あらすじ
メディアはすべて、事実と嘘の境界線上にある。それをまず知ろう。ニュースや新聞は間違えないという思い込みは捨てよう。でも嘘ばかりというのは間違い。私たちに不可欠となっているメディアを正しく使う方法とは?
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Posted by ブクログ
学生向けのメディア論ですが、
僕みたいなアラフォー世代が読んでもおもしろく、
恥ずかしながら、こんないい年してても「ため」になりました。
メディア・リテラシー
(情報の読み書き能力、
意訳として「読解」と「アウトプット能力」とも言えると思う)
から、メディアがどう情報を編集し演出しているかなどを、
平易で読みすい文体で、
しかし、しっかりした質感の深さでもって
読者に説明し、ではメディアとどう付き合うべきかを問いかけてきます。
テレビ、新聞、SNS、などなどから発信される、巷にはびこる情報がどうつくられていて、
どういう性質で、といったことにはあまり注意をむけない人は多いのではないか。
著者は情報の四捨五入という喩えを用いて、
切り上げられる情報と切り下げられる情報とがあるのだ、と説明します。
また、客観的で中立的な情報などないということも、
本書の中で説き明かしてくれる。
さらに、メディアと、メディアの受け手である僕らとの共犯関係についても、
戦前の日本が戦争に向かった例を出すなどして、
腑に落ちる形で教えてくれます。ここがもっとも大事なポイントでした。
また、メディアの怖さについても解説があります。
ナチスドイツのプロパガンダを例に、
人々を思うようにコントロールしてしまうメディアの使い方があると紹介しています。
というか、現代においてだって、ニュースひとつとっても、
情報の発信手の意図によって、
受け手の僕らはコントロールされていることに、気づける人は気づける。
どんなニュースを報道するか、どんな順番で報道するか、
ニュースの中身のどれを伝え、どれを伝えないか、
あるいは、どれを強調し、どれを軽く付け加えるだけの形で済ますか。
本書を読んでいくと、偏向報道ではない正しい報道など、
この世には存在しないのではないか、
というひとつの現実のあり様が見えてきます。
ただそれでも、マスコミを、「マスゴミ」などと言い、遠ざけすぎず、
距離感やリテラシーをもって関係を保つことのほうが大切なのだ、
いうようななことだって本書は述べています。
真実はひとつ、とするから間違うのであり、
物事の真相はいろいろ複合的な要因に拠っていることがほとんどです。
そうしたことを踏まえて、メディアに接し、情報を扱う。
メディアが進化し多様化する中で、
それに振り回されず、欺かれず、真に受けず、
そして間違って情報を咀嚼した結果、自らも過ちを犯してしまうことを防ぐ意味でも、
本書に書いてある内容を、一度、自らに経験させておいたほうがいい、
つまり読んで考えてみた方がいいと思うのでした。
Posted by ブクログ
見なくちゃいけないのは、その後ろにあるもの。
オウム真理教のドキュメンタリーを作った著者らしく、メディアの報道姿勢や、視聴者の受け取り方をかみ砕いて書いてある。確かに、望まれているものを放送しないと、スポンサーが離れてしまう。だから、極端に言えば、面白おかしく、大勢の好むように番組を作る、記事を書く。それがたとえ戦争に向かって行っても。さらにメディアが発達していき、大手と個人に発信力の差がなくなっていけば、もっとカオスになるだろう。その時、示されているものの後ろにある、切り取られた、隠された情報に思いを馳せることができるように。
こういう本を読むと、メディアを批判的に見ることは大事だと思い、けれどもこういう本を読まない人がメディアを鵜呑みにしていき、また先導していくのではないかと思い。トランプ大統領の支持者と不支持者の学歴とか収入とかそういうのの分析にもあったけど、いやそれ以前にバックボーンが支持政党の差につながるのは当然のことではあるのだけれど。