あらすじ
父は一九二〇年代に来日した、日本語小説を書いた最初の朝鮮人で、のちに皇道思想家。戦後は心の病に冒され、六〇年にひとり帰国した――。父や母の歴史と子供たちの人生との間にはどのようにつながりがあるのか。本書は、ひとつの「在日」家族の誕生から終焉まで、そして、そのひとりひとりの生き方を、戦前から現在にいたる日本と韓国の関係と重ね合わせて描くことによって、新たな認識と洞察を読者にもたらす。
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Posted by ブクログ
著者自身の若い頃のこと、両親きょうだいのことが書かれている。「在日」ということに煩悶しながら生きていたご自身の若い頃。外に向かって激しく生きた父と妹。内に向かって寡黙に生きた母と兄。在日であるがためか性向のためか、それぞれ厳しい人生を歩んできたのだなあと思った。
こんなタイトルだけど、著者は「一世が戦前から日本に住んでいる特別永住者たちはどんどん日本国籍を取得して、日本人として生きていけばいい」(p.179)、「在日たちはもう祖国との関係を清算していい。韓国籍から離れたほうが韓国人とのつきあいも透明で公平なものになるだろう」なんて述べているので、在日であることを軽く考えたほうがいいという立場だよね。たぶん同じようなことから、外国籍であることを理由に都の管理職試験を拒否され提訴した妹の主張を痛烈に批判もしている。
私はついつい自分の出自や民族を大切に生きることがいいことだと思ってきたし、特に望まずして来日したり生き延びるために来日し日本で暮らしてきた朝鮮半島の人たちが自分たちのルーツを大切にしたり主張することはいいこと、そうすべきだと思ってきたからそうでない著者の主張は驚いた。確かに自分の思ってきたことはある意味、盲目的な思い込みだったかもしれない。かといって、やっぱり自分のルーツにはこだわっていいんじゃないのとも思う。このことは自分のなかでもっと考えていきたい。