【感想・ネタバレ】古生物学者と40億年のレビュー

あらすじ

ロマンあふれるイメージが強い古生物学だが、その研究現場は苦悩の連続だ。40億年に及ぶ地球環境や生命進化の歴史を明らかにすべく、化石を手がかりにして、今は絶滅してしまった古生物の生態や地球環境の変動の歴史までを紐解こうとするが、バイアスだらけ、わからないことだらけ。化石は過去に地球に生息していた古生物の遺骸や痕跡が地層の中に残されたもの。長い年月を経て変形していることもあるし、化石が完全体であることはほとんどない。そこで、古生物学者は化石や地層に刻まれた情報からだけでなく、現在の生物を観察したり、数理モデルを駆使したり、様々なアプローチも用いて研究に挑んでいる。何億年も前の世界に思いを馳せながら一歩一歩進む学問の世界を気鋭の古生物学者が描き出す!! 【目次】第一章 古生物学とは/第二章 地層から古生物学的な情報を読み解く難しさ/第三章 古生物学の基礎知識/第四章 化石から「わかること」とは……?/第五章 化石を研究しない古生物学者/第六章 古生物学の研究はブルーオーシャン/あとがき

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Posted by ブクログ

古生物学は、化石を扱うことがメインである。
でも、それでは、できることが限られる。
化石からはわからないことが多い。
そのために、生物を化石目線で研究する手法や、数理モデルを活用して推測する方法がとられる。

同じ研究テーマに対して、みんながみんな地質学のアプローチしかとれないとしたら、確かに多様性がない。ダイバーシティって、研究においても重要だ。

学部が小さく先生たちの専門性の幅が小さいと、いろんなアプローチのトレーニングが受けられない。それって、やはりマイナスだなぁ、と思う

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2024年06月02日

Posted by ブクログ

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子供の頃、恐竜をはじめとする古生物を図鑑で眺め、「この頃の地球はどんな風景だったのだろう」と、想像して楽しんでいました。
しかしその後、大人になるにつれて、この分野から離れてしまいました。
ところが近年、生物全般や生物学への興味が高まったこともあり、生物の進化の歴史にも目が向くようになりました。

そんなタイミングで、この本のことを書評で知り、読んでみることにしました。
本書は全六章で、構成されています。

第一章の最初で著者は、「本書は古生物学の研究成果をピックアップしたものではなく、古生物学者の普段の研究現場の様子を紹介する内容である」と、宣言しています。

その上で第二章以降に、古生物学者が実際にどのような活動を行っているのかを、紹介しています。

第二章は、化石の年代を特定する前提となる、地層について。
以前から、「発掘された地層から、その化石の年代を特定するというけれど、どれだけ正確に見積もることが出来るのだろう?」と、疑問に思っていました。
この章を読んで、この疑問はあながち的外れではなかったなと、感じました。
地層から年代を推定するには、侵食等による堆積の中断や各地層の堆積速度等々、さまざまな要素を考慮する必要があるのだと、理解しました。

第三章は、発見された化石が、どのような前提で分析されているかについて。
ある程度想像していましたが、かなりざっくりした仮定の元で、調査研究がなされているのだと、理解しました。

第四章は、ざっくりした仮定の元で研究されている古生物について、何がわかっているのかについて。
第五章は、化石以外の情報から、古生物にアプローチしている研究について。

生存した生物全体の中でも、わずかな割合の個体・部分しか、化石として残らない。
しかも、生物には個体差がある。
そのような条件の中で、法則や傾向を見出し、古生物の姿や生態に少しずつ、迫っているのだと理解しました。

第六章は、研究分野としての古生物学の今後について。
膨大な研究対象に対し、悲しいほど少ない研究者の数。
試されていない研究アプローチも多くありそうなので、著者が書いている通り、ブルーオーシャンが広がっているのかもしれないなと、思いました。

本書の位置づけを乱暴にまとめると、「古生物学を研究するとは、どういうことなのか」ということを、業界の内側にいる立場から、一般の読者に分かりやすく説明しようとした本、と言うことになるかと思います。

読者の興味を集めるという点では、近年の華々しい研究成果をアピールした方が、良かったのかもしれません。
しかし、「古生物学が幅広い研究対象を持ちながら、恐竜という特定の生物に関心やリソースの投入が偏っている」という著者の問題意識があり、そのことを理解してもらうためにも、このような構成にしたのだと、自分なりに理解しました。

特定の分野への偏りというのは、他の研究分野でも、起こっているのかもしれませんね。

目先の成果を追うのか、後の研究につながる知見を、積み上げていくのか。
営利が第一目的ではない研究をどう育てていくのか、その費用をどうねん出するのか。

古生物学という特定分野での話でしたが、日本の学術界全般の問題についても考えさせてもらえた、一冊でした。
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2025年05月26日

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