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Posted by ブクログ
本書は、後書きにあるように学術研究の成果ではなく著者の体験を主観的視点でまとめた本だ。
自分はタイトルから推してもう少し刑事司法の場における福祉的実践の実情や福祉的処遇に地域格差があると思っているのでその辺りの解決や問題点などの話が出てくるのかと期待していたが、思っていた内容とは正直違っていると感じて少し残念だった。
4章からの具体的な裁判における福祉的支援の話に向かうために前段の3章が語られて来ているのはわかるし、逮捕から裁判まで行く(あるいはいかない)流れを川に例える説明と図説はわかりやすかった。
けれど傍聴した裁判の話自体に文章を割きすぎている感が否めなかった。
いつ福祉的支援の実践の話になるのかと思いつつ読み進めていたが、後半3分の1くらいでもう少しここに文章(考察や今後の課題など)割いて欲しかったと思った。
初めてこのような内容に取っつく方々には良いだろうが自分は正直物足りないと思った。
後半の方に福祉士が作成した支援計画を実際の裁判で示すことで被告の裁判後の処遇が大きく変わった事例が相当数あったことが書かれており、実際の裁判の中での福祉的支援の大きな役割の重要性が理解できたのは良かった。
p138にあるように福祉ニーズ(刑罰的処遇ではなく福祉支援的処遇が被告の行動を変えていくのに必要があると思われるケース)が実際にある被告人はとても多いと思うが、刑事裁判の担い手はそのことに無関心であるというのも、本当に書かれているとおりだと思う。
(同じようなことがp146「検察官が被告人への支援の必要性に心を配ることはない」とも書かれている。検察官にはそれは求められていないし、必要性がないからだ「自分の仕事ではない」ということだ)
司法に関わる人たちは犯人(被告人)の生い立ちや来歴を見て調べはしてもそれはあくまでエピソード的に見ているだけで、その人の「生身の人間」を見ていないと感じさせられる人は多いと思う。
この部分の著者の指摘は家庭裁判所調査官として、さらにはその経験から裁判を数々傍聴してこられた考察から来る本音だろうと感じだ。
裁判における福祉的支援はどこの地域でも受けられるものではないのが現状だと思う。著者が在住する岡山は手厚い方なのではないだろうか。
仕組みとして地域差があるだけでなく、結局であった人間の人柄によるところも大きいようにも感じられる。(本書に登場する原田さんのような方はそうそういらっしゃらないし出会えないと思う)
本書を手に取るような人たちには帯の「犯罪も無縁の人などいない」や本文中の「(犯罪という事象に関わりのない人などこの社会には存在しない)だからこそ、罪を犯してしまった人たちを支えていく必要があるのだ(p115)」という言葉は染みたり響いたりするがしれないが、交通違反も「運が悪かった」くらいにしか思えない人には理解してもらえないだろうと思う。
大抵の世の人たちは、犯罪に巻き込まれたり関わったりする人は特別だと思いがちだ。
それまで功績があっで立派な人であったとしてもまるでそんなことはなかったか、取り消しになったかのように考えてしまう人のほうが多いだろう。本書にも出てくる池袋暴走事件の被告のように。
p9有罪判決によって彼の過去が全て否定されるのではないのは確かなのに世の中はそうなってはいない。
ここに書かれている福祉ニーズに対して社会の関心をもっと得ることや実際の、もっと多くの裁判の場への必要性をとても感じるが現実は厳しいように思う。
Posted by ブクログ
家裁調査官だった著者が、社会福祉士を取得し、少年犯罪だけでなく、罪を犯した人たちの実態を裁判傍聴、犯罪統計などの分析などを通して、良心に満ちた主張を展開しており、刑事司法が今のままで良いのか、自分には刑事問題は全く無縁の世界だと思っていないか?と覚悟を以って真剣に問いかけておられる。後書きではそのことに触れておられることが感動的でもあり、凄い人だと思う。刑事被告人の多くが決して凶悪犯ではなく、窃盗・詐欺・傷害・覚せい剤などの地味な事件によるものであり、社会の被害者とでもいうべき弱弱しい姿であり、裁判所において「執行猶予」判決を受けた瞬間から、ありとあらゆる具体的な手助けがなくしては、生きていけないような人たちなのだ。罰金刑でさえ、支払う能力のない貧困者。孤独な高齢者。サポートに取り組んでいる人たちがいることには救いを感じるが、まだまだ非力だろうと思う。とにかくこの弱弱しい人たちを助けるには生活の基盤となる土台づくりであることを痛感する。人の善意によるのではなく、国として何らかの対策は出来ないのかと暗澹たる気持ちになった。
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