【感想・ネタバレ】本居宣長―「もののあはれ」と「日本」の発見―(新潮選書)のレビュー

あらすじ

中国から西洋へ、私たち日本人の価値基準は常に「西側」に影響され続けてきた。貨幣経済が浸透し、社会秩序が大きく変容した18世紀半ば、和歌と古典とを通じて「日本」の精神的古層を掘り起こした国学者・本居宣長。波乱多きその半生と思索の日々、後世の研究をひもとき、従来の「もののあはれ」論を一新する渾身の論考。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

現在、私たちが当たり前のように享受している「日本」というアイデンティティは、どのようにして形づくられたのでしょう。
先崎彰容著『本居宣長』は、江戸中期という変化と不安の時代に、知の巨人・本居宣長が成し遂げた「コペルニクス的転回」を鮮やかに解き明かしてくれます。
当時の日本は、儒教や仏教といった「渡来の価値観」が知識人の血肉となっていました。その中で宣長は、「商人、あるいは医者、武士」という、どの階層にも属しながらどこにも定着しきれないような自らの立ち位置に悩み、「自分とは何者か」という根源的な問いを抱き続ける。その模索は、「京都での遊学」を経て、古典の森へと彼を誘います。
宣長が発見したのは、理屈で割り切ろうとする「男性的なもの」つまり「漢意(からごころ)」の虚飾でありました。彼はそれに対し、悲しみや恋慕に震える繊細な「女性的なもの」の中にこそ、人間の本質があると考えます。それが「もののあはれ」だったのです。当時の道徳観では、不義の恋などは不道徳と切り捨てられる対象でした。しかし宣長は、「恋愛と倫理」を切り離さず、むしろ制御不能な情念に寄り添うことの中に、日本独自の「まこと」を見出しました。
この視点の転換こそが、「日本」の発見へと繋がっていくのです。宣長は、古代から続く和歌や物語の中に、他者への深い共感の作法を見出しました。本書が指摘するように、「宣長最大の功績は、和歌と物語世界が肯定と共感の倫理学を主題とし、恋愛から『日本』という国家が立ち上がってくることを証明した点にある」のです。
国家とは、単なる制度や領土のことではありません。同じ「あはれ」を共有し、共に心を震わせる共同体です。外部から輸入された硬直的な理論ではなく、個人の震えるような恋心や悲しみという「私的な感情」の連なりが、結果として「日本」という公的な輪郭を描き出すのです。恋を知らずして日本を語ることなかれ!

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2026年04月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

国学者として有名な本居宣長の前半生を辿り、彼が研究活動の上で、和歌の中に見出した日本の伝統的思想とはいったい何であったのかを解説する一冊。

宣長は勧善懲悪・当然之理といった唐心を基に和歌を製作、解釈することを嫌った。唐心は大陸から渡ってきた思想体系であるため、和歌本来の伝統的な親しみ方とは異なる。あるモノと対峙した時に「ああ」と心が動かされることをあはれとよび、それらを洗練された詞で自由に表現することこそが和歌の本質として存在する。また、伝統的な時間の流れを感じながら当時の人々と共鳴することが本来の楽しみ方であると宣長は主張する。儒教的教えが流行していた当時の傾向に流されることなく、日本特有の文化を適切に守った宣長の功績は計り知れない。

日本史は高校以来触れていなかったため読書前は読み通せるか不安だったが、著者の軽快な文章のおかげで終始江戸の世界観に没頭できた。高校の先生が先崎さんだったらよかったのになと思う。

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2025年11月03日

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