あらすじ
「ユーカラを書き記すことは、私が生まれてきた使命なのだ」
絶滅の危機に瀕した口承文芸を詩情あふれる日本語に訳し、今も読み継がれる名著『アイヌ神謡集』。著者は19歳の女性だった。
民族の誇り。差別との戦い。ユーカラに賭ける情熱。短くも鮮烈な知里幸恵の生を描く、著者の新たな代表作!
「いつまでも寝込んでいるわけにもいきません。私には時間がないんです」
分厚く腫れた喉から流れ出した自分の言葉に、幸恵ははっとした。
私には時間がない。
そうなのか?
思わず胸に掌を当てた。満身創痍の身体の中心で、心臓は未来へ駆け出す足音のように勢いよくリズムを刻んでいた。
(本文より)
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Posted by ブクログ
アイヌの口承叙事詩ユーカラの研究をする金田一の依頼を受け、使命感に燃えて北海道から上京する幸恵の物語
自分だからこそできること、すべきこと、したいこと
そしてできないこと
差別や抑圧に対する怒りと悲しみと諦めが滲む中、それでも使命を果たそうとする姿勢に胸を打たれた