あらすじ
賃金や1人当たり国内総生産(GDP)で見て、日本は先進国の最低レベルとなった。この状況に対して、賃金を上げ、成長するためには成長戦略や構造改革をすればよい、という議論が多い。だが、その中身は空っぽである。成長率を高める方法は、実はノーベル経済学賞学者にも分からない。賃金が上がらないのは、企業が利益をため込んで労働者に還元しないからだという人もいるかもしれない。しかし、すべての賃金とすべての利潤を合計したものであるGDPで見ても、日本の1人当たり実質GDPは他の国と比べてやはり伸びていない。では、どうすれば日本人の給料は上がるのか。生産性、為替、財政、あらゆる角度からエコノミストが難問に挑む。 〈目次より〉第1章 日本の賃金はなぜ上がらないのか 第2章 成長戦略は可能か 第3章 人手不足でなければ経済は効率化しない 第4章 財政赤字と経済成長
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Posted by ブクログ
原田先生からご恵送賜りました。一番、刺さったのはやはり日本が1980年代に日本は最先端に行ってしまったからもはや追いつき型の経済成長はできないと皆が思ってしまったことが躓きのもとであったという指摘(p.48)、実際にはアメリカの8割(一人当たり購買力平価GDP)しかいっていなかったのに……。
資本ストックはその伸びだけではなく、新しい資本には新しい技術が体化されていてそれが生産性を高めるというソローを引用しながらの主張も絶妙(第1章第6節)。
第3章「人手不足でなければ経済は効率化しない」は本書の肝(「高圧経済」論)であるが、池田勇人の所得倍増もアベノミクスも松方デフレ後の松方財政もすべて「高圧経済」政策だったという。わかりやすくて腑に落ちる説明であった。
もちろん第4章「財政赤字と経済成長」も大事。借金を減らしてドイツに敗れたフランスの例とか相変わらず原田先生は例示の仕方など上手いなぁ。
Posted by ブクログ
従業員が減ることは悪いことではない。
分配を変えても給料は増えない。成長が必要。
ひとり当たりのGDPが増えないことが問題。本来は人口増加率が少ない方がひとり当たりの成長率は高いはず。
構造改革=あらゆる分野で生産性上昇の邪魔をしている。
資本ストックが足りない=投資不足。
無駄な資本投資は、所得を生み出さないから一時的にしかGDPは伸びない=中国の債務の罠、バブル時代の無駄なビル、無駄な公共投資。
普通は、30%程度の伸びがあるはず。
資本蓄積だけでは成長率は低下するが、新しい技術を伴った投資によって生産性が高まる。
行政のラッダイト運動、護送船団方式を打破すること。
年金制度の収入の壁の議論は、反対派からは給付があるのだから壁と呼ぶことはおかしいという議論がある。200万円程度まで上げるべきではないか。主婦の既得権益を守ることになるが、そのほうが労働参加が期待できる。
だが、貧困問題には不公平。
日本の貧困問題はシングルマザーの問題。とすると賃金に補助金をつけて最低賃金を上げたらどうか。
ゾンビ企業は成長を止めているか。操業停止点以上であれば操業を続けるべき、というのが経済学の理論。それよりも、借金をしなさすぎで投資がないことが問題。借金が嫌いだから成長できない。
中小企業へのゼロゼロ融資と、ゾンビ企業の問題点は矛盾している。
日本には貪欲な仕事が多すぎる。男女ともにそれを求めたがる。国会議員の質問通告に答弁書を作る仕事など。
強すぎる人事部。海外ではチーム長が人事権を持っている。
高圧経済(需要超過気味に運営すること)にするべきではないか。(ルーカス批判では、意味がないといわれているが)。需要超過で人手不足であれば、省力化投資、規制緩和も容易になる。
製造業は高い賃金を払える仕事。
事業承継を優遇しなくても、儲かる企業は承継されるはず。
一回で賃金を上げると雇用は減少するが、少しずつ上げれば雇用はむしろ拡大する。
池田内閣の所得倍増政策は高圧経済だった。
金融緩和は財政規律を緩める、は奇妙な理論。名目GDPが上がって税収が上がれば財政再建が可能。
GDP成長率に比べて、税収増加率が高い。名目GDPが伸びないから。
第一次世界大戦後のフランスは、国の借金減らしに熱心で軍備を怠った。その結果第二次世界大戦のときは緒戦は負け続けた。
現代の財政赤字の主原因は社会保障費の増加。
雇用を守る必要が無い世界=人手不足経済