あらすじ
台湾はいかにして台湾になったのか?
台湾海峡をめぐる緊張がにわかに高まっているが、台湾と中国の関係は、「敵か味方か」といった単純な構図で理解できるものではない。台湾から見た中国との「距離感」は歴史の中で時代によって大きく揺れてきた。
他方で、コロナ禍におけるデジタル担当のオードリー・タンの活躍や蔡英文大統領下での同性婚の合法化など、国際的にも存在感を発揮する台湾。こうした台湾の独自性、「台湾人」としてのアイデンティティはいかにして育まれたのか? そして複雑に錯綜した国内外の対立関係をいかに乗り越えようとしているのか?
第二次世界大戦後の国民党政権による一党支配体制、そのもとで繰り広げられた反体制運動と政府当局による弾圧――民主化以前の台湾をめぐる政治的争点を紐解きながら、冷戦期の国際情勢の変化を読み込みながら、「反中/親中」あるいは「反日/親日」という二項対立では理解できない台湾社会の複雑さに迫る。そして、台湾の成り立ちに欠かせない日本、アメリカ、中国との関係をも、「人」を起点にふんだんに描き出す。
数々の歴史的なねじれ目をほどきながら理解の深まる、スリリングな台湾現代史。
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以下、目次
第1章 多様性を尊重する台湾
第2章 一党支配化の政治的抑圧
第3章 人権問題の争点化
第4章 大陸中国との交流拡大と民主化
第5章 アイデンティティをめぐる摩擦
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
中国との「距離感」によって時代ごとに大きく揺れ動いてきた「台湾のアイデンティティ」の来歴を解きほぐす。
バランスの取れた筆致で、台湾の人々のアイデンティティの模索をめぐる複雑な歴史的背景について理解が深まった。特に、国民党一党支配下の政治的抑圧、人権侵害については、これまであまり知らなかったことであり、その苛烈さに驚愕した。また、入管行政における台湾出身者の強制送還といった形で、日本もその人権侵害に加担していた側面があったということも衝撃だった。
個人的に、台湾には何度も訪れたことがあり、親近感を持っているが、単に台湾の人々は親日的と捉えるのではなく、このような複雑な台湾の歴史的背景も理解し、台湾の人々も一枚岩なわけではなくて多様であるということを認識する必要があると感じた。
中国による台湾への武力行使の可能性も取り沙汰されているが、現在の台湾の多くの人々が望んでいるように、中国との統一や完全な独立(それが紛争につながらないのであれば、それが望ましいとも思うが)ではなく、中国とは別個の政治的実体としての台湾が今後も現状維持されることを強く願いたいと改めて思った。
Posted by ブクログ
台湾の政治史簡潔に記されてる。
その歴史的な背景から生じる台湾の国民の複雑な思いが理解できる。中国の抑圧的施策が、却って台湾の拒否反応を起こしている事が皮肉だ。