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一度罪を犯した人々のなかには同じ過ちを繰り返してしまうケースが多い.しかし裁判傍聴から見えてきたのは,「凶悪な犯罪者」からはほど遠い,社会復帰のために支援を必要とする姿だった.にもかかわらず司法と福祉の溝は深い.この課題と社会はどう向き合うのか.家裁調査官として少年犯罪と向き合ってきた著者が考察する.
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Posted by ブクログ
刑事司法がなんのためにあるか、その原理に沿って考えたときの社会として手助けすべきことに正面から取り組む責任を感じた。
裁判所に長く勤め、後に司法福祉の教授になった著書が退職後、改めて裁判所を傍聴し、司法制度の課題を書いている。罰した後に更生するというよりも、罰すること、恥をかかせることにまだまだ力点があることがわかった。
出口戦略が大事は考えたことなかった たしかに前科持ちの人間を所持金0で世の中に返した場合に何が起こるかは火を見るよりも明らかだわ ビビるくらい良い人と出会ってサポートしてもらえない限り更生は難しいと思う 再現性の高い更生の仕組みを国が整備しないと堂々巡りするだけ
犯罪に至ってしまった人に対する福祉的なサポートの重要性が分かった。犯罪を個人に帰責させるだけではなくて、社会的に包摂していくことの難しさも同時に感じた。改めて、福祉職って社会に必要な役割なのに給料低いのおかしいよなと思う。
タイトルからは、出所直後の人などを支える人のことかと思ったが、それよりも手前の部分の話だった。 司法手続きの「川」の例えは、司法に明るくない自分にもわかりやすくよかった。
社会福祉士や弁護士の方々の犯罪者の人権を守り、更生を支援しようとする活動には頭が下がる。優しい社会になる事により罪を犯さざるを得なくなる人が少しでも減る事を願います。
本書は、後書きにあるように学術研究の成果ではなく著者の体験を主観的視点でまとめた本だ。 自分はタイトルから推してもう少し刑事司法の場における福祉的実践の実情や福祉的処遇に地域格差があると思っているのでその辺りの解決や問題点などの話が出てくるのかと期待していたが、思っていた内容とは正直違っていると感じ...続きを読むて少し残念だった。 4章からの具体的な裁判における福祉的支援の話に向かうために前段の3章が語られて来ているのはわかるし、逮捕から裁判まで行く(あるいはいかない)流れを川に例える説明と図説はわかりやすかった。 けれど傍聴した裁判の話自体に文章を割きすぎている感が否めなかった。 いつ福祉的支援の実践の話になるのかと思いつつ読み進めていたが、後半3分の1くらいでもう少しここに文章(考察や今後の課題など)割いて欲しかったと思った。 初めてこのような内容に取っつく方々には良いだろうが自分は正直物足りないと思った。 後半の方に福祉士が作成した支援計画を実際の裁判で示すことで被告の裁判後の処遇が大きく変わった事例が相当数あったことが書かれており、実際の裁判の中での福祉的支援の大きな役割の重要性が理解できたのは良かった。 p138にあるように福祉ニーズ(刑罰的処遇ではなく福祉支援的処遇が被告の行動を変えていくのに必要があると思われるケース)が実際にある被告人はとても多いと思うが、刑事裁判の担い手はそのことに無関心であるというのも、本当に書かれているとおりだと思う。 (同じようなことがp146「検察官が被告人への支援の必要性に心を配ることはない」とも書かれている。検察官にはそれは求められていないし、必要性がないからだ「自分の仕事ではない」ということだ) 司法に関わる人たちは犯人(被告人)の生い立ちや来歴を見て調べはしてもそれはあくまでエピソード的に見ているだけで、その人の「生身の人間」を見ていないと感じさせられる人は多いと思う。 この部分の著者の指摘は家庭裁判所調査官として、さらにはその経験から裁判を数々傍聴してこられた考察から来る本音だろうと感じだ。 裁判における福祉的支援はどこの地域でも受けられるものではないのが現状だと思う。著者が在住する岡山は手厚い方なのではないだろうか。 仕組みとして地域差があるだけでなく、結局であった人間の人柄によるところも大きいようにも感じられる。(本書に登場する原田さんのような方はそうそういらっしゃらないし出会えないと思う) 本書を手に取るような人たちには帯の「犯罪も無縁の人などいない」や本文中の「(犯罪という事象に関わりのない人などこの社会には存在しない)だからこそ、罪を犯してしまった人たちを支えていく必要があるのだ(p115)」という言葉は染みたり響いたりするがしれないが、交通違反も「運が悪かった」くらいにしか思えない人には理解してもらえないだろうと思う。 大抵の世の人たちは、犯罪に巻き込まれたり関わったりする人は特別だと思いがちだ。 それまで功績があっで立派な人であったとしてもまるでそんなことはなかったか、取り消しになったかのように考えてしまう人のほうが多いだろう。本書にも出てくる池袋暴走事件の被告のように。 p9有罪判決によって彼の過去が全て否定されるのではないのは確かなのに世の中はそうなってはいない。 ここに書かれている福祉ニーズに対して社会の関心をもっと得ることや実際の、もっと多くの裁判の場への必要性をとても感じるが現実は厳しいように思う。
家裁調査官だった著者が、社会福祉士を取得し、少年犯罪だけでなく、罪を犯した人たちの実態を裁判傍聴、犯罪統計などの分析などを通して、良心に満ちた主張を展開しており、刑事司法が今のままで良いのか、自分には刑事問題は全く無縁の世界だと思っていないか?と覚悟を以って真剣に問いかけておられる。後書きではその...続きを読むことに触れておられることが感動的でもあり、凄い人だと思う。刑事被告人の多くが決して凶悪犯ではなく、窃盗・詐欺・傷害・覚せい剤などの地味な事件によるものであり、社会の被害者とでもいうべき弱弱しい姿であり、裁判所において「執行猶予」判決を受けた瞬間から、ありとあらゆる具体的な手助けがなくしては、生きていけないような人たちなのだ。罰金刑でさえ、支払う能力のない貧困者。孤独な高齢者。サポートに取り組んでいる人たちがいることには救いを感じるが、まだまだ非力だろうと思う。とにかくこの弱弱しい人たちを助けるには生活の基盤となる土台づくりであることを痛感する。人の善意によるのではなく、国として何らかの対策は出来ないのかと暗澹たる気持ちになった。
犯罪者一般に対する支援ではなく、障害者(特に、精神障害と発達障害)・高齢者・貧困者など、社会的弱者として犯罪を犯した人と、福祉の間を取り持つ活動の話。 高齢化が進んだり、貧困問題が大きくなりつつある現在では重要度が上がってくるテーマだと思うけど、一般向けには中々可視化されていない領域ではある。この...続きを読むような活動に従事される方々は尊敬に値するし、一般にもっと知られてもいいのかなと思う。
実際に裁判を傍聴したことがないのですが、雰囲気を知ることができてよかったです。罪を犯した人々を支えたり受け入れたりすることは現在もなお難点ではありますが、考え続ける必要があると思いました。
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藤原正範
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