あらすじ
ホスピスで起きた3件の不審死。沈黙を貫く医師が抱える真相とは?
救うべきは、患者か、命か――。
『闇に香る嘘』『同姓同名』の著者渾身、“命の尊厳”に切り込む傑作医療ミステリー!
「先生は、患者を救ったんです――」
末期がん患者の水木雅隆に安楽死を行ったとして、裁判を受ける天心病院の医師・神崎秀輝。「神崎先生は私から……愛する夫を奪っていったんです…!」証人席から雅隆の妻・多香子が悲痛な声をあげるも一向に口を開こうとはしない。そんな神崎には他にも2件、安楽死の疑惑がかかっていた。患者思いで評判だった医師がなぜ――?
悲鳴をあげる“命”を前に、懊悩(おうのう)する医師がたどり着いた「答え」とは?
“安楽死”をテーマに描く、乱歩賞作家渾身の医療ミステリー!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
安楽死をテーマにした下村さんの作品。
ホスピスで起きた三件の不審死。そして、安楽死措置を行ったとして、神崎医師が逮捕され裁判にかけられる。
神崎医師は、裁判で黙秘を貫く。
なぜ、患者思いの優しい彼は、安楽死措置を行ったのか?
そして、なぜ、黙秘を貫くのか?
そこには、深い苦悩があった。
それぞれの立場から綴られる物語。
・望まれない命
・選択する命
・看取られる命
・奪われた命
・償う命
・背負う命
命のあり方や、人の生き方など、すぐに答えは出ませんが、どれも深いテーマの内容です。
特に、第四話の『奪われた命』は、涙なしでは読めません。
Posted by ブクログ
現代社会が抱える様々な課題をテーマに、作品を次々に著す著者が今回選んだのは、終末期医療及び安楽死。
この重たいテーマを主題にした6話からなる連作短編ミステリー。超高齢社会の日本で、誰もが避けることの出来ないこの問題。
ホスピスで起きた不審死で裁判にかけられる神崎医師を主役に、助かる見込みがなく耐えがたい痛みに苦しむ患者とその家族を前にした後輩医師や看護師の苦悩が各話に描かれる。
第4話では、シベリアで抑留されていた男と彼の妹とを主役に展開する。
男の、希望のない永久凍土の地獄で奴隷にされる毎日と妹の癌に冒され耐えがたい痛みに苦しむ毎日とを、オーバーラップさせ小説に膨らみを持たせて、特に印象深い。
安楽死が認められていない日本で、「ターミナルセデーション」=終末期鎮静という緩和ケアは容認されており、その違いに疑問を持ち悩む医師の姿が描かれている。
「患者に安楽死を切望させてしまったとしたら、医師の力不足だ。医師自ら患者を手にかける行為は、それを認めてしまっているに等しい。安楽死が医師の努力義務の放棄だと気づいたとき、医師は――いや、私にはもっとできることがあるんじゃないか、と思うに至ったんだよ」
神崎医師の言葉に救いがある。
Posted by ブクログ
安楽死について考えることがあったので、とても胸にささる内容だった。
私は長く生きることよりも、短くても自由に動き回れる体で好きな事をして生きたい。
むしろ年老いて一日中ベットで何もすることも無く過ごすのは生き地獄だなと小さい頃から思っていた。
それプラス生きてるだけで苦痛を伴うとなると、尚更安楽死を望む気持ちは理解できる。
これは今のところ死が身近じゃないから思うことで、実際に死が迫って来たらやっぱり死にたくと思うのかなぁ…
大切な人であればあるほど、苦しんで死んでいくくらいなら早く楽にしてやりたいと思ってしまうのは間違いなんだろうか
Posted by ブクログ
今まで無かった視点でした。
安楽死を与える事は誰にとっての救いなのか?
そして、救われた人と同じ数だけ苦しむ人が増えてしまう・・・
下村さんの小説ですから 仕掛けが無いわけが無いと思い読み進めていくうちに、安楽死に関わる医師の少しずつゆっくりと蝕まれていく何かを少しだけ感じる事が出来ました。
何処からが安楽死=犯罪で、何処までが医療行為に当たるのかにも疑問を感じました。
安楽死を犯罪と定義しているのは法律で、法律は人の命が一番大事という前提で作られているため死に加担する行為を只々禁止しているだけであり、法律自体が人の尊厳を傷つけている可能性があるかもしれない・・・
一方で医療行為ではあるはずの、ターミナルケアには痛みと同時に意識が遠のいてしまうものもあり、果たして安楽死とどう違うのか整理しきれないものもあるのが事実です・・・
もしかすると、安楽死に関わって犯罪者と扱われた医者の中には苦悩の末に導き出した答えが其れだったのかもしれないと考えさせられました・・・
答えが出ない問題であるからこそメディアに煽られず踊らされず考えなければならない事なのかもしれません。
ホスピスで起きた三件の不審死!?
末期がんの患者に対して安楽死の措置をとったとして1人の医師が逮捕!!!
物語は法廷から始まる・・・
死刑の話とシベリア抑留の話も考えさせられました・・・
Posted by ブクログ
ホスピス天心病院の神崎医師は安楽死の疑いで起訴され裁判中。医師側の内情を書いた本は少ない、多くの医療者は悩み苦悩して患者の事を考えているはず。簡単な問題ではないが皆が幸せになる法律って無いのかな。現状の安楽死(正確には自殺幇助)が海外に行くことができる財力、知力、体力がある人しか可能性が無い、ではこの先心配でならない。苦しむ身内を見ているのは本当に辛く、その後もその姿がこびりついてしまう。いい別れの記憶のためにも大切な問題だと感じた。
Posted by ブクログ
人生の最期が近づいている中で安楽死を望む患者と、決して実行することができない医者。医療の本当の意義とは何なのか。
また、生きている以上『死』は避けられないがターミナルケアの重要性は増していると感じる。
Posted by ブクログ
下村敦史『白医』講談社文庫。
安楽死をテーマにした医療ミステリー。ミステリーと言うよりもヒューマンドラマと言った方が正解か。
超高齢化社会が到来し、医療技術が進歩し、不治の病に苦しみながら死ぬに死ねない人たちが増えているのは事実だ。そんな状況の中、安楽死、或いは尊厳死と言うのは非常に難しい問題で、簡単に答えを出すことは出来ないのだろう。
本作では、安楽死や尊厳死について是非は明確にせず、時と場合により選択の余地があることを匂わせている。
ホスピス、天心病院の医師、神崎秀輝は末期癌のボクサー、水木雅隆の安楽死を行ったとして裁判に掛けられる。神崎はその他に2件の安楽死に関わったとされていた。
少しずつ明らかにされる安楽死の真相……
定価869円
★★★★
Posted by ブクログ
ホスピスで起きた3件の医師による安楽死事件。
内部告発により、医師の神崎が裁判にかけられる。
患者思いと評判の彼がなぜ、3件もの安楽死に手を染めたのか…
神崎は沈黙を貫くが、そこには患者や家族にも及ぶ深い理由があった。
末期癌患者のためのホスピスでも、痛みを完全に取ることは難しい。
本人、家族、医師にもそれぞれの思いがあるが、安らかな死とは一体何なのか…
将来自分が直面した時、どんな風に思うだろうか。
2025.6.29
Posted by ブクログ
安楽死やターミナルケアが題材のお話ですが、程よいミステリー要素のおかげで、すごく読みやすくて驚きました。
ずっとシリアスな展開が続く話ではあるんだけど、わたし個人としては、読んでいて過度に不安を煽られたり苦しくなったりすることはなかった。
終末期医療について初めて知る部分もあり、物語を通して安楽死について色々考えさせられる、道徳的な教科書みたいな本でした。
あらすじを見て、気になっている方にはオススメの一冊です。
Posted by ブクログ
死を目前にした患者とその家族の安楽死をめぐる各々の考え方と接し方。
そして患者とその家族を支える医師の葛藤。
判断は間違ってなかったのか、どうするべきだったのかを問う