あらすじ
恋も友情もあった。人生があった。ここだけが、私たちの居場所だった。
2023年夏、突如として「X」と名前を変えられ、姿を消した世界最大のSNSプラットフォーム、Twitter。たったひとりの人間の思惑によって、居場所を奪われた人たちがいた。無邪気に飛び回る青い鳥を、140字でしか気持ちを伝えられない世界を、愛し続けた作家たちが紡ぐ「Twitterなき世界」の物語集。
収録作
青井タイル 「オタクどもの精霊降臨日(ペンテコステ)」
Twitterが終わろうとしている今、オタクたちはどう生きるか。
足立いまる 「それじゃあまた、Twitterという天国で会おう」
昔、相互フォローになった女性から、突然DMが送られてきた。
乙宮月子 「近くて遠い二人の距離」
学生時代からの友人は、今はインスタグラマーをやっている。
根谷はやね 「もう一人のあなたを作る方法」
誰からも愛される同級生が死んだ。私は彼女のアカウントを発見した。
九科あか 「結論から言うと、ツイッターが一番性に合いました」
私がやってしまったことを告白する相手は、あなたがいいと思ったんです。
斜線堂有紀 「Twitterが終了したので、ここでしか繋がっていなかった助手との関係が切れた。」
探偵と助手として多くの事件を解決したのに、俺はあいつのことを何も知らない。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
大好きな斜線堂先生目当てで購入しましたが、全部何処かしら自分に刺さる部分があって引き込まれました。
Twitterのアイコンで羽ばたいていた1匹の鳥が黒背景ガビガビ白Xになってもうどれくらいの時間が流れたのでしょうか。
Twitterは滅びるべき、私も大いにそう思います。Twitterがあるから失われたものだってあるし、Twitterがあるから負った消えない傷も世界には溢れているでしょう。
でも、Twitterがくれたものもたくさんあるんです。
浮上しなきゃいいのに気分が下がったまま浮上してフォロワーがRTしたネタツイに爆笑しながら自分もふぁぼりつしたり、Twitterで知り合った人がいつの間にかリア友みたいになってたり、本当にたくさん、あの青い鳥が運んできてくれた幸せだってたくさんあったんです。
なんだかそれを思い出して、心がぎゅっと掴まれたみたいになりました。
ありがとうTwitter、きっと私は死ぬまであの黒背景ガビガビXをTwitterと呼び続けるのでしょう。
Posted by ブクログ
10年以上Twitterというインターネットガンジス川を泳ぎ続けてきた身として読まんわけにはいかないってワケ。
特に深く刺さったのは『オタクどもの聖霊降臨日』と『Twitterが終了したので、ここでしか繋がっていなかった助手との関係が切れた。』の二篇。目の前で終わりが加速していくTwitterをボロクソに言いながらそれでも離れることもできず漂う私を泥水みたいな郷愁で包んでくれたので。
オタクどもの聖霊降臨日
一番好き。この鬱屈としていてどうしようもなく拗らせちゃって本当に救いようがないカスとそれをほっとけない誰かの関係性も好きだし、Twitterの澱みの味がめちゃくちゃリアルでたまらない。
どう考えてもその場所でしか生きられなさそうな人って確かに存在して、それはただ単にこちらの感傷でしかなくて本人は案外ケロッと生きていくんだろうけど、なんとかして掴んでいたい、みたいなのに弱い。
それじゃあまた、Twitterという天国で会おう。
いいタイトルだなあ。Twitterとかいう吹き溜まりにも命が芽生えるという希望と、Twitterがうちも外もカスすぎるために滅びるしかないという絶望が同時に存在している。TLを流れ起こる無数の漣の一つにこんなことがあってもおかしくないよなと思うと楽しい。
近くて遠い二人の距離
よく比較対象になるインスタさんの友情出演アツい。たとえTwitterが無くなったとしても、を書いているのはこの話だけじゃないですか。
腹が立つけど好きだし、なんだかんだ離れられない、とか、自分が見ているものと他の人が見ているものが違った、とか、美玖ってつまり“私”にとってのTwitterの投影⁉︎
Twitterの擬人化だ。
もう一人のあなたを作る方法
Twitterの擬人化だ。不在によって存在を意識するとか、興味が湧くこと、ある。Twitterくんにさんざっぱら文句をつけていたくせして、無くなるかもしれないという話を知った途端無理だよ〜〜〜〜いかないでよ〜〜〜〜になった時のことを思い出しました。
結論から言うと、ツイッターが一番性に合いました
わかる。性に合うという表現はなかなかにはまっていると思う。
それにしても主人公は人をツイッター扱いすんなよ。そういう軽視が妹に対する行動にも出たんじゃないんですか⁉︎ねえ‼︎‼︎と思わず大声が出た。そういうところじゃん。
Twitterが終了したので、ここでしか繋がっていなかった助手との関係が切れた。
関係性のオタクが書く関係性の話って面白いんだよ......。Twitterへの複雑な感情といかにその存在に救われちゃってたかを散々やった後に助手に関するこの情報群が出てくる構成の妙、さすがです。適切な距離感を保てる意思と倫理観と薄情さがあるホム沢くんじゃなきこうはならなかったんだろうと思うと、探偵として一番の功績はそこなんじゃないかと思う。