【感想・ネタバレ】スターリンの図書室:独裁者または読書家の横顔のレビュー

あらすじ

血まみれの暴君は「本の虫」でもあった

スターリンの蔵書は、マルクス、エンゲルス、レーニンの著作はもとより、トロツキーなどの政敵の著作から、ビスマルクやマキャヴェッリなどの古典、トルストイ、ドストエフスキー、ゴーゴリ、チェーホフなどのロシア文学、シェイクスピア、セルバンテスなどの外国古典文学に至るまで、読書の幅はきわめて広い。また、スターリンが興味深く読んだと思われる本には、多数の書き込みが残されていた。本書は、スターリンの膨大な蔵書と書き込みを精査して、その生涯と思索の跡をたどりながら、独裁者の本質に迫る試みだ。
逸話を紹介しよう。旧ソ連首相ルイシコフは、スターリンの蔵書であったマキャヴェッリ『君主論』を入手した。頁にびっしり書き込みが残り、まるで「独裁者の教科書」のようであったという。スターリンが下線を引いた文章を全て抜き出し、整理して出版したら、スターリンによる「マキャヴェッリ概論」になるほどだったと回顧する。
なぜ「知的な読書家」が無用な血を流したのか? 本書は、独裁者の図書室に入室して、その思想と信条から、革命と戦争、国政と外交に及ぼした影響、人格と感情の内奥にまで踏み込む。英の歴史家による、新趣向の伝記。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「嫌っているだけでは、彼がなぜ、いかにしてあのような所業に走ったのかを説明することはできない。」

これは著者による非常に重要な指摘です。スターリンを単なる大悪人と片付けてしまったらそこで思考は終了です。

なぜスターリンは独裁者となれたのか、その背景となったものは何だったのか、それを「読書」という観点から見ていく本書は非常に刺激的です。「読書」というある意味独裁者と結びつきにくいマイナーな切り口から攻めていく著者の勇気には驚くしかありません。非常に斬新です。

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2024年08月23日

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