【感想・ネタバレ】排除の現象学のレビュー

あらすじ

〈かれら〉を攻撃し,かれらと異なる〈われら〉であることに安寧を求める社会に,未来はあるのか.いじめ,ホームレス殺害,障害者施設設置反対運動,宗教集団への批判,超常現象への傾斜――80年代に世間を賑わせた数々の事件から,異人が見出され生贄とされる,共同体の暴力を読み解く.時代を超えて切実に響く傑作評論.

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Posted by ブクログ

 最初1986年に単行本として刊行され、その後文章が追加されたもの。
 赤坂憲雄さんの2冊目の著書だが、人類学等の知識を縦横に活用して現代社会に様々な形で現出する「排除の構造」を解明してみせた、実に興味深く面白い本だった。
 第1章は1980年代の当時顕在化した学校での「いじめ」が分析される。現代日本の子どもたちの「いじめ」が、昔のそれやアメリカ辺りのそれと比較して陰湿さや構造的特徴において著しいものがあると指摘。その特殊性の原因は現代日本の学校制度の特色そのものにあると著者は主張する。
 養護学校、特別支援学級などに異質な子どもを隔離した末に、通常の学級は恐ろしく等質的な集団として閉鎖されたため、その成員である子どもたちは小さな差異を必死で探し、異質者のレッテルを貼った子を、同質者の集団全員で排撃するのであるという。
 第2章は「浮浪者狩り」で浮浪者たちを殺してしまう子どもたち、第3章は「イエスの方舟」という特異な宗教集団を巡る社会構造が分析され、どれも同様に興味深い。
 第4章では、障害者施設の建設に全力で反対し、阻止運動を展開するニュータウンの住民らが語られる。
 私の住む苫小牧市でもむかし(高等?)養護学校を建設する話が持ち上がったとき、住民らが「治安が悪くなる」などと反対してお流れになってしまったという噂を聞いたことがある。
 異物を排除しよう、排除しなければ自分らの住む世界が脅かされる、などと必死で「集団として」抵抗するこれらの現象は、確かに人類学的な視野から改めて眺めてみると、単なる道義的憤懣をいだくに留まらず、人間社会が持つ構造(特に病んだ構造)への興味をかき立てられる。
 じゅうぶんな力量を持った著者による、非常に優れた書物だった。この著者はその後「東北学」の方に方向転換したようだが、ここ最近の事件についても改めて分析した本を書いて貰いたいと思う。

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2024年08月10日

Posted by ブクログ

2023/04/18
再読。
『童夢』を扱った最終章が読みたくて初めから読み直してみました。
排除という観点からだけでなく境界線や異人を意識しながら。
社会学であり考古学であり文化人類学であるような視点であり、異なる者に対する見方の変遷を眺めながら「排除」という現象を理解して行く。胸が苦しくなるような迫り来る著者の熱意に引き込まれながら。
最終章を読み、4つあるあとがきを読み…そして不思議と安らかな気分になる。
圧倒的な迫力と中身の力強さに再び引き込まれる個人的には名作と思う一冊です。

2023/03/17
いじめや暴力などの社会問題に対する興味のある方は必読。
最初に出版されたのは1986年ですが全く古さを感じさせることない内容で、随所に今も生きる考え方が満載。
貴方も現代の諸問題を「排除」という観点から新たに捉え直すことが出来るはず。

胸の苦しくなるような本当に起きた事件の記述がかなり多いので軽い気持ちで読むのはやめた方が良さそう。
また出版社や編集者の都合なのか文の区切りが読みにくい箇所が目立ちますが慣れれば大丈夫。直ぐに著者の熱のこもった話に引き込まれてしまいます。

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2023年04月18日

Posted by ブクログ

かなり前の本だけど、今に通じるというか、それが昨今顕著になっているというか、最近の世相について考える。

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2023年11月23日

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