あらすじ
弁護士の立原恭吾が何者かに殺害された。犯人は未だ不明の中、妻の高子は密かに養子の志史を疑い、甥の若林悠紀に彼の身辺調査を依頼する。元探偵事務所員だったとはいえ、悠紀にとっては志史は従弟というだけでなく、家庭教師として教えた子供の一人でもあった。渋々調査する悠紀だったが、志史には伯父の死亡時刻に鉄壁のアリバイがあることがわかる。誰にも心を許そうとしなかった志史の過去を調べるうちに、悠紀は愛憎渦巻く異様な人間関係の深淵を覗き見ることになる。第三十回鮎川哲也賞優秀賞受賞作。/解説=宇田川拓也
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Posted by ブクログ
おーいい本を読んだ。
なんかすごい透明で静謐というか、独特な世界観だった。
志史に対する祖父母や母親の態度ひどすぎる。
本当に暴力だけが虐待ではないのだなと悲しくなった。
悠紀の詮索も高子からもう調べなくて良いと言われてるのに、自分の気持ちだけでどんどんと暴いていく過程もこのボンボンが!と良い気分ではなかったし、何もしないでほしいと願ってしまった。
志史と理都の辛い境遇を理解したのなら、どうかこのまま何もせずにと思ってしまった。
これで2人が自首とか自殺とかしたら最悪だなと思っていたら、ラスト物語は予想外の方向へ。
そして完全に逆恨でびっくりした。
理都の生死がわからないまま物語は終わってしまうのが残念だけど、余韻が残りこれはこれでよい終わり方なんだろうな。
Posted by ブクログ
終盤まで淡々と調査が進んでいくが、志史の本当の感情が明かされるところが圧巻だった。周りの大人たちがあまりにも身勝手で、彼らがどれほど壮絶な過去を送ってきたか、そして彼らの聖域がどれほど希望だったかが想像できた。審判は委ねられたまま。どうか彼らをそっとしてあげてほしい、彼らが心穏やかに過ごせますように。祈らずにはいられなかった。
Posted by ブクログ
友情と初恋のもの語り。中心人物の二人はあまりに繊細で周りの大人は分かりやすくクズばかり。
探偵役を務める人物はなんというか、実際にも精神的にも良くも悪くもお坊っちゃんという欠陥品だと思う。過去にも誰も救えなかったし、寄り添ったところで多分今後も救えない人なんだろうなと思う。結局理都くんには会えてもいない。最初に青春ミステリかと軽い気持ちで読んだので心が重くなる内容で読後なんともいえない気持ちだった。
結局、最後生きるか死ぬか多分死ぬと思うけど結末は読者まかせか。どんな結末でもすっきりさせて欲しい病なのでモヤモヤする読後だった。