あらすじ
地元の医者は逃げ、インフラは停まり、遺体が道に転がる中、僕はアフリカに派遣された――引継ぎゼロ、報酬1ドルもなんのその!ウイルスでパニックになった世界を救う感染症専門家のドキドキ・アウトブレイク奮闘記。
はじめに――ロックマンになれなくて
第1章 アフリカでエボラと闘う
第2章 〝中2病〟の医学生・研修医
第3章 全米デビュー
第4章 エボラとコロナの間
第5章 新型コロナ対策の中のひと
おわりに――丸い世界を転がるように
医療資源の乏しいフィリピン、防護服や注射針を使いまわすアフリカ、コロナ対策で不夜城と化した霞が関を渡り歩いた感染症専門家の日常とは? 笑顔の裏に何かを隠し、ときには夜のBARまで味方にしつつ、型にはまらぬ方法でウイルスと闘う医師による、ヤバくて笑える仁義なき闘いの記録。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
こんなに論文書いて不思議な経歴で、国際的な研究成果があるのにも関わらず、研究者として生きていくのは難しいのだなぁ
正論は“正しい”が多くの場合で正解にならない
特に他の手段がない時など批判になる
ほぼ無給でこの仕事量をこなしていることに驚き。。
僕には出来ない。
半人前の感染症研究者として学ぶことは多かった。
特に、感染症数理モデルの予測の目的の内容は、修論発表前とかにもう一度読み返したい
Posted by ブクログ
面白かった。
ミュージシャンを経てウィルス学の研究をしていた古瀬はある日、WHOの職員としてアフリカで「エボラ感染予防のコンサル」に従事する。
「彼がリーダーだ」上司は告げる。担当者の一人と聞いていた古瀬は驚くがやるしかない。文化、政治、目的が違う医者、政治家、軍人、文化人類学者、祈祷師、彼らを束ねてエボラと戦うことになる話。
「昨日、何食べた?」から始めるという章が興味深い。感染症コンサルとして有力者との協力が必要だ。しかし、いきなり本題では警戒されてしまう。そのためには、まずリラックスしてもらい、ビールをおごりsimカードを奢る。研究をしたらデータをくれた同僚の名前で発表し成果を与える。
ここまでして、はじめて「協力」が得られる。彼の文面はこう締めくくられる「何か困ったことがあったらご相談ください」
一見するとゴマすりに見えるがこれらはすべて真摯さと相手への思いやりだろう。そして、その先に「あいつはいいやつだ」という信頼がもらえるのだろう。
後半のコロナの話なども面白かった。気になる人はぜひ読んでほしい。
何かの機会に読み返すこともあると思う。そんな本。
Posted by ブクログ
エボラウィルス病のパンデミックの際にWHOとしてアフリカに派遣された著者。字面だけだと医者として日々運ばれてくる患者に接し奮闘する姿を思い描くが、その仕事の殆どは現地スタッフや部族の上役との交渉であったというのがリアルで良かった。下支えの仕事をしていた経験がある身としては救われる気分になった。
そしてその後におこるコロナのパンデミック。クラスター対策チームが立ち上がる前に「ちょっと来て」と招集されてから5ヶ月間霞ヶ関から出れなかったという当時の混乱の様子が赤裸々に語られており、改めて医療関係者の方には尊敬と感謝しかないと思った。
Posted by ブクログ
1つ1つのエピソードには面白いものが多かったけれど、全体の流れが分かりにくかったかも。
アフリカでの話はもっと細かく知りたかったと思ったり。
驚いたことは、以下。
感染症の対策チームの中には、医療分野の人だけでなく、関係する様々な学問の人が入る。
アフリカでの感染症チームには、文化人類学や建築学。
アフリカの伝統文化を知らずに「正しい」感染症対策だけを提示しても受け入れられないので、現地の文化を知る必要がある。
日本のコロナ対策チームには、データ解析のプログラマーや地理情報システムの研究者。
感染当初は、感染者を記録した表のID番号を振りなおし(繰り上げたり)していた。それを、番号の変更をしないように周知することが大変だった。
以下メモ
(コロナ対策を経て)
・僕は感染症の専門家として、感染対策をしっかりすることで感染症によって命を落とす人をひとりでも少なくしたいと思っている。けれども、何らかの事情や強い価値観のもとに感染対策のできない人、しない人、あるいは逆に過度と思われるような対策をする人たちもいるだろう。そのような時に、相手を責めることなく互いの選択を尊重できる社会であることも、1つの対策ではないだろうか。
・大事なこととして、施策を決めたのはあくまで政治行政であって専門家ではない。にもかかわらず、政府に請われて助言をした研究者たちが多くの批判の矢面に立たされることになったのは対策班の有りようとして適切ではなく、つぎのパンデミックに向けて改善していかなければならない点だろう。
Posted by ブクログ
読みやすいしおもしろい
スラスラと読めるブログみたいな構成でパンデミックが起きた時のウイルス学者としてやってきた対応が書かれてあり勉強にもなる
コロナ禍での出来事にあーそんなのあったあったと頷きながら読んでいた
Posted by ブクログ
感染症専門家の日常と活動を描いたノンフィクション。
アフリカでのエボラとの闘い、アメリカでの研究活動、日本での新型コロナ対策について。
国際医療支援の現場やコロナ禍のクラスター対策班としてのご経験が綴られています。
異国にて医療物資も知識も足りていない状況下、文化的背景の異なる外国人が支援スタッフとしてやって来て、どんなふうに現地の人と信頼関係を築き共に感染症に立ち向かって行くのかー。
日本とは全く異なるスタートからの支援で、道のりは想像以上にハード。それは精神的にも肉体的にも。
信仰や慣習が感染拡大の一要因となっていたり、必要な物資を届けるためにはインフラ整備が必要だとか、字を読めない人からの聞き取りや感染対策をどう伝えていくかなど課題はたくさん。
自国とは異なるアプローチが必要で、現地入りした支援チームの一筋ならではいかない苦労が窺える。
感染症対策には感染症学、疫学、ウイルス学、公衆衛生学、文化人類学、宗教学…と、多角的な視点から専門家たちが意見交換をし、検討する必要があるということ。
「差別」による過酷な現実。
本書を読んで、そんな実情を知りました。
国内外に関わらず感染拡大収束に向けて尽力しながらも、手の及ばない部分には忸怩たる思いを個々に抱えていらっしゃったんだろうなと感じました。
国際医療支援の現場やコロナ禍の日本で、私たちの目の届かないところでどんなふうに専門家の方々が奮闘されていたかを知れて良かったです。
ただ、それぞれについてもっと深く掘り下げて知りたかったなぁとも思います。