あらすじ
子どもが本を読むことの大切さは誰でもが説くが,心底から納得できるような”読書への誘い”は案外少ない.著者が長年考えぬいた成果を,具体例を挙げながら明晰に語る本書は,子どもと本との幸せな出会いを望むひと,必読.
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Posted by ブクログ
子どもにとって本を読むことにはどんな意義があるか。
漠然と大事だとはわかっていてもその意義を掘り下げて考えてみたことがなかったので、新鮮な学びになった。かなり納得感があった。
幼児にとっての本は、本から何かの情報を得ることではなくて、親子のコミュニケーションを深めることが最大の意義だから、こどもの感情表現に反応してあげることを意識して読み聞かせをしてあげたいと思った。相互の感情表現に反応しながら関わる体験を積むことが脳とか人間性の発達の土台になると理解した。またそのような観点で、映像を与えておくことは情報が一方通行なので発達に繋がらないという見解もなるほどと思った。(Eテレとかディ〇ニー英語のような教材も効果が怪しいというか生身の関わりにはやっぱりかなわないよなと思う。)
小学生くらいの子どもにとっての本は、想像力を身につける意義があって、想像力とは情景だけでなく、人の気持ち、出来事、この後起こりうること、など、筋書とか論理のような目に見えないものも含めてイメージして理解する力とのこと。
この想像力を身につける観点で、想像の余地を奪うような内容の本、つまりことばではなく絵が主役になってしまっている本はよろしくなくて、同様に映像も良くない。絵や画像や映像からのインプットに慣れてしまうことは危機感を持つべき というのは、そうだよなと思った。
(たしかに、プペルみたいな精緻で情報量や刺激の多い絵の絵本と、プーさんの原作みたいな地味で単色の挿絵の本とでは、視覚以外のことも含めて想像の余地が全然違うなと思った。)
思春期くらいの読書の意義は、メタ認知能力を身につけること。ゲームの体験は視点が一人称だったり成否の責任がプレイヤーだったりするのに対し、物語を読むときは主人公に感情移入しつつも出来事を俯瞰する感覚があったり主人公の失敗が読み手の責任にならないなどの違いがある。また、登場人物の感情の変化を擬似体験して、読むことを一時的に止めて自分の感情と向き合う みたいなことを通して、自分の思考や状況を俯瞰して捉える能力が身につくとのこと。これもなるほどなと思った。
読書ならなんでもいいのではなく、これらの収穫が得られる本を選んで読まないとならない。貸出人気ランキングとか、読んだ冊数にフォーカスするアプローチとかでは、本当に血肉になる本には出会えない。大人が子どもの発達段階とか個性を踏まえて、読むべき本を読みたくなるように勧めることが肝要とのことで、たしかにそうだなと反省させられた。
ということは、親としてもいい本がどんな本かわかるレベルで読書体験を積んでいないとならないし、表面的な面白さに流されがちな子どもに対して本当にいい本に興味を持つよう工夫しながら粘り強く勧める根気強さが求められる。本を切り口とした子育ての真剣勝負を思い知らされる。楽しみながら頑張ってみようと思った。
それにしても、絵本にしても児童文学にしても、いい作品を生み出す作家さんて凄いんだなと思った。読み手の想像力を掻き立てる物語の書き方とか、ポップな挿絵に依存しない自制心とか、それでいて地味でもずっと見ていられる味わいのある絵力とか、そもそも絵にする場面を選ぶセンスとか、薄っぺらいおとぎ話にならないための心の機微の表現とかとか、いろんな工夫があることを知った。作家がそういうスキルを意図して駆使しているのかわからないけど、どっちであっても、子どもたちの成長を願う想いの強さが名作に繋がるんだろうなと思った。
Posted by ブクログ
・本を選ぶときに
「作者への信頼感が持てる」ことと
「距離を置いて外からながめながらも、登場人物と一体になれる」ということは、
児童文学作品の質を見分ける時に、大切なポイントとなる
・しばらく時間をあけてからまた読みたいと思いました
Posted by ブクログ
この本は大学教授である著者が、
小学校教諭や幼稚園教諭、保育士を目指す学生に本嫌いだったり本の読み方が分からないと言っている人が多い事、彼女たちが将来関わる子どもたちはどうなってしまうのだろうと危惧する気持ちから書かれたものだ。
自分自身、我が子に沢山本を読んでもらいたいと思っていながらその方向性が間違っていたことが色々あった。
▪️絵の綺麗すぎる絵本が増えてきて、
「絵本を読む」から「絵本を見る」ものになっていないか
▪️「字が読める」だけの子どもに、「本の読み方」が分からないまま自分で読ませようとしていないか
▪️読む本は多ければ多いほど良いと思っていないか、子どもに思わせていないか
▪️小学生時代に良い本に出会えていたり、良い読書体験ができていれば、中学生になり部活などで忙しくなっても読書をする機会が失われないのではないか
▪️良い本を紹介したり、本の選び方を伝授しているか
▪️「なんでもいいからたくさん」読めましょうというのは、けして子どもの自由の尊重ではなく、大人が本を選び、子どもに紹介し、読めるようになるまで手を貸すという手間を惜しんでいる
▪️子どもにとってのいい本は、読む力を育ててくれる本
▪️読書の価値は、読まれる内容だけでなく読むという精神活動にある
▪️読むという精神活動は、①書き言葉レベルの言葉を使う力、②想像力、③全体を見渡して論理的に考える力を育てる
▪️メタ認知能力(自分の頭の中で進行していることを一段上から観察し制御する力)を育てる上で読書が大きな助けになっている
本を読むのは割と好きだと思っている自分自身の本の読み方も、もう一度見直したい。
できれば子どもが幼児の時にこの本を読んでいれば良かった…
Posted by ブクログ
【読むきっかけ】
読書はした方が良いということをなんとなく感じていたが、なぜ必要なのかということについて自分の中で明確に答えを持っていなかったため。ヒントになればと思い、手に取った。
【本を読んで感じた自分の認識】
著者は大学教授。著者は、本を読まないことは普通のことと学生は思っており、それを嘆かわしいと思っていた。そういった学生が教育の場に就職したとしたら、その子供たちは読書をしないのではないかと危機感を覚えた。また、世間でも子供には読書をさせた方が良いと勧める一方で、なぜかということに答えられる人は少ないのではないかと思い、当本を作成。
以下要点
・昔は大人が今よりもっと身近にいて心豊かな大人の知恵や知識を物語等を通して密接なコミュニケーションのもと子供に教えられていたことから、子供はバランスのとれた教養を得ることができた。
・大人と密接なコミュニケーション取ることが子供には重要影響を与え、本でも同様な影響を与えられると思われる。
・テレビ等の映像による知識は情報過多で一方通行のやりとり。幼児時代にそればかり見ていると、生きるのに必要なシナプスの形成がバランスが悪くなり、どのような悪影響が出るか分からない。
・幼児期初めの絵本は読書へステップを踏むとともに、大人とコミュニケーションをとる道具の一つとしても重要。この際、絵本は絵がシンプルでストーリーが単純だがしっかりしたものが良い。絵が派手すぎると情報過多で絵に気をとられ、文章の理解に気が向かなくなる。
・文章を読めるからといって本を読めるわけではない。本を読めるようにするには、良い本を大人が選んで本の読み方を学べるようにすべき。絵が派手すぎるもの、シリーズもの、原作をダイジェスト版にしたものはやはり同様に回避すべき。
・子供にとって良い本は、ある程度読みごたえがあって、読む力を育ててくれるもの、ちゃんと読みこなせばゲーム、アニメよりも面白いもの、世界に対して前向きな姿勢なものが良い。
・読書力は、書き言葉レベルの言葉を使う力、その場にないもののイメージを思い浮かべる力、全体を見渡して論理的に考える力のこと。
・読書はメタ認知能力の発達にも良い影響を与えると考えられる。
・想像力を育てるために、細かな絵ではなく、想像膨らませる余地のある挿し絵がある本が児童書には望ましい。(物語が良いの前提)
Posted by ブクログ
「読書は本当に大切か」という問題提起に筆者が向き合った一つの答え。
「いい本」とは、「ちゃんと読みこなせば、まんがよりもアニメよりもゲームよりもおもしろい」もので「人間や世界について基本的に前向きの姿勢を持つもの」とし、
「読む」精神活動にて①書き言葉レベルの言葉を使う力 ②想像力 ③全体を見渡して論理的に考える力を育み、思春期を支え、大人になる手助けをする。
「なんでもいいからたくさん」という指導、「名作を」という強要。
藤原和博氏の「本を読む人だけが手にするもの」にも指摘あったように、「本の世界に自分自身を投影できるかどうか」が大切なので
その年頃にあった本を息子たちと一緒に手にして読んでいければと思う。
内容は非常に深く賛同できるのだが、根拠となる記述が弱いのが残念。