あらすじ
中国から西洋へ、私たち日本人の価値基準は常に「西側」に影響され続けてきた。貨幣経済が浸透し、社会秩序が大きく変容した18世紀半ば、和歌と古典とを通じて「日本」の精神的古層を掘り起こした国学者・本居宣長。波乱多きその半生と思索の日々、後世の研究をひもとき、従来の「もののあはれ」論を一新する渾身の論考。
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Posted by ブクログ
国学者として有名な本居宣長の前半生を辿り、彼が研究活動の上で、和歌の中に見出した日本の伝統的思想とはいったい何であったのかを解説する一冊。
宣長は勧善懲悪・当然之理といった唐心を基に和歌を製作、解釈することを嫌った。唐心は大陸から渡ってきた思想体系であるため、和歌本来の伝統的な親しみ方とは異なる。あるモノと対峙した時に「ああ」と心が動かされることをあはれとよび、それらを洗練された詞で自由に表現することこそが和歌の本質として存在する。また、伝統的な時間の流れを感じながら当時の人々と共鳴することが本来の楽しみ方であると宣長は主張する。儒教的教えが流行していた当時の傾向に流されることなく、日本特有の文化を適切に守った宣長の功績は計り知れない。
日本史は高校以来触れていなかったため読書前は読み通せるか不安だったが、著者の軽快な文章のおかげで終始江戸の世界観に没頭できた。高校の先生が先崎さんだったらよかったのになと思う。