あらすじ
日本語は世界の中で異常といっていいほど特異な言語である。まず発声音数が少ない。日本語の発声音数は、母音と子音の組み合わせで、せいぜい120個前後である。それに対し、韓国語はおよそ500、英語はおよそ2000、そして中国語は強弱の変化も含めて何千あるか数えきれないという。もちろんその発声音数はほぼ子音で占めている。さらに日本語には異様に語彙が多い。普通の米国人の大人が会話するのに必要な語彙は5000語で十分足りるという。それに対して日本の小学6年生の児童が知識として必要な語彙は約3万語である。日本語の発生音数が少なくなったことの背景には、日本人が異民族に襲撃されることが少なかったためだと著者は分析する。そのため「おおらかで無防備な、母音中心の言語」が醸成されたのだ。そして異民族に侵略されなかった理由の一つに、日本列島とユーラシア大陸の間に、流れの強い幅約200kmの対馬海流の壁が立ちはだかったことが挙げられる。いわば対馬海流が、日本語の「特殊さ」を守ってきたといえよう。なぜ、異民族からの襲撃が少ないと母音中心の言語になるのかは、本書を読んでいただきたい。一方、日本語の語彙がかなり増えたことの要因は、全国に張り巡られた「水運ネットワーク」だと指摘している。日本語の起源に地形の観点から迫る論考のほか、「ヒトはなぜ、直立二足歩行したのか?――サバンナ説とアクア説」「日本人は12万年前からの氷河期を、どうやって生き延びたのか?」といった日本人の起源に関わる謎解きや、著者がずっと追いかけてきた「赤穂浪士の討ち入りの謎」の完結篇などを収録。長年ダムや河口堰の建設に携わり、日本の地形を熟知する著者が、「気宇壮大だけど地に足が着いた謎解き(養老孟司氏)」を展開する。
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Posted by ブクログ
目から鱗!これはすごい本だ!
日本語の特異性から始まり、直立歩行への進化論。
季節風が日本を豊かにした。そしてピラミッドとの日本との関係性。ロボットと日本人の特異で不思議な関係。
さらに家康の治水事業、赤穂浪士は実は…
「流域」としての包括的な対応の必要性。最後に筆者の個人的意見としているが、高度成長期を支えた1930年世代の独立独歩のパワーには非常に納得した。経験豊かな治水のプロが大胆ながら説得力ある説を披露してくれた、未来を生きる人たちに必読の書。
Posted by ブクログ
全く新しい視点を持った歴史学。治水という観点から太古の昔から現代に至るまで街や都市が発展していったかを解き明かす。
ピラミッドは、ナイル側の氾濫を守るためにからみという手法で建設された。そしてその手法は日本から流れて行ったとの説に驚かされた。
Posted by ブクログ
この本は面白い!
ホモサピエンスの出アフリカは7万年から6万年前と考えられているのに、日本には砂原遺跡(約12から11万年前)や金取遺跡(9万年前から8万年前)の遺跡があり、サピエンスの日本上陸には、12万年前説と4万年前説がある。
これについては人類学的見地からは、4万年前以前の石器を遺したのは、デニソワ人などの旧人であるという説と4万年前以前の石器はあてにならないという説があるが、日本には1万箇所以上の旧石器時代の遺跡があるというのだから驚きだ。
この本では、日本列島にこのように多くの人類が居住していた理由を地形と気候から明らかにしている。現在の異常気象も深刻であるが、今から2万年前のウイスコンシン氷期では現在よりも6度も気温が低く、海面は120mから140m低かったようだ。
このような時代に日本列島に多くのサピエンスが居住してナウマンゾウなどの大型哺乳動物を絶滅させたのだ。
この著者の「日本史の謎は地形で解ける」シリーズは全部で4冊出版されており最初の本を読んではいたが、この4冊目の本はスケールが大きくてとても面白かった。2冊目の文明文化編と3冊目の環境民俗編も読みたいと思う。
この本は「日本人の起源編」である。