもので、すごく高いんだよ。ココナッツのにおいがするんだ。いいにおいでしょ」
そう言って慣れたようにオイルを手にとって、お母さんの髪をなでるように、丁寧につけていきます。そして髪の毛に顔を近づけて何度も大きく息を吸います。
「お母さんのにおいだ!」
・・・
徐々に部屋中がお母さんのにおいで満たされていきます。
それまで・・・無意識にお別れを避けていたようだったお父さんも、奥さんのそばに近づいて、しげしげとお顔を見ます。
「はは、お母さんだね」
お父さんの目から今にも涙が溢れそうでした。
・・・
お子さんたちが長い時間、お母さんの髪の毛に顔を埋めにおいを嗅いでいるのを見ていると、清潔にすることだけが私たちの仕事じゃないと思いました。
『よいお母さんになりたい』より
今まで何人もの「お母さん」の納棺式を見てきました。どんなに仲が悪くケンカばかりしていたとしても、会話がなくなっていた親子であっても、「死」という出来事は、親子や人のつながりを考え気づかせてくれる、亡くなった方から贈られる最後のギフトに思えて仕方がありません。
*「亡くなった方からの最後のギフト」という言葉は、私が大好きな『天国からの宅配便:柊サナカ』シリーズのモチーフそのものですね!
先に書いたように、その日がいつ来るのかは分かりませんが、必ずやって来ます。
本書は、少しでも悔いのない人生を送ることは、自分自身のためだけではなく、残される家族のためにもなるのだと、改めて考えさせてくれる「良作」であり、人の「死」の最前線で活躍されている方からのギフトだと思います。
Posted by ブクログ
NHKの番組で作者を知り、興味を持ちました。
自分が死んだ時、家族は柩に何を入れてくれるのかな。
見ることはできないけど、ちょっと楽しみになりました(笑)