【感想・ネタバレ】あなたがあの曲を好きなわけ: 「音楽の好み」がわかる七つの要素のレビュー

あらすじ

私自身、音楽や感情、それに脳についてはよく知っていると思っていたが、
本書からは実に多くのことを学べた……卓越した一冊である。
――ダニエル・J・レヴィティン(『音楽好きな脳』著者)

この本には夢中になった。
自分が好きなレコードを好きになった理由が理解できたから、
次の宝探しの地図を手に入れたようなものだよ。
――モビーン・アザール(ジャーナリスト、『プリンス1958-2016』著者)

これほど驚くべき本を書けるのはスーザン・ロジャースしかいない。
音楽に対する愛情、歴史の創造に携わったレコーディングスタジオでの
幅広い経験、このテーマに関する深い知識――これらを持つ彼女のおかげで、
自分が人生で音楽を愛する理由が理解できた。
――デュエイン・チューダール(著述家、テレビプロデューサー)

<I>〝殿下〟プリンスの名作を手掛け、
全米ナンバーワンヒットをプロデュースした著者が、
あの曲にどうしようもなく惹かれる理由を探る。
</I>

数々の名作を手掛けた音楽プロデューサーから認知神経科学者に
転身したスーザン・ロジャースが、音楽の七つの要素
(本物らしさ、リアリズム、斬新さ、メロディー、歌詞、リズム、音色)
に基づく「リスナー特性」によって、好きな曲で心が動かされる
理由を明らかにしていく。この、リスナー特性を探ることで、
音楽とのつながりが深まり、自分の個性も見えてくるという。
科学に裏打ちされた洞察を織り込み、あらゆるジャンルの音楽に光を当て、
レコード制作の舞台裏やプロデュース術も紹介する本書を読めば、
音楽の楽しみ方が大きく変わる!

●目次
序曲(オーバーチュア)
第1章 本物らしさ――表現の聴こえ方
第2章 リアリズム――音楽の見た目
第3章 斬新さ――リスクの聴こえ方
第4章 メロディー――音楽の感覚
第5章 歌詞――アイデンティティーの聴こえ方
第6章 リズム――音楽の動き方
第7章 音色――音楽が呼び覚ますもの
第8章 形式と役割――音楽プロデューサーにとっての聴こえ方
第9章 一耳惚れ――あなた自身を表す音楽
終結部(コーダ)

●本文より
自らのリスナー特性を把握して、「あなた自身を表す音楽」を理解する能力は、
完全にあなたの中にある。自分が好きなレコードの特色やニュアンスを探り出し、
ほかの曲ではなくその曲を高く評価する理由を解明できるのは、あなただけだ。
自分の音楽の好みを探ることは、人との関係を追求することと同じくらいに
目を見開かされる自己発見の旅になる。(略)
自分の本性を見極める一番の方法とは、自らのプレイリストに飛び込んで
……耳を傾けることなのだ。

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Posted by ブクログ

伝説のスーザンロジャース先生。内容の骨的な部分は他の本でも論じられているような事が多いが、やはり現場の人の話すことはおもしろい。録音だけでなくプロデュースもしてたのね。特にプリンスから独立してからの仕事の話や、彼女の好みの音楽の紹介はベリーグッド。

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2025年01月10日

Posted by ブクログ

元音楽プロデューサーで、現在はバークリー音楽大学教授のスーザン・ロジャースと、神経科学者であるオギ・オーガスとの共著。

本書では、「音楽の好みがわかる七つの要素」として、以下のものを挙げている。

1.本物らしさ
2.リアリズム
3.斬新さ
4.メロディ
5.歌詞
6.リズム
7.音色

7項目のうち、1~3は二項対立である。4~7はいくつもの異なる軸から成り立っており、二項対立ではない。
このうち、本物らしさ(オーセンティシティ)だけは解せない。説明に一貫性がないからだ。

オーセンティシティとは、音楽の演奏において表される感情が心からのものであり、作為的ではないという主観的革新のことだ。(p28)

ここで取り上げられている音楽は、父親に音楽を強制された姉妹グループ「シャッグス(The Shaggs)」と、ヨハン・ゼバスティアン・バッハだ。対立するキーワードは、「ナイーブ音楽と知的音楽」=「首から下の音楽と首から上の音楽」である。

ナイーブアートとは、正規の訓練を受けていない人や、演奏ルール・音楽理論に毒されていない人によるアートとのことである。ナイーブ音楽の対極に位置するのが知的音楽だ。
シャッグスは音楽教育を受けておらず、世間とも隔離されていた。だからナイーブ音楽の極致にあるという。ナイーブ音楽の対極に位置する知的音楽の代表はバッハだとのこと。ここまでは納得がいく。混乱を生むのはここからだ。

少々長いが、2か所を引用しよう。

バッハの音楽もシャッグスの音楽と同じく本物だ。ただ、シャッグスの音楽と違って、バッハの音楽は音楽理論 (中略) を用いて組み立てられている。"知的音楽をトミー・ジョーダンは「首から上の音楽」と読んでいる。 (中略) バッハのような真のマエストロであれば、正規の規則体系を用いてめくるめく様々な感情を喚起できるが、それほど有能ではない音楽家が同じ規則体系を用いて作り出す音楽は、生硬か自意識過剰、もしくは魂がこもっていないように聞こえる。(p31)

私は"首から下"の感じがはっきりある音楽を強く好むが、共著者のオギを含めて多くの人がとくに好きなのが"首から上"のオーセンティシティだ。オギも好む、バッハによる「マニフィカト ニ長調」(BWV243)として知られる作品を、一分ほどでいいから聴いてみてほしい。その中でバッハが表現している感情こそ、オギの心を躍らせる超越的な歓喜である。バッハによるこの感情面の結びつきは、音程のバランスが完璧にとれている五声対位法からもたらされたものだ。正式な音楽の技法を知らない聴き手でも、この作品が自分の魂と直接心を通わせているのが感じられるだろう。(p32)

このあたりは、注意深く読まないと、バッハの音楽は「首から上の音楽」だと思ってしまいかねない。バッハをよく知る人なら、バッハは、首から上の音楽=心でなく頭で作ったような音楽とは、正反対に位置する音楽家だと認識しているはずだ。

誤解を招くような記述はあるものの、著者の意図を汲んでまとめると、次のようになるのではないか。

バッハの音楽は、「本物らしさ」があり、「知的音楽」である。「知的音楽」は「首から上の音楽」である。バッハのような真のマエストロ以外の「首から上の音楽」は「心でなく頭で作ったような音楽に聴こえかねない」。

つまり、バッハは「本物らしさ」の二項対立では説明できない例外に当たる。それにも関わらず、シャッグスとバッハを対極として取り上げたところに問題がある。シャッグスに対して、取り上げるべきだったのは、心でなく頭で作った音楽家だったのだ。


音楽の分類の仕方は色々とあるが、「芸術音楽と娯楽音楽」に分類した場合、本書で取り上げているのは娯楽音楽である。前述したとおり、第1章ではバッハが取り上げられているが、クラシック音楽の作曲家でほかに名前が出てくるのはラヴェルくらいである。

私は、古今東西を問わず、あらゆるジャンルの音楽を聴いてきた。クラシック音楽、ジャズ、ロック(HR/HM、パンク、プログレ等、含む)、ポップ、ソウル、R&B、ラップ、EDM、ニューエンジ、民族音楽...その他色々。もちろん、知らない曲も取り上げられていたので、そういう曲はその都度ネットで調べて聴いて読んだ。紹介されている曲を思い浮かべながら読むのが理想だが、熱心な音楽ファンなら、聴かなくても本書で言わんとしてることは大体わかるだろう。

本書を読んでも、自分の音楽の好みが理解できるようになるわけではない。音色(おんしょく)の好み一つとってみても、軸は複数あり、複雑だからだ。
本書で挙げられている各要素を用いて、好きな音楽と、そうではない音楽について、考えるきっかけにはなる。それこそが、著者の意図していたことでもある。

余談だが、音楽も含め、自分の好みを知るには、『好き嫌い―行動科学最大の謎―』 (文庫版改題:『ハマりたがる脳―「好き」の科学―』)(トム・ヴァンダービルト/著)(早川書房、2018、2020年)の方が参考になる。そこでは、音楽配信から得られたビッグデータから「多様性、発見、なじみ深さ」がキーワードとして挙げられている。

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2026年04月04日

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