あらすじ
作家デビュー50周年に放つ、物語愛に溢れる大傑作
キング史上最も美しいラストに涙せよ
狙撃を実行したが結局、司直からも依頼人たちからも身を隠す羽目になったビリー。しかもたまたま、潜伏する家に転がり込んできた若い女性アリスを助けることになってしまった。
いったい何が起きているのか。依頼人は何を狙っていたのか――。ビリーは殺しの仕事の真相に近づくべく、策を練りはじめる。しかし、追い出すに追い出せないままのアリスをどうすればいいのか。執筆途中の小説も気にかかる。物語は急転回から加速して、ビリーの運命は思わぬ方向に動き出す!
事件の真の目的と黒幕とは!? 先読み不能な展開の末に、キング史上最も美しい名場面が――。殺し屋史上最高にカッコいい男の罪と罰、贖罪と復讐。そして物語を読むことと紡ぐことへの愛。巨匠がついに生み出した最高のクライム・ノヴェルに、震撼せよ。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
2025年の40、41冊目は、スティーヴン・キングの「ビリー・サマーズ」です。キングの作品を読むのは、「アウトサイダー」以来でしょうか。この作品は、キングお得意の超能力もホラーも有りません。至って普通の小説です。上下巻、2段組みの構成で合計600ページ以上有りますが、流石にキングです。読ませます。作家人生の最終盤に向かいつつあるキングの最後の傑作と言って良いかも知れません。
主人公は、元軍人でイラク帰還兵の凄腕の殺し屋ビリー・サマーズです。ビリーは、ある人物の暗殺を依頼され、それを最後の仕事と決めて引き受けます。最後の仕事と云うベタな設定ながら、そこはキングです。最後は思いも寄らない所に着地します。
読み所としては、まずは、ビリーが暗殺に向けて、何ヶ月も前から地域に溶け込み、地域住民と触れ合いながら、入念に準備を進める過程が面白く、非常に凝ってもいます。次に、アリスが登場して以降は、別の作品になったかのように変化して行きます。辛い出来事を経験したアリスが、ビリーに助けられ、行動を共にして行く中で、辛い出来事を消化しつつ、新たな人生を模索し、踏み出す過程が描かれて行きます。
そして、作中作品として描かれるビリーの自叙伝が何より素晴らしいです。最後、作中作品であったはずが、本編に合体してクローズするという構成が凄すぎます。
☆4.9余韻が残るラストも素晴らしい
Posted by ブクログ
印象的なラストに感動しました。
事件の真相は割と呆気なく分かりますが、それ以上にビリーやアリス、バッキー、ニックなどの魅力的な登場人物が多く、飽きずに最後まで楽しめました。
Posted by ブクログ
面白かった。話の結末はある程度想像ついたが、最後はこう来たか、と美しい仕掛けに嬉しくなった。あくまで抒情として話が進み、サスペンフルとは程遠いが、冗長を感じることはほとんどない。それに「ビリー」が書いた自叙伝の巧さ、アリスだけに読ませるという仕掛け、ベテランの巧さに感激した。ただ、コロナ下で執筆されたこともあり、関係ないのにコロナに言及があったり、トランプの悪口が多めなのは、時代のせいかもしれないけれど、興が削がれた感じがした。いずれにしても超おすすめだし、11/22/63が読みたくなった。
Posted by ブクログ
本を読んだ後、どっと疲労感を感じるほど、著者のエネルギーを感じる作品だった。
また、普段文章を書いたり、趣味で創作している自分にとって、諦めずに読んで良かったと思える内容だった。物語を書くことが如何に素晴らしく意味のあることなのかが伝わり、心に響いて涙が止まらなくなった。勇気を貰える作品。
まず、上巻。高評価やあらすじで期待大の中、退屈さにがっくりした。
愛らしい主人公にアットホームな人間模様、小説への情熱(作中作も面白い)に興味を惹かれるが、展開があまりにも平坦で。起承転結の承がなかなか始まらない感じ。それが二段で長編だから挫折しそうになった。
8割読みかけたところで耐えられないと脳が叫んだ。読書力の限界を感じる。
しかし、下巻から面白いというレビューらのお陰で、諦めずに下巻へ突入。
途端に面白くなった。
まず、アリスのキャラが好きだ。とくに個性的でも強いわけでも美人なわけでもないのに、自然と共感して感情移入する、魅力的なキャラ。恋焦がれて道を踏み外してしまう脆さも含めて、まったく不快なところがない。
アリスや隣家の子とビリーの関係が、俗っぽいロマンスでなく、みずみずしい健全なものであることも好み。だからこそ、ビリーの温かいパーソナリティと職業の葛藤がひしひし伝わる。
アリスを起点に展開はスピーディーに進む。
性加害者を復讐するシーンは爽快。性犯罪を悲劇として軽やかに扱われるのは苦手だが、本作はそんな感じはしない。
また、加害者の少年に情を捨てないシーンも、ビリーの人柄が感じられて印象に残った。
しかし、性被害者の過去は一生消えないので、主犯はもっとやってほしかった。
そんで、イケオジのバッキー。この人の登場から展開がより面白くなった。ニック奇襲シーンも印象的。ニックは最初から最後まで悪人だけど憎めない悪役だった。
ただ…最後まで読んでも、改めて上巻は結構冗長?結構物語として不必要な箇所も多かった印象。
ラストの車のシーンで号泣。ここでモノポリーが登場するのが切ない。ずっとアリスとビリーは破滅に向かっている感じがあったので、結末は予想できたけど、死の瞬間をこうして描写するとは。ビリーは孤独な殺し屋のようで、愛や絆に満ちた人生だったのかと感じた。
ところどころ、長い、飽きる、と感じてしまったのが本音。各巻の後半ほど、体力持たなくなった感じ。
しかし、最後の数ページは筆者の小説を書くことへの思いが溢れていて、涙が止まらなくなり、忘れられないラストになった。
Posted by ブクログ
2024年スティーブン・キングデビュー50周年記念出版の本作
キングは30年くらい前に「スタンドバイミー」を読んで、「映画とちがうなぁ」と思った記憶しかなく、どんな作風の作家なのかも知らなかったんですけど
トランプ大統領、性犯罪、小児の性的身体的虐待、に強くNOを突きつけてました
もともとはコロナ前に書かれたようなので、トランプ→バイデン→トランプになったのをどういう気持ちで見ていたのか気になるところ
たぶん戦争に対しても批判してると思うんだけど、ビリーの射的能力は戦争で開花しているからなぁ…
ただ戦争のトラウマ、なんらかの事件のトラウマに向ける目は優しい
途中から映画「レオン」みたいになったので、下巻に入ったあたりから「どうやって終わらせるんだろう?」と思いながら読んだけど、とてもベストだったと思う
ビリーの死亡原因がマージが撃った弾丸というのがとても良かった
息子の仇をとる母親
「物語を書くこと」についても描かれている場面はキングの想いも込められているのかな
Posted by ブクログ
上巻の最終盤でとんだやっかいごとに対処するはめになったビリー。
ただそこでのビリーの振る舞いが、主目的は自身の潜伏生活への危険を排除するためだが、半ばやけくそ気味になりつつもやっぱり「善き人」の行動様式。
このアクシデントから思わぬ旅の友が増えることになる。
ということで後半は自分を嵌めたニック、そしてその奥にいる真の黒幕へ落とし前をつけに行くロードノベルの様相。
上巻から時折挟み込まれていた作中作もいよいよビリーの心の奥底に沈むイラク戦争での喪失と対峙することに。
この”ひと仕事”の筋書きはビリーが睨んだとおりだったのか、真の黒幕は誰で何を狙っていたのか、気になり過ぎてどんどんページが進む。
真の黒幕が見え、霧が晴れてしまってからはさすがに既視感が強まり(『拳銃使いの娘』が強くよぎった)ややダレてしまった。
それでも物語の前半出てきたエピソード、登場人物達を置いてけぼりにせず今一度攫うところだったり(とある女性との関係はやや置いてけぼりだった気もするが)、作中作を上手く使ったおしゃれな結末の書きっぷりに、結果ちゃんと最後まで楽しませてもらいました。
このミス2025年度版海外編2位。
Posted by ブクログ
たまに見かけそうなジャンルを、まあよくありそうな結末で描いているだけのはずなのに、読んでいてずっとおもしろい。さすがスティーブン・キングというところ。
「小説」が地の文での最新近況に追いついてしまった時点で嫌な予感はしたが、「作者」が信じたかった展開をはらはらしながら追いかけているうちに、ふと最後に待つ現実を忘れてしまった。書くことについて書かれたことの説得力は抜群で、書かれた人物が書かれたままに生きているという説の正しさは、ここまで夢中になって読み続け、架空の登場人物でしかない存在の生き死ににこだわっている読者だからこそ実感できるという、上下巻2冊もかけてのおもしろい仕掛けだった。さすキン。
そしてここまで読みやすかったのはやはり訳者の方のおかげだとも思う。さす朗!