あらすじ
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日経BPクラシックス 第14弾
アダム・スミス『道徳感情論』新訳である。その冒頭――。
「人間というものをどれほど利己的とみなすとしても、なおその生まれ持った性質の中には
他の人のことを心に懸けずにはいられない何らかの働きがあり、他人の幸福を目にする快さ以外に
何も得るものがなくとも、その人たちの幸福を自分にとってなくてはならないと感じさせる」
スミスといえば、利己心が市場経済を動かすという『国富論』の記述が有名だが、
スミスの『国富論』に先立つ主著である『道徳感情論』では、他者への「共感」が人間行動の根底に置かれる。
本書序文を書いているノーベル経済学賞受賞者アマルティア・センは、こう述べている。
「スミスは、広くは経済のシステム、狭くは市場の機能が利己心以外の動機にいかに大きく依存するかを論じている。
(中略)事実、スミスは『思慮』を『自分にとって最も役立つ徳』とみなす一方で、『他人にとってたいへん有用なのは、
慈悲、正義、寛容、公共心といった資質』だと述べている。これら二点をはっきりと主張しているにもかかわらず、
残念ながら現代の経済学の大半は、スミスの解釈においてどちらも正しく理解していない。」
リーマン・ショック後の世界的な経済危機を経て、新しい資本主義を考える際の必読書といえる。
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Posted by ブクログ
人間は、他の人のことを心に懸けずにはいられない。“経済学の父”が、『国富論』に先立って構想した、「共感」原理に基づく道徳哲学を読み解く書籍。
私たちは、他人が悲しんでいると自分も悲しくなる。
それは想像力の働きによって、自分の身を他人の身に置き換えて考えるからだ。想像こそが、他人を思いやる気持ちの源である。
私たちは、友人に喜びよりも悲しみをわかってもらいたいと願う。
不幸な人は、共感が得られたら悲嘆を引き受けてもらったと感じる。この時、相手は悲しみを分かち合ったと言える。
私たちは自分の富を誇示し、貧しさを隠そうとする。それは、人間が悲しみよりも喜びに共感する傾向があるからだ。
栄達を求めず、何者にも頼らず、ひたすら自由に生きる。
そのための方法は、野心を抱かないこと、そして人々の注目を独占する支配者と自分を比べるような愚を犯さないことだ。
人々の尊敬と賛美に値するようになるための道は、2つある。
「富と権力を手に入れる道」と「知恵を究め、徳を実践する道」だ。そして、大多数の人間は、前者に惹きつけられる。
生活の程度が中流~下流の人の場合、堅実な職業的能力を備え、注意深く、不正を犯さず、慎み深く振る舞えば、失敗しない。「正直は最善の処世術である」という諺の通りである。
幸福は、心の平穏と楽しみの中にある。心が穏やかであれば、たいていのことは楽しめる。不幸に陥る大きな原因は、他者と自分の境遇を比べ、その差を過大視することにある。
個人にとって有用な資質は「理性と理解力」「自制心」だ。この2つの資質が「思慮」という最も有用な徳を形成する。