【感想・ネタバレ】拒否戦略 中国覇権阻止への米国の防衛戦略のレビュー

あらすじ

■中国の著しい軍備増強により、もはや過去のものとなった北東アジアにおける米国の軍事的優位。もし、西太平洋を中心とするアジアで戦うことになったら、戦争に勝利するのは米国とその同盟国なのか、あるいは中国なのか。深刻な疑問が投げかけられている。
■力と野心を押し出す中国に対して米国は、日本はどう動くべきなのか。中国に対抗する反覇権連合とはどのようなものか。なぜ、どのような台湾防衛が必要なのか。日本は反覇権連合の戦略において、どのような位置を占めるのか。中国に勝利するための条件は何か。
■米国の国防戦略をこの一世代で最も大幅に改定したと評価される「2018年国家防衛戦略」の主導的立役者エルブリッジ・A・コルビーが、中国の覇権奪取の動きに対抗するための「拒否戦略」(strategy of denial)を明快な論理構成で描き出す。
■ここ数十年で最も情報に富み、米国の防衛戦略を詳細に再評価した本書は、厳密でありながら実践的なアプローチを説き、米国が中国との戦争に勝つためにどのような準備をすべきか、また、適切な戦略の構築が結局は戦争の回避、適切な平和につながることを説く。
■戦略の大家E・ルトワック、「100年マラソン」説で知られるM・ピルズベリー、国際政治学者J・ミアシャイマーらが絶賛する骨太の戦略書。

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Posted by ブクログ

エルブリッジ・コルビー博士の原著を防衛研究所の塚本氏等が訳出したもの。これは原文でなんと書いてあるのだろうという訳もたまにあるが、全体としてはうまく訳されていて、原著にあたるよりは大分楽に読めた。

コルビー氏は、トランプ第一次政権で国家防衛戦略をリードし、対中シフトを軍事面から支えた人物であり、何を隠そうつい先日、議会承認を経て前回よりもランクを上げて、政策担当国防次官としてペンタゴンに帰ってきた。

氏の筆致は冷酷なまでに論理的であり、リスクと便益の冷徹な計算に基づいている。大掴みの論旨は明快で、米国はインド太平洋の平和と安定に最も重大な国益を持っており、そこに覇権を敷こうとする中国に対し、自らの資源をほぼ全集中するとともに、日豪などとともに反覇権連合を作って侵略を拒否する(失敗させる体制を作る)ことにより対応する。その際、ロシア、北朝鮮、イランなどとの当時作戦については、欧州に対応させたり、韓国を強化したり基本的にローコストで仕上げ、米国は本土防衛・拡大抑止のほかはインド太平洋に全振りというもの。

具体的な議論は、台湾を中軸に据えて、同盟の信頼性の問題(コミットメントをして守れないと信用が下がるので要注意)、軍事作戦の要領などについてアメリカの視点から分析しており非常に明快で理解できる。

なお、日本については、反覇権連合の中核国であり、極めて重要だが、防衛投資が少なくもっと貢献してほしい、あまりアメリカ頼みだとリスクを負うアメリカ人がコミットメントから離脱したくなって抑止できなくなる可能性に言及。日韓への戦術核の共有の是非についての議論も面白い。

世の中がますますキナ臭くなる中で、必読の一冊。

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2025年05月01日

Posted by ブクログ


筆者であるエルブリッジ・コルビーはアメリカのトランプ政権のNational Defense Strategy作成メンバーの1人である。そんな彼が書いた本であり、英語版は多くの文献で引用されている。そのような本が英語版が出てから2年程で日本語版が出たのはありがたい限りである。
内容としては中国の地域覇権を阻止するために何ができるかである。アメリカのすべきこと、各地域ができること、また我が国日本に求められることなどが書かれる。また、想定される軍事行動に対してどう対処するのか、またそのために何ができるのか、するべきなのか、もしくはしてはならないのかが書かれている。
英語版が出されてから2年が経った今、日本語版が出たこのタイミングで読むのは原版が出た時よりも考えさせられる。2022年から本格化したロシア・ウクライナ戦争や2023年からのガザをめぐる戦争はこの本が「してはならないこと」という部分から考えさせられ、悩ましいものである。

日本人への提言、もしくは日本に関しての提言もある。そこから考えさせられることも大きいのではないだろうか?

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2024年01月19日

Posted by ブクログ

C国の覇権を阻止するための米国の戦略について、かなり理論的に詳細に検討していて面白い。

のだが。

これは現覇権国たる米国が、自国の安全自由繫栄を脅かさないために、覇権挑戦国を許さないという本で、ぶっちゃけ、「中国」を「米国」に差し替えても国によっては首肯できる。昨今の、某大統領貿易についての横暴ぶりを見るに、一皮むけばさほど変わんねえと思うところもある。

ただ、我が国としてはそれでも米国の方がかなりまし、という話であって、C国の覇権なぞ現実化なぞ目も当てられないのも事実。

なぜかは、C国が胸に手を当てて考えてもらいたいものだが。

米国は、自領土自体は相当程度安全という前提が薄ら透けているのが本音だろう。
「拒否戦略」というのは、覇権挑戦国を体力で凌駕するのでなく、侵略を「拒否」することで意志達成を阻害できるのだと読んだ。全面戦争も、競争も必要ない。

それこそ「自衛」であろう。当事国にとっては。

「戦力」と「自衛力」の違いをそこで分けることもできるなとちょっと考えた。

興味ある人はしっかり読み込める本だと思う。

そうして、敵と味方を間違える天才の米国については、もうちょっとちゃんとして欲しいもんだ。

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2025年08月20日

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