あらすじ
「死んだ方がましのくせになぜ生きているのか不思議な底辺が、将来そうなるであろう若いだけの同じ底辺によって苦しめられている」と同じ団地の住民を見下す久野。自身の惨めさを糊塗するために、現状から抜け出せない人々を定点観測するだけに飽き足らず、土井という老人を弄ぶ手段を考え、実行することに生きがいを見出していた。ところがある日土井から相談を持ちかけられて……。表題作を含め、自らの毒に冒されたい人に向け描かれた短編集。
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Posted by ブクログ
装丁の大勝利。
見下すことで正気を保ってた明らかに「下」の相手が自分に近くて壊れていく遺書のくだりがすごい。久野を地獄に落としたのが土井の年齢でも絶望の対象でもなく、漢字も書けない自分だったのがいい。タイトルの『地ごく』の理由が回収されて、書けなくて塗りつぶされた地■の気味悪さが際立った。死んでしまった自尊心の最後の砦にキラキラした蠅を集らせたデザイナーがあまりに天才。
露悪的なところはあるけれど、くどくもなく読みやすくて文章もよかった。天獄は地ごくほどのインパクトなし。デビュー作も読んでみたいと思った。