あらすじ
一度罪を犯した人々のなかには同じ過ちを繰り返してしまうケースが多い.しかし裁判傍聴から見えてきたのは,「凶悪な犯罪者」からはほど遠い,社会復帰のために支援を必要とする姿だった.にもかかわらず司法と福祉の溝は深い.この課題と社会はどう向き合うのか.家裁調査官として少年犯罪と向き合ってきた著者が考察する.
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
自分がいかに刑事裁判において表面的なイメージを持っていたか気づかされた。少し時間が出来たら裁判の傍聴にも行ってみようと思うくらいには興味を持った。
刑事施設と更生保護機関はそれぞれ独立しており、連携はあまり見られない。それが治療や支援が必要であったとしても、それは刑の執行後という刑事司法の考え方が未だ続いている一要因なのではないか。だがその被告人の更生にどれだけの時間を要するかも個人差が存在することに加え、同時進行で行うこともそれに伴う諸問題が多く発生しそうで自分でも正解がわからなかった。
高齢者に合わせた処遇の改善は実践に至っていないと著者は感じているとあった。本当に後ろ盾・サポートが居ない孤独な高齢者が犯罪を犯すケースは読んで想像するだけでも悲惨であり、このような状態の者を考えた体制改善は難しいだろうとなんの知識のない私でさえ感じた。そんな高齢者の処遇よりも、まだ未来がある若者の処遇改善の方が優先されるべきではないかと簡単に感じてしまうが、そうはいかないのが複雑であった。
刑事裁判の担い手による、福祉ニーズへの無関心というワードが文中存在した。刑事裁判のみに関わらず福祉ニーズへの関心度の低さは世間においてあると思う。私もこの本を読むまで刑事裁判と福祉が結びつくとは考えていなかった。故に社会福祉士が更生計画を提示することが、刑事裁判上において判決に影響を与える行為となり始めていることを知ったときは感心した。
最後に、「今の刑事司法は社会の傷として生み出された犯罪において、社会の責任を鑑みず、犯罪者の心の傷をさらに広げるシステムである。」と著者は述べていた。これには賛成も反対もできるほどの知識がないため、意見はせずにいる。私自身が恵まれたことに犯罪を生み出すような環境に未だ置かれていないが故に、社会責任や社会体制の欠陥に無関心だった言わば平和ボケしているのだと思わされた。1歩違えば私が被告人として刑事裁判に立っていたかもしれないし、これからそうなる未来がないとも言いきれない。自らの置かれている世間をより多角的に知るためにも、自分の足で情報を集め、意見を持てるように努力するべきだと思わされた。