あらすじ
●なぜ日本の少子化対策は実を結ばないのか? ●少子化にまつわる誤解をデータ・統計から見抜く! ●さまざまなエビデンスが指し示す「婚姻・出産」のリアル 少子化が止まらない日本。理由の一つとして、そもそも「少子化にまつわる誤解」が世に多く流布していると著者は指摘する。たとえば「少子化対策=子育て支援」とだけ考え、手前の「未婚・晩婚問題」が改善されない現状は、誤解が招いた過ちの最たる例だ。本書ではデータ・統計を用いて、これらの誤解を分析・検証。冷静な議論のために必要な知識を提供する一冊。
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Posted by ブクログ
現行の子育て支援は少子化対策としては不十分。なぜなら有配偶合計特殊出生率はさがっていないから(コロナ禍で下がり始めた)。という主張を豊富なデータで議論してる。
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少子化が叫ばれて久しい。
どうやら1991年海部内閣のときから危機感を抱き、少子化対策を行ってきているようだ。
菅内閣では「こども家庭庁」が設立され、現在の岸田内閣では「異次元の少子化対策」と称して躍起になっている。
しかしその実は、子どもを持つ家庭にお金を配るということ、そして議論の中心は財源の話。
本当に、お金を渡すだけで少子化が改善されるものなのか?問題は、その前の未婚・晩婚にあるのではないか?と、かねがね思っていたところで、手に取った本書だが、共感するところが多かった。
諸外国や国内の出生率などのデータを載せた上での要因解析と提案。
やはり学者たるはこうでないと、と感じたところだが、同じ提案をしても出される政府からの案は、相変わらず的を射ていないようだ。
著者がいみじくも言われている、財源を確保して支出を伴う政策を実現することは、政治家にとってはそれ自体が「実績」になる。それが出生率に影響するかどうかはさておき、「児童手当を拡充した」という事実が残るからである、と言うのは、残念ながら腑におちる。
要点
・出生数の低下の趨勢は変えられないため、それを前提に社会の設計を考える必要がある。
・少子化で何が問題なのか、クリアすべき課題(すなわち目的)を整理すること。
・労働力不足が問題であれば、不足しがちなケア労働、農業、建設業などにおいて、効率化や外国人労働力の活用を含めた対策を急ぐ必要がある。
・出生率に関しては、ここ数年は有配偶出生率の低下の影響が出てきたが、全体的には晩婚化・未婚化の影響が大きい。安定した雇用・賃金や住居など、若い人向けの生活保障に向けた対策が必要になる。
・一部の市町村で、出生率が上昇した事例はあるが、若い夫婦を引き寄せるだけであるなら、日本全体での改善には結びつかない。
・時間外労働と転勤は、世界的に見れば珍しい。これらも結婚を妨げる要因になるだろう。拡充すべきは、安定した雇用と賃金のもとで、時間外労働と地理的移動の可能性が少ないような働き方で、若い人が10年後、20年後の自分の姿を想像できるような働き方を広げることである。
少子化対策は、一朝一夕では改善が見えるほどにはならない。
お金を配ると言う短絡的な対策ではなく、社会・経済など含めた、全体の中で改善するしかないだろうし、それが出来るのは政治家のはずだ。
(残念ながら期待は持てないが)
Posted by ブクログ
■地域の人口は政府の方針や産業構造に左右される。
地方で人口が減る大きな地域における雇用の少なさである。
非都市部地域でも工業地帯などで雇用があれば人口は維持できることが多い。しかし、国全体でサービス産業化が進む中、若い女性が都市部に移住する動きを止められていないのが現状。
過疎化が進むと行政サービスの低下や商業施設の減少も進む。住宅価格や生活費は安価であろうが都市的なライフスタイルを望む若い人を引き止めるよい材料が減っていしまう。
■1970年代からの出生率低下の大きな部分は、結婚している人が子供を持たなくなったことではなく、晩婚化・未婚化によってもたらされてきたということ。
少子化に絡んでメディアの取材を受けたり行政関係者と話をしたりしているときに感じるのが、出生率や出生数について考えるとき、どうも「結婚している夫婦」が出発点として想定されてしまっているのではないか、ということ。だからこそ、少子化の課題と言えばすぐに子育て支援の話になるし、政府の少子化対策に付いてメディアが報道する場合も、ほとんどは子育て中の夫婦の意見を集めようとする。少子化対策の文脈であるのなら、まだ子供を持っていない独身の人の話を聞くべきだという発想にはなかなか至らないように思う。
■50年に及ぶ出生率低下の大きな部分が晩婚化・未婚化によるものいうことは間違いない。少なくとも2015年までは、年齢別の有配偶出生率は大きな低下を見せていないどころか、年齢によっては上昇してきたのだった。更に強調しておくべきことは、、この晩婚化・未婚化の水準は出生率の低下が始まる前、1970年代の水準とはかけ離れたままだということ。未婚率は徐々に上げ止まりつつあるが、持続的に下がっていく局面には入っていない。つまり、直近でも晩婚化・未婚化は少子化の大きな影響力であり続けている。
■政府の少子化対策の軸は、有配偶出生率が下がっていなかった段階でも、不思議なことにずっと「子育て支援」であった。しかし、日本人は結婚すればそれなりに子供を持ち続けてきた。ここに「ちぐはぐさ」があることに誰もが気づくはず。
■生まれ育った場所には、親や知り合いも多く、近隣ネットワークもそれなりに充実していることが多いだろう。そこをあえて離れるのには、しがらみを脱したい、都会的な生活をしたいなどの理由もあるだろうが、第一にはやはり働き口がないからだ。
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良書。
日本の大人が一読すべき本。
少子化は多面的な問題。政治家が実績をアピールしにくい。
アピールする政策は危うい。
当面、特に高齢が多く、労働力の確保が最優先。効率化、外国人労働者。
人口減少は避けられず、穏やかに減らすことが大事。
若い世代が子供を持つのを負担にならない社会が必要。収入、時間に余裕がなければだめ。
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未婚と少子化 この国で子どもを産みにくい理由。筒井 淳也先生の著書。少子化を解決するにはこの国で子どもを産みにくい理由をなくすこと。子どもを産むのは女性。女性が子どもを産みたい産みやすいと思うようにすること。未婚で子どもを産むことで不利益にならないようにすること。事実婚や未婚での出産を奨励すれば子どもを産みたい産みやすいと思うようになる女性がきっと増える。法律婚や夫婦同姓が嫌で事実婚や未婚のまま子どもを産むことをためらう女性を応援しないと少子化は解決しない。
Posted by ブクログ
少子化対策と子育て支援の混同は、限られた財政資源の無駄遣いになるだけではなく、未婚化という主たる原因を見て見ぬ振りをしてしまうことで、対策を遅らせる=少子化を進行させることになる。
本書では若干歯切れが悪いが、未婚化の主因は「若者の不安定雇用」ではなく、「若い女性から見て満足できる経済力がある男性がいないこと」なのは各種データから明らかなのだから、議論の精度をそこまで上げていく必要がある。今後はそのような議論をせざるを得なくなってくるだろう。
上記の主因は、若い女性の学歴や就業先の向上の結果であるものの、それがリベラル面で喜ばしいとされるのは、あくまで資本主義(というより賃金労働至上主義)や能力主義(というより受験・就活至上主義)の局面においてのみであり、持続的な社会という公共的な局面では、まさに合成の失敗だった。どちらがいいという話ではない。全てが良い結果になるという都合がいい話はないのである。
このまま「誰もが自由に選択できて、可能性が開かれた(ように見える)先進国」が衰退し、「受け継がれてきた社会規範を変えられない後進国」が残る、そんな皮肉な世界になるのか、それとも上記のジレンマを止揚するような知恵や価値転換(キャリアなんてくだらない、貧しくても家族が一番、子供は公立高校までで十分など)が徐々に浸透していくか。
話は飛んだものの、少子化の議論において、今もっとも誠実な(つまりバランスが良く、時流におもねらない)研究者が、子育て支援金という壮大な失政がなされるタイミングで上梓した意味は大きい。
Posted by ブクログ
「少子化対策とは子育て支援のことだ」、「欧米のように婚外子を増やすことが少子化対策になるはずだ」など、少子化問題やその対策については誤解やミスリーディングな認識が多いと指摘し、少子化は複雑で複合的な問題であり即効薬となる対策はないという認識の下、様々なデータや実情を総合的に見た上で、バランスの取れた少子化対策の方向性を展望。
個人的には、新たな知見となるような話はそれほどなかったが、誤解され、単純化されがちな少子化問題とその対策について、データ・統計等から導出される知見を丁寧に整理し、議論するための土台を提供してくれる内容であり、少子化対策を考えていく上で有益な書籍だと感じた。
出生数の低下の趨勢は当面変わらないため、目先の出生率を上げることより、出生数の低下を前提としても機能する社会をいかに構築するかが重要との指摘は本当にそとおりだと思う。また、出生率向上のためには、子育て支援策の充実より(、すぐに効果を出すことは難しいかもしれないが)、安定した雇用など、若者向けの生活保障に向けた対策が必要という指摘や、自治体ごとに見た場合、働き口があること、住居コストが高くないことが出生率や人口規模の維持において重要との指摘なども、的を射ていると感じた。
Posted by ブクログ
日本における少子化原因の重くを占めるのは「未婚化」であるが、「子育て支援」政策の分かりやすさ故にそちらに引き寄せられてしまい、結果とチグハグな少子化対策がなされているという話。働き方改革や転勤等の商習慣にも触れていて、「少子化」という課題が数多くの要因が絡み合った結果だということを再認識できてよかった。
あとは製造業しか勝たん(が、実態として製造業割合を増やすのは難しい)という話も面白かった。
Posted by ブクログ
少子化対策と子育て支援を別物として考えることを論じている。「子育て支援は単なるばら撒き政策」とか、「さらなる出生率の低下」など、メディアの論調に振り回されてモヤモヤしていたのだが、読んだ後は、その靄が晴れた感じがする。
なぜ少子化が問題なのかについても、他の国の状況を挙げて説明。少子化対策成功例のフランスやイスラエルの状況を挙げて、日本との違いも説明されている。
とにかく、少子化対策は一筋縄ではいかないといくことを再認識した。現状(20代から30代の我が子を見てても)結婚すること自体のハードルが高いと思う。いろんな要因で、、、経済的なもの、意識的なもの。
最低でも10年くらいの長丁場で政策を考えてほしいなぁ。
それと、少子化対策と子育て支援を一緒に考えると、将来、少子化が緩和され対策が必要なくなった時、子育て支援も同様に縮小される可能性があると、著者が述べている。目から鱗、だった。