【感想・ネタバレ】フェイクを見抜く 「危険」情報の読み解き方のレビュー

あらすじ

■科学とリスクにまつわるフェイクと闘い続けてきた著者によるファクトチェックの実践講義!
偽情報、誤情報、デマ、不正確な情報、偏った情報……フェイクニュースは複雑化し、見破るのがどんどん難しくなっている。
日本でも少しずつファクトチェックの重要性が認識されつつあるが、科学を装った誤情報の真偽の判定は非常に困難を極める。
世の中に氾濫するフェイクを見抜くためには、どのようなものの見方を身につければよいのだろうか。

[目次]
第1章 フェイクニュースを作り出す手法
第2章 食のリスクをめぐるフェイクニュース-無農薬、無添加、オーガニック
第3章 一つの論文が世界に与えた衝撃-遺伝子組み換え作物
第4章 フェイクニュース・ビジネスで大儲け-除草剤グリホサート
第5章 メディアが好む危ない情報にどう対処するか-ネオニコチノイド系殺虫剤
第6章 記者のバイアスがニュースのバイアスを作る-BSE、中国産食品、新型コロナ、子宮頸がんワクチン
第7章 進むメディアの分断、記者はどこまで自由か-ゲノム編集食品、原発処理水
終 章 フェイクを見抜くために


【著者略歴】
唐木英明(からき・ひであき)
農学博士、獣医師。1964年東京大学農学部獣医学科卒業。同大助手、助教授、テキサス大学ダラス医学研究所研究員を経て東京大学教授、アイ
ソトープ総合センター長を併任、2003年名誉教授。倉敷芸術科学大学学長、日本学術会議副会長、公財)食の安全・安心財団理事長などを歴任。日本農学賞、瑞宝中綬章などを受賞。専門は薬理学、毒性学、食品安全。

小島正美(こじま・まさみ)
1951年愛知県犬山市生まれ。愛知県立大学卒業後、毎日新聞社入社。松本支局を経て、東京本社生活報道部で食・健康・医療・環境問題を担当。2018年退職。東京理科大学・元非常勤講師。「食生活ジャーナリストの会」前代表。現在「食品安全情報ネットワーク」共同代表。著書として『海と魚たちの警告』(北斗出版)『メディア・バイアスの正体を明かす』(エネルギーフォーラム)など多数。


この電子書籍は株式会社ウェッジが刊行した『フェイクを見抜く 「危険」情報の読み解き方』(2024年1月18日 第1刷)に基づいて制作されました。
※この電子書籍の全部または一部を無断で複製、転載、改竄、公衆送信すること、および有償無償にかかわらず、本データを第三者に譲渡することを禁じます。

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Posted by ブクログ

この本で秀逸だなと思ったのは、「両論併記で真偽をあいまいにする」というフェイクの論法に触れつつ、敢えて、陰謀論に対して両論をぶつという点。これによって読者の判断が大きく揺らぐことになるが、敢えて問題提起したという感じでもある。ちなみに、両論併記の論法とは、<多くの論文の蓄積により作られた学会の定説と、これとは全く違う少数の考え方を並列して紹介する方法>。両者の科学的な重みは全く違うのだが、記事を読む側から見ると、二つの考え方が同等であるように見える。一見、公平に見える取り扱いにより責任逃れをしながら、実は科学的に価値がない説を重要であるように見せかけるフェイクの事。その上で、その見抜き方をレクチャーする。

また、フェイクの論法の一つに、自分に都合の良い事実、衆目を集めそうな内容だけを編集して述べるという方法がある。例えば、福島第一原発のタンク内の処理水に含まれるトリチウムに対して、「生物に濃縮しやすいから危ない」と主張する学者。実際にそういう主張を載せている新聞の社説も。しかし、海洋放出された低濃度のトリチウムが生物に濃縮するという科学的な事実はない。社会心理学の本を読むと、「いくら科学的な事実を突きつけても、強い先入観を持つ人の考えを変えることはできない」という解説がよく出てくる。確かにその通りである。強固な考えをもった人に対して、「科学的にはこうです」と言っても、説得することは不可能だろう。

この本では、前述の原発の処理水の他にも、(お馴染み)ワクチンの話、甘味料の話、遺伝子組み換え食品、モンサントの話などが続く。賛否ある、という状態にまで大衆の目を胡麻化して、一定の境界領域を印象論と防衛本能でもって誘導していく。

最後に纏められている、信頼度(そういう題名ではなかったかも)指標があるが、論説に関し多くの査読が入るという意味でも説得力があり、非常に良くわかる。SNSで定説に意見するなら、査読前でも構わないから、試験結果とともに論文を見せてくれ、という事だ。

SNSなどに発表した個人の意見 0点
論文1報(試験管内試験・動物実験) 2点
論文1報 (ヒト臨床試験) 4点
複数の論文 6点
多数の論文分析(システマティックレビュー)8点
学界の定説 10点

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2024年11月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

農学博士と元毎日新聞記者で、日々ファクトチェックのために戦われているお二人の共著。
このあたりのものの名著として、「食のリスク学(中西準子)」があるが、より戦っているからか、筆致が攻撃的。また、過去と比較すると、フェイクニュース関連がビジネスというか、むしろ構造的に産業化されていることがわかる。
た、元マスコミ人としての立場から、なぜ新聞社のニュースは一定の傾向が出てしまうのかについても、わかりやすく説明されている。
ちょっと熱い良書。

ただ結局、個人としてできるのは、「世界はなぜ地獄になるのか(橘玲)」の諦念にいたってしまう。大きな流れを止めるすべが思いつかず、悲しくなる。
とはいえ、お二人の活動には全面的に賛意を表したい。

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2024年04月15日

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