あらすじ
もうイライラしない もっとやさしくなれる
認知症の人に伝わりやすい声かけで、コミュニケーションがラクになる!
認知症研究の第一人者が教える、すぐに使える「言いかえ」フレーズ
「何度も言っているでしょ?!」
「約束したんだからちゃんとやって!」
「いいかげんにして!」
認知症の人と話していると、イライラしてついこんなふうに言ってしまうこともあるのではないでしょうか。
しかし認知症の人にその言い方ではうまく伝わらないため、同じことを繰り返してさらにストレスが大きくなってしまいます。
大切なのは、認知症の人の心を理解して、伝わりやすい言葉かけをすること。
認知症の人に伝わりやすい言葉がけができると、コミュニケーションが改善され、結果的に家族もラクになります。
本書では、具体的な場面ごとに、○✕形式で認知症の人にスッと伝わる言いかえフレーズを紹介します。
著者は認知症研究の第一人者で、40年間にわたって認知症の人の心理学を研究してきました。
その研究をもとに、認知症の人とうまくコミュニケーションが取れる話し方をわかりやすく紹介していきます。
また、認知症の基礎知識や、実際によくある質問へのQ&Aも掲載。
普通に読むことはもちろん、自分に必要な部分だけつまんで読むなど、事典のような使い方もできます。
<掲載されている言いかえフレーズ例>
CASE01 同じことを何度も質問する
×さっきも聞いたでしょ? ⇒ 〇カレンダーにメモしておくね
CASE05 外出するのを嫌がる
×病気になっちゃうよ ⇒ 〇気が向いたら散歩にでも行こうか
CASE08 同じものを何度も買ってくる
×もう買わないで! ⇒ 〇同じものがたくさんあるからメモしておこうね
CASE12 無気力、無趣味になる
×今からそんなに無気力でどうするの! ⇒ 〇音楽でも聴いてみる?
CASE17 薬を何度も飲もうとする
×もう飲んだでしょ ⇒ 〇(サプリメントを渡して)これを飲もうね
CASE24 町内を歩き回って迷子になる
×どこに行ってたの!? ⇒ 〇そろそろご飯の時間だから帰ろうか
CASE29 食べられないものを口に入れる
×こんなもの食べてはダメ ⇒ 〇こっちのほうがおいしいよ
CASE30 家族のことがわからなくなる
×ふざけないで! ⇒ 〇あなたの息子の○○です
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
認知症というものがどういうものなのかを理解したうえで、言い換えフレーズを学べる構成となっている。
この「認知症がどういうものなのか」をわからずして、フレーズを覚えても全く意味がないし、たぶん使い間違ってしまうだろう。
相手のことを理解し、相手の立場に立って、コミュニケーションする。その心の部分ができておれば、おのずとこのような言いかえができてくるのだろうと思う。
たいていは、認知症の方のハンディを無視し、自分と対等のように接するから腹が立ち、心ない言葉を浴びせてしまう。
認知症がなければ、人生の先輩であり、バリバリと人生で成果を出してきた人たちであり、長い人生の苦労も乗り越えてきた尊敬すべき方々であるのに、認知症があるために、どういうわけか上から目線になったり、子ども扱いをしたりという態度となってしまう。
ここに紹介されているフレーズは、発想の転換などプロならではの、テクニックが含まれていると思う。
コミュニケーションの相手が、認知症の方であろうと、健常な方であろうと、その視点の転換、発想の展開による表現の仕方をしることはコミュニケーションの大きな武器となると思う。
Posted by ブクログ
本作、かなりためになりました。
内容は端的にいうと、阪大名誉教授による認知症患者への声掛け言いかえフレーズ集、かな。
・・・
推薦の言葉を書いている池田さんの言葉に「認知症を受け入れる」訓練をしようというのがありました。
そもそも認知症というのは脳の病気だと。老化が不可逆的で、死も避けられないもの、としてそれを受け入れねばならないということなら、認知症も然り。私はそう解しました。そしてそのトーンで言いかえ小ネタパラフレーズが続いていきます。
・・・
多くのフレーズは、事実を述べて諭すことを×とし、認知症患者の印象に沿う発言を〇とします。
例えば、うちの父親は過食なのですが、そういう患者への声掛けとして
×:さっき食べたばっかりでしょ
〇:お茶でも入れようか
という例示となっていました。
本書の良きところは、認知症患者のその認知機能は低下していても、感情ははっきりと残っている、ということを述べている点。
患者は周囲の認知がしづらいので何を怒られているのか分からないけど、その怒られていることに腹を立てる、ということです。この言いかえですと、お茶を入れる→食べたことを認知させる(食後のお茶)、という方向性です。
ゆえに、患者の感情を逆撫でではなく、「順撫で」しようというのが骨子だと思います。
もちろん、過食の場合はそれをよりはっきり認知してもらうために食器をそのままにしておく等のテクニックも例示されております。
・・・
でですが、これってビジネスでもつかそうな気がしました。
特に、すぐになんちゃらハラスメントと呼ばれる日本社会においては応用が利きそうに感じました。
例えばCase4「できないことをできると言い張る(電気製品とかリモコンとか)」の例。
×:しっかりしてよ!
〇:押す順番に番号をつけておいたよ
認知症患者の心「ボタンがたくさんあって覚えられないけど、できないところを見られたくない」
誤解を恐れずに言えば、職場でのOJTなどはかくのごとくになるべきなのかもしれません。つまりみんなきっちりやりたいのにできなくて悩んでいる、という前提です。
私はそこまでempathyが備わっていないので、唯一の部下にも一つミスをしたらwhy, why, whyと結構詰めてしまいます(だってメモも取らないしミスを繰り返すんだもん)。これが日本人だったら私の禅問答みたいな会話は訴えられているかもしれません。。。
ただ、本書のような心持ちで部下に接するのならば(もちろんempathyしっかりが前提)、部下育成も良い方向に行くようなきがします。
・・・
ということで、認知症患者の家族向けのパラフレーズ集でした。
私の我儘も父親が汗水流して稼いだ金のおかげでした。あと彼の命が何年続くか分かりませんが、彼が穏やかに過ごせるよう、親元への訪問頻度を増したいと思います。
本書は折々再読し、家内にも読んでもらう予定です。