あらすじ
幼少時の空襲体験で初めて目の当たりにした“人間の死”、敗戦直後に逝ってしまった兄と父、ジャーナリストとなったのち調査報道を通して向きあった大事故や災害の被害者たち、尊厳死、「がん」で死ぬということ、そして次男の自死――。幾多の死を見つめてきた著者が、自らとのかかわりを振り返りながら綴った渾身の一冊。
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Posted by ブクログ
本書を2/3ほど読み終えて、ふと著者の名前にち注目。てっきり民俗学者の柳田「國」夫と思っていたら、柳田邦夫だったという事実。それはおいといて、生と死の受け止め方について目から鱗の内容だった。単なる精神論ではなく、死生観、臨床、そして生の意味。誰もが直面する死。それを人称でカテゴライズしているのもわかりやすかった。
Posted by ブクログ
ノンフィクション作家が病死やがん死の観点から生と死の問題に向き合った論考集。少年時代の空襲体験と、父と次兄の病死。著者は、そのころから日常のなかに死があったという。
NHKの記者時代より、戦争、災害、事故、公害、薬害など、現場における生と死の形を見つづけた。医師による心蘇生術のためにかえって死にゆく者のよきイメージがそこなわれることがあることも知った。そのなかで57歳の夏に、次男が自死してしまう。聴覚だけは最後まで生きていると看護師に教わり、昏睡状態だった息子に話しかけ11日間やれるだけのことはやったという思いが、その後、愛する者との死別を受け入れることにつながった。
在宅ホスピスという言葉が登場して久しいが、これからの医療に必要なのは、患者とその家族の視点。そして残された人の中に生き続ける故人の精神的ないのちを守ることだという。
(「週刊朝日」 2011/12/02 西條博子)