あらすじ
沖縄戦で、米軍から陣地奪還を果たした大隊があった。奮戦むなしく兵士の9割は戦死。終戦直後から24歳の指揮官・伊東孝一は部下の遺族に充てて「詫び状」を送り続ける。時は流れ、伊東から「遺族からの返信」の束を託されたジャーナリスト夫婦が、“送り主”へ手紙を返還するなかで目撃したのは――。不朽の発掘実話。
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Posted by ブクログ
太平洋戦争時に、24歳という若さで1000人の大隊を率いて戦った指揮官が辛くも生き延びて、亡くなった隊員の家族に詫び状を書いた。それに対する亡くなった隊員の家族からの手紙の内容と、それを家族の子孫に渡していく時の様子が描かれている。
この本を読んで一番印象的だったのは、戦争というのは昔昔の違う世界でのお話ではない、ということ。
今もまさに世界では戦争が進み、人がたくさん亡くなっていっているが、どこか自分とは違う世界の話と捉えていた。
一番リアルだなと感じたのは、遺族からの手紙の中に、「証明書を出してください」「役所に通知するよう言ってください」「手続きはどうしたらいいか」といった、市役所での手続き系の話が盛り込まれていたこと。
当時もそういう申請ってわかりづらくて、でもやらないといけないもの(申請しないとお金がもらえない)、といった当時の人々の様子が窺い知れて、親近感がわいたというか、解像度がぐっと上がった気がする。現代の日本人だって、みんな何かあったら市役所や区役所に申請にいくもの。
本の構成として、一人ずつ隊員をピックアップし、戦争の様子・隊員がどう亡くなっていったのかが描かれる→その隊員の家族からの手紙→手紙を現代の子孫に渡した時の様子、という流れになっている。
その中で、「〇〇さんは5人兄弟の長男で、下の兄弟たちをかわいがっていた」「〇〇さんの妻の〇〇さんは農家として働きながら苦しい生活の中で戦後二人の子供を育て上げた」といった、戦前の隊員の人柄や、戦後残された家族がどんな人生を歩んだか、といった一人一人のエピソードが具体的に書かれている。
亡くなった人は何万人と括った表現をされがちだが、一人一人に個性があり人生があったということ。
残された人たちにもそれぞれ人生があって、どんなに貧しくても辛くてもふんばって生き延びてくれて、その結果今がに繋がっているということ。
そんなことが改めて心から理解できるような気がした。
あと、沖縄戦で戦っていたのは沖縄の人だと勝手に思っていたが、北海道や東北の隊員が送られていたとのこと。全然知らない土地で亡くなって、骨が帰っていないというのは寂しいことだろう。
個人的に沖縄は大好きで毎年でも遊びに行きたいと思っているくらいだが、そんな沖縄の見方が変わる一冊になったなぁと思う。読んでよかった。