あらすじ
ひとは、「独り」から逃れられない。
著者史上最もグロテスクで怖い10の物語から成る、最高精度の短編小説集。
バイト先のコンビニに現れた女から、青年は「ある頼みごと」をされて――「ぴぴぴーズ」
男を溺れさせる、そんな自分の身体にすがって生きるしかない女は――「みみず」
刺繍作家の女は、二十数年ともに暮らした夫の黒い過去を知ってしまい――「刺繍の本棚」女たちは連れ立って、「ドクターF」と名乗る男との待ち合わせに向かうが――「錠剤F」
……ほか、あなたの孤独を掘り起こす短編10作を収録!
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
久々の井上荒野さん。全編全部不穏。「何でそうなる?」と思いつつその裏にあるものを想像しながら各短編を最後まで読むと、シンと周りから体からその内側まで冷えてくる感じがします。乾いた冷たさ。いや怖い。
人間って見た目じゃ何考えてるかわからないし、言ってることやってることがその人の全部を必ずしも現してはいないのだということを改めて突きつけられるような短編集でした。
真夏に読んだらもっと良かったね。心底涼しくなれそうで。
Posted by ブクログ
そうか
グロテスクな短編集だったのか
なんでこんな胸糞悪い感じのばっかりなんだろうと思って読んでたらそういうテーマだったのか
こういうの書こうと思うのってどういう心境なのかなぁ、わざわざ気分悪くなる感じのを書きたい人も読みたい人もいるってことだよね
Posted by ブクログ
これは何とも…好きとも嫌いとも言えない短編集だった。荒野さんの小説には必ず「冷たい男」が出てくると勝手に思っているが、この短編には「怖い人間」が沢山出てきた。
息子がいないから自分たちのところに養子に来ないかと誘い、どんどん勝手に話を進めていく夫婦や、コンビニであなたの子種が欲しいと言ってくる女など、どこか不気味で周囲にいてほしくないタイプの人間たちだ。
最も楽しめたのは「みみず」という短編。「みみず千匹」を持つ女性が、自分の中にみみずがいなければ良いのに、いや、みみずこそ自分だと葛藤するシーンが強烈。自分のアイデンティティがみみず千匹なのに、本当に愛されているんだったらみみずなんていなくても良いはずと信じた女性が、他の男性と性行為し、みみずの有無を確かめようとするのだ。
悲しいかな、この女性はもしかしたら凄い名器の持ち主かもしれないのに、自分ではその素晴らしさを味わえないんだよね。
いっそのこと名器を持っていない方が、自分に自信が持てたのだろうか。