あらすじ
喫茶店「マーヌル」には、言葉をしゃべるずんぐりむっくりの猫がいる。マヌルさんと名乗る猫は人間をやめてマヌルネコになり、喫茶店の片隅で占いをやっているらしい。しかし占いの腕はなく、気の赴くままに占い、適当なアドバイスを繰り広げるだけ。にもかかわらず、迷える人々は今宵もマヌルさんの元を訪れる……。 がんばりすぎて疲れがちなあなたのために、マヌルさんが「人生をちょっと気楽に生きる方法」を教えてくれます。
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Posted by ブクログ
手を抜いて、生きる方法教えよっか?
マヌルさんの言葉で、真面目すぎてヘトヘトな読者が、もうちょっと適当になれる小説。
適当な占い、だけど当たる。
知りたいことが知れる、モヤモヤしてたことが晴れる。私は読んでみてそうだった。
1話目の断捨離インフルエンサー。
汚部屋に住んでいるけれどSNSではキラキラした所をのせ、徐々に現実を見て何もかもが上手くいかなくなっていく絢未。そんな絢未にマヌルさんは「本当に大事にしたいものは、見せびらかしたりしないもんよ。満たされてるって自覚してれば、他人の承認なんて必要ないんだから」
とても刺さった。私は物理的に満たされているけれど、心まで満たされてない。だから中途半端なんだ。
ふと私も数ヶ月前に大掃除をした。大掃除をする前は手をつけたくもなかった50冊の未読の小説達。部屋が片付いた今は斜め読みで読んだり、文字を眺められるくらい余裕が出てきた。「汚部屋は悪運の始まり」マヌルさんの言葉に小説の中の絢未だけでなく、私も実感できた。
2話目、完璧主義シングルマザー。
完遂主義でなく完璧主義だからか、「母(この本では鞠)」という立場じゃない私でも痛いところを突かれた気分。鞠と違うのは最後までやりきれないのに完璧主義な所。人(子)を巻き込む完璧主義はお互い疲れてしまうけど、私の今の仕事はマイペースでもいいから私の完璧主義を尊重してくれるとても良い所なのかもしれない。自信がつく。その点、私は恵まれてるな…。
3話目、フォーチュンクッキー女子高生。
喫茶店マヌールの店長の娘、叶(かない)と同級生のかよ。周りの友達に合わせて自分の好きを隠す子。絵をからかわれてから学校では描かなくなった子。そんなかよの絵を叶は「自分は好き」という。好きと言ってくれるからまた描き始めるかよに、私も「あなたのここがいい!」って1人でも言ってくれる人がいても耳に、目に入らないくらい落ち込む時が殆どだから、1つの、1人の「いいね」にもう少し目を向けようと思う。
4話目、ホンモノの占い師。
ここでは「占い師」ではなく、「名前」が大きく取り上げられている気がする。この話では妙蓮寺雛菊という女性が出てくる。彼女は小さい頃から視える人で、小さい頃は「きみょうれんじ」と呼ばれていてその名前が嫌いだった。私は「綺麗な名前だな」と思ったのだけど、本人は名前をいじられたことで自分の名前を苦手としていた。かくいう私も自分の名前(本名)が苦手だった。でも漢字の意味や響きを聞いたり、人から「響き可愛いのに漢字かっこいいね」と言われてからはとても好きだ。「佐藤リリー」が彼女の占い師としての名前、マヌルさんの後押しで最後は「妙蓮寺雛菊です」と自己紹介してるので、少しは好きになれたのかなと思うと、「どの目線だ」と言われるかもしれないけど、とても嬉しい気持ちになる。
最後、板挟みマネージャー。
2つの取引先で悩んでる葛城。そんな葛城はマヌルさん(相沢)の元相方で川谷さん(マヌールの店長)の元部下。マヌルさんは花占いや鉛筆で取引先を決めるが、葛城はやる気がないなと一言。マヌルさんは「あんた、もっと自由に生きなさいよ。窮屈そうで見てらんないわ」と。マヌルさんは自由だ。でも言っていることは納得がいく。
最後の最後の一言に「なりたきゃ、あんたにだってなれるのよ。マヌルネコにも、何にでもね」
なんにもない→伸び代しかない
なんにでもない→なんにでもなれる
よく聞く言葉だけど、難しい。けれど大切。なんなら突然Uターンや曲がり角でもきにいらなければすぐに別の道に行くこともできるんだって、その気持ちで行かないとだなって思える小説。