あらすじ
愛媛県の山間部にある過疎の村・赤虫村(あかむしむら)には、独自の妖怪伝説が存在する。黄色い雨合羽を着て暴風を呼ぶ「蓮太(はすた)」、火災を招く「九頭火(くとうか)」、廃寺に現われる無貌の「無有(ないある)」、そして古くから伝わる“クトル信仰”。フィールドワークのために村を訪れた怪談作家・呻木叫子(うめききょうこ)は、村の名家・中須磨(なかすま)家で続く不可能状況下での連続殺人に関わることになる。周囲を足跡一つない雪原で囲まれた大木に全裸で吊るされた縊死体。内側から施錠された石蔵で発見された焼死体。妖怪伝説の禍を再現するような事件は、やがて人知を超えた終結を迎える──第17回ミステリーズ!新人賞受賞者による初長編。/【目次】プロローグ/第一章 無有の怪談/第二章 位高坊主の怪談/第三章 九頭火の怪談/第四章 苦取の怪談/第五章 蓮太の怪談/第六章 赤虫村の怪談/エピローグ/解説=多田克己
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Posted by ブクログ
大島清昭の呻木叫子シリーズ第二弾。前作「影踏亭の怪談」から、まさか続編が出るとは。。。嬉しい限り。
様々な妖怪、怪談が蔓延る愛媛県の過疎村、赤虫村。その村の名家、中須磨家の一族が妖怪になぞらえて順番に死んでいく。。。
ラブクラフト×怪談。
赤虫(アーカム)、苦取(クトルゥ)、無有(ナイアル)等、もう駄洒落じゃないかと笑。それぞれの邪神たちの特徴を捉えた怪談となっており、クトルゥ神話が好きな人は楽しめたのではないか。
前作のように、ラストに向けて伏線がこれでもかと言うほど回収される様な作りにはなっておらず、ミステリ色は薄い(というか、あのトリックは今の時代怒られるのでは笑)。ただその分、クトルゥ神話らしいねっとりとした不気味さ、怖さは十二分に感じることができた。ラストも良い。
更に続編があるとのことで、楽しみ。
余談だけど、「根黒乃御魂」(ネクロノミコン)が一番笑ったw
Posted by ブクログ
怪談パートは怖くって、それよりも謎が本格的で最後はどうなるのかすごくワクワクして読みました!
………謎解明部分にはもっとチカラをいれれば神作となったであろう作品。
だけどこれはこれで、素晴らしい作品。
次作もあるから楽しみ。
ぜひ〜
Posted by ブクログ
民俗学の知見を生かしたルポ形式の実話怪談を著す作家・呻木叫子が主人公の二作目。前作『影踏亭の怪談』は短編集だったのに対し、こちらは長編。
愛媛県の山間部にある"赤虫村"。廃寺に現れ、見たものに災厄をもたらす"無有"。空を歩き、冬の間の神隠しの原因とされる"位高坊主"。明るい光を放ち飛び回り、火災を招く"九頭火"。黄色い雨合羽姿で現れ暴風雨を予言する"蓮太"。そして、村の名家によって奉られ、名家の一族の願いのみを叶える"苦取"…。
独自の妖怪伝説がある赤虫村に叫子がフィールドワークに訪れた矢先、これらの妖怪伝説になぞらえたかのような不可解な状況で名家の人々が遺体となって見つかる。
今作も前回に引き続き、面白かった。"連続殺人"ということで、ミステリー色が強かったのも良かった。名家の人々が殺されたトリックなど説明できるところもありながら、刑事たちが遭遇した"無有"や、警察関係者に祟りをもたらした"はりの森"の存在、村を歩き回る"蓮太"の存在は、赤虫村に実際に怪異が息づいている様子が描かれており、おぞましい読後感があった。
この赤虫村の事件は、前作の短編集で描かれていた事件の合間に起こったとされる。ということは、前作の巻末の短編のラストに叫子に降りかかった災厄は謎のままかと思うと、三作目がどうなっていくのかがすごく気になった。どうか、叫子が無事でありますように。
Posted by ブクログ
ラヴクラフト全集をちょびちょび拾い読みしかしていないので、出てくる単語の元ネタ全てがわかった訳ではないけれども、やはりアレが元だなと判ると何倍も楽しめる。
出てくる怪談はオリジナリティ溢れるもののしっかりその恐ろしさが想像出来るように詳細に描かかれていて好感が持てる。
ミステリ部分は個人的にはそこまでキレが良くはなかったかも。それでも、ホラーとミステリーの融合という高度な作風の中にしっかり読者を楽しませようと仕掛けを入れ込む著者の態度には尊敬の念が堪えない。
Posted by ブクログ
トリックは非常にわかりやすく、大掛かりと言うほど大掛かりではないし、ヒントとなる要素も張り巡らされてるので、そういう意味では読みやすい作品でした。
ただ、叫木の原稿が随所に出てくるのがなんとも水増し感というか、この部分が読みづらくしている感じは否めない。
ここ部分がなければもう短編だしなぁというところでもあり、物語をある程度分厚くするのには貢献しているので、一種のフレーバー要素なのですが…。
Posted by ブクログ
「影踏亭の怪談」に続く呻木叫子シリーズの第2段。今回は妖怪、邪神などによる怪談と、やはり密室が絡む殺人か絡み合う作品になっています。メインとなる神様が苦取神。作中では決して言及されませんが、町の名前、神の名前、妖怪の名前、あらゆるものがクトゥルフ神話を暗示しています。
今作でもきっちりロジカルに解かれる部分と、明らかに人ならざるモノが混在していて、その塩梅が絶妙です。
Posted by ブクログ
なるほどちょっと新しい手法の伝奇ミステリー。ちょっと書き方に癖があるので「叙述トリックものか?」と疑いながら読んでたけど違った。みょ~に読みにくいのがいまいちなんだけど、作者さんは本業の怪談とかを研究すている学者さんみたいで、モキュメンンタリーっぽいのが興味深い。でもクトゥルフ結構参考文献に入ってるやんか~い!って最後に突っ込んだ。
Posted by ブクログ
独特の妖怪伝承と固有の民間信仰が生き続ける愛媛県の山村、赤虫村。取材で訪れた怪談作家の呻木叫子は村の名家、中須磨家で連続して起きた、妖怪伝承をなぞるような不可能状況下での連続殺人事件を調査することとなる。
舞台となる赤虫村他の地名、登場人物、各「無有(ないある)」「九頭火(くとうか)」「蓮太(はすた)」といった妖怪、そして中須磨家に伝わる"苦取(くとる)"信仰……全編これクトゥルーネタがふんだんにちりばめられている(妖怪のディテールも元ネタの邪神に準じていたり)。パロディ的に用いただけかと思いきや、終盤になるとにわかに妖怪譚、実話怪談風にとどまらない様相も見せて、日本を舞台にしたクトゥルー神話群としての一面も持ち合わせていることに気付く。
また、叫子の原稿として綴られる、様々な人物が妖怪に遭遇した際の体験談はなかなか生々しく、これがミステリ作品であると同時にれっきとしたホラー小説、怪談作品としての顔も持っていることが感じられる。
一方で不可能状況下での殺人事件を合理的に解明するというミステリとしては、謎を明かされてみれば拍子抜けとまでは行かずとも「なんだ、そういうことか」と言ったところ。
但しこの呻木叫子というキャラクターも快刀乱麻の名探偵というわけではなく(後輩の鰐口の方が推理力はあるものの、こちらも謎解きを滔々と語るキャラではない)、事件の真相として提示されたものに本当に腑に落ちたかというと……。その辺りややラストは、ホラー的な要素を好む読者にはにんまりとさせられるものか、と。クトゥルーネタだらけが故に、そちらの作品群にある程度慣れている方がより愉しめるとは思うが、それを差し引いても面白がれるホラーミステリ作品、と思えた。
Posted by ブクログ
ホラーとミステリーを一冊で堪能できるのはうれしい限り。
蓮太、九頭火、無有…独自の妖怪伝説が存在する赤虫村で、名家の中須磨家の人々が一人、また一人と妖怪の仕業としか思えない奇妙な状態で殺されていく。
探偵役の怪談作家・呻木叫子が取材して集めた赤虫村の怪談は合間合間の妖しい雰囲気を盛り上げて刺激的だし、怪談に秘められた謎が解かれていく過程も興味深い。
無有恐るべしだが、事件解決してホッと気が緩んだ最後に顔を出した人物に戦慄。おまえか~!祟りも呪いも神も凌駕する人間の内に秘めた底知れない黒さを見させてもらった。
Posted by ブクログ
怪談作家・呻木叫子シリーズ2作目のホラーミステリ。
土着信仰が残る村で起こる連続殺人事件は、どれも村独自の妖怪たちに殺されたかのような不可能犯罪だった…
呻木がフィールドワークで聞き取りをした村人の妖怪をめぐる体験談と、殺人事件の捜査が並行して描かれる。ミステリ的には盛り上がりに欠けるが、クトゥルーが土地に根付いた妖怪たちの話がワクワクして面白かった。
Posted by ブクログ
愛媛県山間部にある赤虫村には、独自の信仰と妖怪伝説が存在する。
古くから伝わるクトル信仰と、暴風を呼ぶ「蓮太」、火災を招く「九頭火」、無貌の「無有」……。
フィールドワークの為赤虫村を訪れた怪談作家の呻木叫子は、そこで妖怪伝説の災いを再現するかのような不可能状況下での連続殺人に遭遇する。
『影踏亭の怪談』で新人賞を受賞した大島さんの初長編。
『影踏亭の怪談』と呻木叫子という登場人物を同じくする同世界線でのお話ですが、時系列的には『影踏亭の怪談』よりも前になるのかな。
H・P・ラヴクラフトの作り出したクトゥルフ神話世界に属するような、独自の信仰形態と妖怪伝説の残る村で起こる不可解な殺人事件を追うストーリー。
『影踏亭の怪談』と同じく、三人称視点の話と呻木叫子の原稿とが交互に書かれていて、様々な視点から不思議現象が起こる村の様子が楽しめます。
ミステリとして、論理的に犯人を特定するというだけではなく、少しだけ異形の存在の介入を匂わせるような、ミステリとホラーのバランスが良いかんじ。
妖怪名も人名も、あらゆるものがクトゥルフ神話を想起させるようなものばかりで、クトゥルフ神話系の小説は1冊読んだきりの自分だと、ネタを全部拾え切れた気がしない……。クトゥルフ神話に詳しいとより楽しめるかもしれません。
Posted by ブクログ
密室殺人のトリックが妖怪や怪異と絡んだ民俗学ホラーミステリ長編だった。犯人は本当にあっていたのか?最後の終わり方が意味ありげで、ますます気になるし、謎が残る・・・。
Posted by ブクログ
ハウダニットに徹している感じだろうか。例えば、このロジックでこの犯人ならフーダニットを期待する読者はお呼びじゃない。その上で、ホワイの部分さえ、とってつけたような、明らかに破綻した(この理由なら最後の殺人は、自殺の偽装が完璧でなければならないはずである)理由が提示されるだけのいい加減さだから、ミステリとしては過大な期待はしないほうがよさそう。モキュメンタリーホラーとしては良い味を出してて楽しく読んだ。けれども、クトゥルー神話からの引用だよ? 愉しかったけれどさ、リアリティを気にしてはやれないはずで、こんなのとモキュメンタリーを組み合わせるのかい? とは思う。