あらすじ
北アルプスの山小屋の中でも、黒部川の岸辺という特殊な環境にある源流の小屋、薬師沢小屋。
働いて当時12年目だったやまとさんのリアルな山小屋ライフを、小屋開けから小屋閉めまでの時間軸に沿って、楽しい文章とイラストで紹介。
文庫化にあたって、支配人昇格後を綴った書き下ろしの原稿と新規イラストを収録。
■内容
・目次
黒部源流概念図/薬師沢小屋見取り図/はじめに
・第一章 黒部源流のこと
黒部源流と約沢小屋/山小屋創世記
・第二章 薬師沢小屋開け
入山/水事情/電気と電波/クマの被害/従業員十人十色/国立公園と山小屋/物輸ヘリ一回目/ネズミとの攻防/登山道整備と大東新道/増水と鉄砲水/布団干しと布団事情/傾く小屋
・第三章 ハイシーズン到来
ハイシーズンと厨房事情/物輸ヘリ二回目/バイオトイレと五右衛門風呂/遭難事故と山岳警備隊/常連さんと居候/釣りとイワナと私
・第四章 秋の源流と小屋締め
イワナの遡上/上ノ廊下と赤木沢/同居人ヤマネさん/物輸ヘリ三回目/魔のシルバーウィーク/ご近所さん雲ノ平/秋の実りとキノコ中毒事件/薬師沢小屋閉め
・第五章 支配人の日々
さよなら小屋番/一年目の苦難/ヘリポートづくり/外作業/新人を抱えて/遭難救助要請/秋の休暇/薬師沢小屋物語
・おわりに
・文庫版あとがき
■著者について
やまとけいこ
1974年生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。
高校生のときに初めて北アルプスを登り、山に魅了される。
イラストレーター兼アルプス薬師沢小屋従業員。東京都山岳連盟・東京YCC所属。渓流釣りや沢登り、山スキー、クライミングなど幅広くアウトドアに親しむ。
2020年に、長年通い続けた憧れの富山に移住。
立山連峰を眺めながら、新しい生活を始めたところ。
イラストレーターとして、山と溪谷社、Foxfire、PHP研究所、JTBパブリッシングなどで作品を発表。
美術造形の仕事では、国立科学博物館、福井県立恐竜博物館、東京ディズニーランド、藤子・F・不二雄ミュージアム、ほか多数で制作物を展示。
黒部源流の自然と薬師沢小屋が、世界で一番好き。
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Posted by ブクログ
やまとけいこ『黒部源流山小屋暮らし』ヤマケイ文庫。
山と旅のイラストレーターである著者がシーズン中は北アルプスの山小屋で働き、シーズンオフには海外旅行を楽しむという生活を選択した。本書はそんな著者による山小屋での暮らしを紹介するイラストエッセイ集である。
文庫化にあたり、支配人昇格後を綴った書下ろした原稿と新規イラストが収録されている。
著者の『やまとけいこ』という名前は山と渓谷から取った筆名なのだろうか。漢字では『大和景子』と書くらしいので本名の可能性も高い。
北アルプスの黒部川中岸辺に佇む薬師沢小屋で働き始めて12年目となる著者のやまとけいこさんが綺麗なイラストと小漫画とエッセイ、写真を交えながら、山小屋での暮らしを臨場感を持って伝えてくれる。
山小屋というのはそういうものなのかと初めて知ることも多く、なかなか面白かった。
普通の会社員を長年務めている自分からすれば、自然に囲まれながらの非日常的な山小屋暮らしは羨ましく見える。しかし、山小屋ならではの様々な苦労があるようだ。勿論、楽しさの方が多いからこそ、山小屋暮らしを続けられるのかなとも思う。
山や海でのキャンプ経験は何度もあるが、日常生活とは異なる自然の中での暮らしは、確かに大変だなと思う時がある。テントを建てて、火を熾して食事を作り、後片付けをしてと、気が付けばキャンプは常に仕事ばかりをしているような気分になる。しかし、それはキャンプ初心者だからこそで、慣れればそれなりに楽しめるようになるのも確かだ。
定価1,100円
★★★★★
Posted by ブクログ
山小屋の暮らしぶりはもちろん、太郎平開発、黒部源流付近の遊び場も話も楽しめた。なにより、やまとさんの素朴で素直な山に対する目線が、心地よい。イラストの挿し絵も素敵。
Posted by ブクログ
黒部川の源流にある山小屋・薬師沢小屋での暮らしをイラストとともに紹介したエッセイ。スタッフとして働き、ここ最近は支配人となった筆者、やまとけいこさん。ペンネームだよね?黒部川の清流が目に浮かぶような気持ちの良い作品です。
Posted by ブクログ
わりかし大きな山を縦走する際に色々お世話になるのが山小屋、そんな山小屋ならではの仕事や生活、色々な出来事が見て取れるように伝わってくる良書。
著者のやまとけいこさん、本当に山が好きなんだろうなあ、本書を読んでてその様にに感じました。
随所に描かれた素敵なイラストもすごく良い感じで、心温まりました!
Posted by ブクログ
薬師沢小屋 薬師岳 黒部ダム上流 黒部川と薬師沢が合流 水は豊富
谷底 電波が来ない ネットなし(太郎平小屋のみ可)
業務用無線で太郎平小屋4つのグループ山小屋で連絡
国立公園
その中の民間経営の山小屋 環境省の許可を得て地代は林野庁に
登山道の維持管理 公共的機能の提供
物輸ヘリ年3回 二もっこ1.6トンを四便
アカネズミ ネズミ捕りで対応
布団のたたみ方で使用前後を区別
7月の海の日からハイシーズン 9月のシルバーウイークまで
~小屋じまい 10月の体育の日の連休で終了
食堂 40人を3回戦
食料が不足するとカレーライスで対応 冷凍で作り置き
起床4時 5時から客朝食 8時 掃除、10時過ぎ夕食仕込み
13時から15時休憩 夕食準備 18時から客夕食 19時夕食 22時就寝
布団 70組 二人でひとつ
野菜 結露で痛むので新聞紙に包みゆったり段ボールに詰め直す 天日干しする
保存できないので足りなくなると缶詰
トイレ バイオトイレ おがくず/ヒーター/拡散式
風呂 従業員用の五右衛門風呂のみ 週2回 太陽熱温水器で水を暖めてから薪で
ハイシーズンは従業員5人 お湯が少ないので湯船につかるのは最後の人のみ
イワナ釣り 黒部川 秋の小屋閉めの後に産卵のため 川を上っていく
ヤマネ 天然記念物 襲われると尻尾を自分で外す
Posted by ブクログ
黒部源流の地にある山小屋はただの宿泊施設ではない。そこは山の静寂と厳しさが織り成す自然との共生の場だ。山小屋を営む人々は四季折々の厳しい環境の中で訪れる登山者を迎え入れ、温かなもてなしと安全を提供している。山の天気が急変すれば、避難所としての役割も果たす。都市の喧騒を離れここで目にする景色や人々との出会いは自然の中での人間の小ささと互いに支え合う大切さを教えてくれる。ここへは来年行こう!