あらすじ
裕福な家庭で育ち、初恋の相手・泰治(たいじ)と婚約した品子(しなこ)は幸せの絶頂にあった。だが結婚後も夫の心は気高く美しい大使令嬢の真津子(まつこ)に向いていた。妻にも祝福される恋をしたい。そんな泰治の理不尽な求めにも素直に従い、品子はひたむきに愛を貫く――。昭和初期の華やかな上流社会を舞台に、男性に翻弄されつつも、逞(たくま)しく成長する一人の女性の生き様を描いた長編小説。
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Posted by ブクログ
美輪さんがよくおっしゃっている、戦争前の軍国主義の前の素敵な日本の美意識だったり文化だったりが身近にたくさんある日本の様子が目に浮かんできた。
といっても、ごくごく一部の上流階級の世界の話だけれど、やっぱり素敵な日々がイメージできてうっとりする。
ラストがしっくりときた。
Posted by ブクログ
昭和初期の上流階級を描いた作品。
戦争を挟んで、日本人の意識が大きく変わる大きな流れの中で、少女が人を愛するとは何かを、自分なりの答えを見出す物語です。
今と違い、お妾が公認されている時代だと思うけど、この作品ではそういった意識は感じられない。
林真理子作品として読んでいたので、もう少したくましい女性になることを期待していましたが、予想外の最後でした。
しかし女性の細かい感情を描くのはさすがです。
Posted by ブクログ
好きな男性の気持ちが、結婚前も結婚後も他の女性にあるという苦しい心情が痛いほど伝わってきたけれど、それでも諦めない品子の執念がいまひとつ理解できなかった。
「僕の幸せは君の幸せだろう。僕が幸せになることを君はとても喜んでくれるだろう」
信じられないほどに身勝手な泰治の考え・行動を理解することはできないし、そんな泰治を待つと決めて、最後には他の女との間にできた子どもを育てる決意さえする品子の執念はやはり理解できるものではない。
幼いころから何でも手に入れてきたお嬢さまの子どもっぽい欲(所有欲)のようにも思えるし、もはや「愛」ではないような気がする。
解説の酒井順子さんが言うように、品子は泰治の心を一度も所有したことがないがゆえに、「所有したい」という極めて強い欲求が、彼女の心の中では「愛」という美しく心地よい言葉とすり替わってしまっているのでは。