あらすじ
【内容紹介】
底なしの「少子化問題」を
女性の“心”の視点からひも解く!!
2022年に出生数が70万人台となり、さらにペースが加速している日本の少子化。
なぜ日本は“底なしの少子化”に陥ったのか?
「日本における最大の雇用問題は女性」と指摘する著者が、少子化問題を日本社会における女性のあり方の変遷から解説。これまで妊娠、出産、育児の負担を押し付けられ、時代の常識に翻弄されてきた女性たちの心の視点から“少子化の原因”をひも解く。
平塚らいてうvs与謝野晶子の「女権×母権」論争から、「働け、産め、育てろ」という三重苦を負わせた女性支援、婚活・妊活ブームの圧力、不妊治療の最前線まで、女性を結婚や出産から遠ざけてきた“正体”に迫る1冊。
【著者紹介】
[著]海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
1964年、東京生まれ。雇用ジャーナリスト。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルート)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計等に携わる。その後、リクルートワークス研究所にて雑誌Works編集長。2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げ、人事・経営誌HRmics編集長就任。著作は雇用・マネジメント・人事・社会保障・教育などをテーマに多数。
【目次抜粋】
◆はじめに~底なしの少子化が問いかけること~
◆第一章 社会は女“性”をいかに弄んだか。
1.らいてうと晶子のバトルが現代人に教えてくれること~明治・大正前期~
2.産め・産むな。転変する「上からの指令」~大正後期から高度経済成長期~
3.“女性のあるべき像”が、いつの時代も女性を苦しめる~バブル~平成中期~
◆第二章 「女は働くな」と「女も働け」の軋み
1.昭和型「およめさん」輩出構造
2.働き方は変わったが、意識と仕組みが取り残されたまま
3.社会が変わる節目
4.女性の社会進出は、「量」から「質」に
5.ようやく家庭にも令和の風が吹く
◆第三章 「強い男とかわいい女」が褪せない人たち
1.結婚したら昔と変わらず産んでいる
2.職場結婚の減少した本当の理由
3.そして職場から「いい男」は消えた
◆第四章 30歳「不安」、35歳「焦燥」、40歳「諦め」
1.婚活・妊活に追い立てられ、責められる女性
2.日本では長らく40代出産が当たり前だった
3.名医たちの温かな手
4.上を向いて歩ける未来
◆第五章 もう一度、女性が子どもを産みたくなるために
1.「30歳の焦燥」から、「女性は二度おいしい」へ
2.「子育ては社会で」を徹底的に実現する
3.「年輩の男は偉い」という幻想を解消する
4.未だ蔓延るジェンダーバイアスを徹底的につぶす
5.タブ―への挑戦
◆おわりに 「女性活躍」という言葉がなくなる日
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Posted by ブクログ
【異次元の少子化対策が、意識や社会を変えられたら】
子供がいなくても幸せなあなたへ
労働力や税源として
いずれ子供達に支えられる未来に想いを馳せてほしい
育児は苦でなく楽しいもの
共働きと両立できるものだと
誰もが思える日が来ることを願って
・90年代以降の経済不調で短大卒の就職先が減少、4大進学率上昇と総合職化が進む
・女性の高学歴化や社会進出に伴い「格上」の男性が減った一方で、依然として男性に「経済力」「職業」「学歴」を求める女性が多い
→高学歴女性、低賃金男性が余る(ハードワークな低学歴低賃金女性も?)
・夫婦共に正社員雇用でも妻の家事育児時間が長い
・40代は子供が産めないというメディアを中心とした刷り込み
→男性が35歳以上の女性を避け、女性自身も婚姻を諦める要因に?
・サービス業の単価が安すぎるので諸外国と比べ外食やサービス業の利用割合が高い
→非正規雇用の人件費が高まり販売価格に転嫁されれば利用者が減り、人材不足も収まり、家で済ませるとなると共同生活で分業するメリットが増す
・子育て支援の財源として新たな社会保険を創設すると「なぜ子供がいないのに負担しなければならないのか」という批判が渦巻く
→介護保険導入前は介護=嫁がやるのが常識だったが、制度設立が意識や社会を変えた
・子持ちの主婦が遊ぶなんてもってのほかという風潮
→社会全体で育てる仕組みづくり、仕事と両立するうえでの精神的負担軽減に公費を割く
Posted by ブクログ
色んな観点からの少子化問題が語られていて面白かった。日本のサービス業が安く便利すぎるから、結婚が進まないという視点も興味深かった。
最後の「差別される側の差別」は耳が痛い思いをした。
Posted by ブクログ
本書は専門的すぎないし、それていてデータを駆使して、分かりやすい文体で非常に興味深く読み終えました。
過去は明治の与謝野晶子から歴史を紐解いていますが、時代と意識の変化は、多くの人が思うよりも大きいと感じましたね。
読んでいて、そう言えば過去はそうだったよねとうなずくこともしばしば。
女性の問題ほど、日本社会で意識の変化が大きく変わった事は無かったのではないかと思いましたよ。
「昭和型社会構造」が壊れた経過などは、小生の青年時代を振り返って納得の思いを持ちました。
さらに「女性の社会進出」が「理念や啓蒙活動」でおきたのではなく「経済・人口構成・差別などの社会的要因」が起点になったとの認識は説得力が有りましたね。
また「家事・育児の外部サービスを利用すべきか」の出生動向基本調査の結果が、短い期間に「利用すべきでないから「すべき」に大きく変化したなどの、興味深い指摘には驚きました。
本書は、本来個人の私的な決断である「婚姻と出産」についての「社会意識」を抉る様に明快に書いた本だと高く評価します。
Posted by ブクログ
総論においては、筆者の主張に首肯できるのだが、第5章で積み上げ方式の査定を改めて、洗い替え方式にせよ、と主張している。
積み上げ方式の評価の会社もあるのだろうが、公式には洗い替え式を謳いつつも、実際の運用は積み上げ式に近い会社も多いのではないか、と推察しています。
知り合いの会社では以前、エリート人材を発掘・伸ばすためと称して、優秀層を積極的に登用する施策を続けてきました。確かに一部の優秀な人材が取り立てられたのですが、あぶれた次点、中間層が会社から流出するなど、弊害が大きくなり、従来型の査定に戻したとのことです。このように制度を作っても、運用が難しい人事制度は大部分の会社で上手くいかないのではないかと思います。