あらすじ
不登校の息子を連れて故郷に帰った柿崎信郎。30年ぶりの帰郷が「あの頃」の記憶を呼び覚ます。1978年、まだ柿崎がノブと呼ばれていたあの頃。そこには5人の友達がいて、鉱山があった――。今よりも遥かに貧しく辛かった時代に生き生きと過ごしていた少年が父になった今、息子に何を伝えられるのか。汗臭くも繊細な少年時代を描く傑作青春小説。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
柿崎信郎
ノブ。四十歳。祖母が亡くなり、葬儀のため十歳まで住んでいた亀岡に帰郷する。柿崎家は江戸末期から四代続く鉱夫の家系。小学四年生で、身長百二十六センチで仲のいい友達が五人おり、生き物係だった。
智郎
信郎の息子。十歳。小学四年生。
杏子
信郎の妻。看護師。
信郎の祖母
八十八歳で亡くなる。
ウネリン
信郎が小学四年生の頃の友達。仲間内で一番大きな身体。仲間内のリーダー格。
タマキン先生
宮本珠紀。飼育委員会の取りまとめ役。この春赴任したばかりの若い教師。涼しげな目元と艶やかな黒髪が印象的な美人。
チクワ
酷い蓄膿症で年中口が開いている。
禿げ村のおっちゃん
おしゃれサロン影村の店主。カメラと音楽が趣味で、店内にはいつもジャズが流れ、棚には高価なカメラが何台もも並んでいる。
ブタ子
女子リーダー格。かすみ。
諏訪バァ
近所の駄菓子屋。
ガボちゃん
伊賀。仲間内で最も貧乏。クラスで一番小さい。いつもどこかに怪我をしている。母と鉱夫の寮に住んでいる。
片腕軍曹
河原に住む傷痍軍人。
咲子
信郎の姉。
利也
咲子の夫。信郎の義兄。
修
咲子の息子。
楓
咲子の娘。
柿崎喜一郎
信郎の父。十代の頃から鉱山で労働し、頑強な肉体を持っていた。市街地に引っ越し、鉱夫から自動車整備工員に職を変えた。
ダゼ夫
生まれも育ちもこの町なのに、何故か奇妙な標準語を使う。父親は運営サイドの中の幹部クラス。
ニシナユミ
ノブとは幼馴染み。
望月
ノブ達の担任。モッコリマン。
タカオミ
違うクラスにいるノブ達の仲間。仲間内で唯一の山の手の子。運営サイドの子にしては珍しく野球好きの変わり種。
ゲン
守屋元。二十四歳にもなって小学四年生の話に付き合う。子供の頃は神童と呼ばれていた。六年前に東京の有名大学に入学したが、三年後に退学して戻ってきた。酒屋の息子。
飯尾専務
猪野
屈強な鉱夫の中でも一際身体が大きく、若い鉱夫のリーダー的存在。
友子
ケビン・マーカス・ダニエルズ
McDuff,O'Brien, and Cameoka Mining Industryの運営サイドの子。転校生としてやってきた。
オトナ
幼稚園の頃から空手を習っており、細身だがウネリン並みに背が高く運動神経が良い。未確認情報ではあるが既にあそこの毛も生え始めているという噂で、渾名はオトナになった。
ナルト
チクワの弟。
ワッタン
ワタベ。六年生。
Posted by ブクログ
2015/4/19
モッコリマン望月の変化が泣けた。
ノブが「もういらない」と心の中で切り捨てた時に私も心の底から同意したから余計に。
むかし先生も人間やって、聖人じゃないって気づいた時になーんやって思った。
人間やから失敗も手抜きもサボりもなんなら悪意も持ってて当然。変に期待すんなって。
でも今回その一歩先を見たね。
人間やから後悔して勉強して努力するし、また失敗したりサボっちゃったりしてよりいっそう努力するかもしれん。
後悔したり悩んだり間違ったりすることのなんと尊く美しいことか。
全知全能の神様にはできないこと。
ガボちゃんがまっすぐ頑張れてるみたいでよかった。
ウサギが増えてるのもよかった。
ほかのみんなが何してるのかも知りたいなぁ。
Posted by ブクログ
無責任な大人の意見が、実は子供の社会性を育んでるって考え方にハッとさせられた。子供のうちに、「お前の事なんて知らん」みたいな人と関わっていく経験が大事なのね。物語としての出来も秀逸。先生がダボちゃんの更生のためある意味人生を捧げたってくだりは涙もの。読んでよかった。
Posted by ブクログ
戦後のまだ復興期に鉱山の町で少年時代を送った父が息子と二人で、祖母の葬儀に帰省するところから物語が始まる。
息子は学校でいじめにあっていて、登校拒否。父として会話を持たないといけないが、話し始められない。
自分の少年時代を思い出すことから糸口をつかむ。
父親が職工で管理職の家庭の子供たちと対立し、体力にまかせていじめていた。会社が米国の企業に買収されて、やってきた米国人経営者家族。その息子が同級生で、立場が逆転して除者にされてしまう。争い足掻く中で人間関係の作り方と世の中の仕組みを学んでいた。
父は帰り道、自分の来た道を息子に語り始める。