あらすじ
●なぜ、大学入学共通テストで情報Ⅰが課されるのか。 ●なぜ、小学生から統計を学ぶようになったのか。 ●なぜ、情報ⅠがITパスポートの基礎となったのか。 2022年4月から高校の必修科目となり、2025年1月実施の大学入学共通テストからほぼ全ての国公立大学で必須科目となる「情報Ⅰ」。今では当たり前となったインターネットの社会的利用から、関連法、アルゴリズムの考え方、プログラムの基礎など多分野にわたる「情報Ⅰ」の内容を社会人向けに解説。また、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「Society 5.0」など、よく耳にするが今ひとつ腑に落ちにくい用語の本質もつかめる。「自分でプログラムを組む」のではなく「プログラマーに何を伝えれば仕事がはかどるか」がわかる、社会人注目の1冊!
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
社会人必須の統計&プログラミング知識。
なぜSEでもない人まで統計知識やプログラミング知識を身につける必要があるのか? この本にその答えが明確に書いてある。まずプログラミング知識については、身の回りにコンピュータがあふれていて、その中で仕事をするならば、コンピュータがどのように動くかを知っていないといけないから。そして、コンピュータを適切に活用するのが、これからの仕事だからだ。仕事では意思決定が求められる。最大限に利益を生み出すのは、どのような条件を考えたらいいのか。こちらに関わってくるのが統計知識である。
数学的な式は理解しきれなかったけど、統計に関してざっくりとイメージはできた。プログラミングの構文もわからないなりに、なんとなく頭に入った気がする。ITパスポート挑戦しようかなぁ。
Posted by ブクログ
「情報Ⅰ」の衝撃と地頭力の再発見
中山心太氏の著書「高校生だけじゃもったいない 仕事に役立つ新・必修科目『情報Ⅰ』」を読み、まず突きつけられたのは、共通テストの試作問題が想像以上に難解であるという事実でした。私はこれまでITストラテジスト、ITサービスマネージャ、プロジェクトマネージャ、ネットワークスペシャリストといった上位資格をいくつも取得してきましたが、それでもこの「高校生向け」の問題に手ごわさを感じました。これは専門知識の不足というより、短時間で複数の情報を読み解き、手順を追って判断する「試験の型」への適応が問われているからです。知識の暗記に頼るのではなく、その場で情報を整理・推論・加工する「地頭力」こそがこの科目の本質であり、現代のビジネス現場で求められる「要件定義や仕様書を正確に処理する能力」そのものであると痛感しました。
コンサルタントとしての視座とスコトーマの除去
本書、特に第3章「情報Ⅰをより深く理解する」には、著者である中山氏のコンサルタントとしてのエッセンスが凝縮されています。中山氏は単に最新技術を解説するのではなく、半導体の進化やムーアの法則といった「物理的・工学的・制度的な制約」から逆算して、現在の教育やDXの立ち位置を語ります。多くの人が「未来は何でもできる」という幻想を抱き、認知のゆがみによるスコトーマ(心理的盲点)を生んでいる中で、中山氏は「何ができないか」という制約を提示し、読者の認知を更新していきます。情報をどう捉えるかという「認知の枠組み」そのものを再設計しようとする著者のアプローチは、知識伝達を超えた「知のOS」のアップデートと言えます。
情報は「対象」ではなく「意味になる仕組み」である
本書の中で特に印象的だったのが、文字コードの説明の隣に配置された気象衛星ひまわりの観測バンドの解説です。文字コードは「同じ文字でも符号化によって扱いが変わる」ことを示し、観測バンドは「同じ地球でもどの波長で見るかによって得られる情報が変わる」ことを示しています。ここから得られる気づきは、情報は対象そのものの中に固定されているのではなく、どう切り出し、どう表現し、どう解釈されるかという「枠組み」との関係で初めて意味として立ち上がるということです。人間の認知もまた単なる受信装置ではなく、選択と解釈を行うフィルタであり、この認知と技術の接点を理解することこそが、情報の真の学びであると感じました。
重みづけから見える情報の核心
著者がTCP/IPやインターネットの仕組みをあえてさらっと流し、代わりに確率・統計や数値解析、データ活用に多くの紙幅を割いている点に、科目全体の重みづけに対する深い洞察が見て取れます。現代において通信プロトコルは空気のような前提であり、それ自体を詳述するよりも、不確実な世界をどう数理で扱い、近似誤差やモデルの限界を見極めるかという「不確実性への対処」こそが情報の核心です。この配分感覚は、単にITに詳しいだけの人には持ち得ないものであり、不確実なビジネス環境を生き抜くための「生存戦略」としての情報リテラシーを提示していると評価できます。
デファクトスタンダードと社会実装の哲学
コンピュータの世界は、理論の美しさよりも「作って使い、広まったもの」が事実上の標準になるというデファクトスタンダードの論理で動いています。情報Ⅰが扱うネットワークの基盤やデータ形式も、こうした「実装と普及」の歴史の産物です。中山氏の解説は、情報教育を単なるスキルの習得ではなく、情報が社会にどう定着し、制度や物理的な制約の中でどう運用されてきたかという「社会実装のプロセス」として捉えています。仙台が八木・宇田アンテナや光ファイバの発祥地であるといった歴史的背景や地政学的な視点も含め、情報を多層的に理解することは、私たちが複雑な社会OSをどうリファクタリングしていくべきかを考える大きなヒントとなりました。