あらすじ
『銀花の蔵』『雪の鉄樹』『オブリヴィオン』の著者が放つ、人間の業の極限に挑んだ、衝撃の問題作。
しがない日本画家の竹井清秀は、
妻子を同時に喪ってから生きた人間を描けず、「死体画家」と揶揄されていた。
ある晩、急な電話に駆けつけると、長らく絶縁したままの天才料理人の父、康則の遺体があり、
全裸で震える少女、蓮子がいた。
十一年にわたり父が密かに匿っていたのだ。
激しい嫌悪を覚える一方で、どうしようもなく蓮子に惹かれていく。
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Posted by ブクログ
一章が終わるまでは、蓮子の回復と、それと並行して清秀が父親などの呪縛から解放されていく話かと思いました。
それがまさか、清秀が自身の創作意欲のために蓮子を攫ってしまうとは……
以降、どんどん壊れていく清秀と、壊れたくないといいつつも清秀から離れられず、絵のモデルであり続けようとする蓮子。極端に破滅的になっていく展開に、戦慄すら感じます。
清秀の病は悪化の一途をたどり、最終的にはこの世を去っていきます。しかし、その時の表情から察するに満足のいく絵を、久蔵の「櫻図」を超えるものを描き切れたと解釈してよいのでしょうか。
作者の過去作「蓮の数式」の解説に「蓮という花は、綺麗な水では小さな話か咲かせられず、泥水でこそ大きく花開く」とありました。「蓮」が清秀の生きざまを象徴しているのであれば、最後は「大きく花開いた」と思いたいところです。
また、艶めかしさが魅力だけど臭う絵具「腐れ胡紛」の存在や、康則が治親に言い放った「体裁だけ整えた上っ面の美がどれだけ愚かで卑しいか」というところに、蓮に共通する象徴的なものを感じました。
過去作を連想させる要素が多かったのですが、そうした象徴的なところによるのか、焼き直しという印象はなく、どの作品とも違う強いインパクトのある作品でした。