あらすじ
なぜ、時間は過去から未来に流れるのか。誰もが一度は疑問に思ったのではないか。たしかに「時間って何?」とあらためて問われると、明確に答えられる人はいないだろう。生物学的にも、哲学的にも、いろいろな答えはありそうだが、本書は、時間の謎について考える物理学者が「時間はなぜ流れるのか」や「時間はどのように流れるのか」といった問題をとりあげていく。極力数式を使わずに、図を多用し、文系の人にもわかりやすくまとめている。「時間とは何か」を考えていくと、最終的には宇宙の成り立ちにまで話がつながっていく。相対性理論やビッグバン理論から、超重力理論や超ひも理論まで、最新の宇宙論も含め、時間という軸で解説する。さらには、タイムマシンの可能性まで、時間と自然の不思議を満喫できる話題を盛り込んでいる。毎日の雑事に追われる忙しい人にこそ、読んでもらいたい一冊である。
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Posted by ブクログ
物理学者による、
ちょっと難しいけれど比較的分かりやすい、
「時間とはなにか」という問いに答える本。
その性質上、特殊相対性理論と一般相対性理論を扱っていて、
本書の半分以上は宇宙論にもなっています。
重要なキーワードは「エントロピー」でした
このイメージを掴んでおかないと、
時間の流れについてもイメージが湧きません。
エントロピーについては、
僕はたとえば比喩的に、
遊び場でも、仕事場でもネットの掲示板でもいいですが、
「場」というものが壊されてしまうことを、
エントロピー増大にかけて、
「世の中はエントロピー増大に向かうものであるから、
エントロピーを増やすことは難しいことではなくて、
エントロピーを低くしていくことのほうが
つまり情報量を増やすことでもあってそれこそがかけがえのないことで、
場を壊すなどというエントロピーを増やす行為よりも、
場を作るというエントロピーを低くする行為を大事にしていかないか」
とどこかで書いたか考えたかしたことがあります。
生命の誕生っていうものも、家を作ったっていうことも、
エントロピーを低くする行為なんですよね。
宇宙のエントロピー増大っていう流れに逆らう行為にこそ、
面白みと生きがいはあるんじゃないのかって思いました。
そこでこの本ですが、エントロピーを重要視しています。
人間の進化にしたって、原子力廃棄物だの二酸化炭素だのゴミだのが
エントロピー増大にあたるとしていて、
人間の進化だけをみてエントロピー低下とはみなさない、
となっていました。すごくマクロな見方です。
宇宙の始まりから、最新の物理学のトピックまで、
面白く読めました。
超ひも理論はこの世界を10次元と考え、
M理論というのが11次元と考えるという区別ができたし、
僕らが認識する空間3次元と時間1次元のほかの余剰次元は、
ミクロの域にまで折り畳まれていて観測することも出ないと考える
科学者が多いこともはじめて知りました。
そういうわけで、
すべてはっきりとは理解できませんでしたが、
物理学の面白い読み物でした。
Posted by ブクログ
生物の体内時計からエントロピー、相対性理論、ブラックホール、ビッグバン、そしてタイムマシンや時空論までも平易に紹介。特にエントロピーや相対性理論は時間に関係する事項に絞ってよく整理されて分かった気にさせてくれる。
光速を超えるタキオン粒子によるタイムマシン実現の説明が面白い。高速に近い速度で航行する宇宙船に地球から送ったタキオン粒子通信に対し宇宙船から返信すると、過去の地球に返信が届く。 狐につままれた感じだが、タイムマシンとはそもそもそういうものか。
最後の時空論では、超重力理論、超ひも理論、M理論を10ページ足らずの中に凝縮。
読み物としては十分。
Posted by ブクログ
「時間の矢」について。2001年の『図解雑学 時間論』を改稿したものらしい。物理学者による興味深い話がいろいろ。
古典物理,量子論含め,物理の法則はそのほとんどが時間反転に対して不変。なので,時間の流れに向きがある必然性って実は明らかでない。時の流れの起源を探る。
もちろん,絶対時間・絶対空間を否定した相対性理論の解説もあり。アインシュタインはマッハの影響を強く受けてるのだが,マッハの思想は重要。絶対時間,絶対空間が信じられてた19世紀末に,物質がなければ時間も空間もありえないと喝破した。速度の単位マッハもこの人。
時間の矢は熱力学で現れる。摩擦や拡散といった不可逆過程は,過去へ向かっては起こせない。これは孤立系のエントロピーが時間とともに増大するという第二法則。微視的な場合の数が多く割り付けられた巨視的状態が実現すると説明される。部屋の片隅に空気が集まっている状態は確率的にありえない。
時間の流れとは,エントロピーが増大する流れ。でも大事なのは,宇宙が低いエントロピーの初期条件を用意してくれたこと。最初の状態が熱平衡とはほど遠かったために,時間の流れが生じたのである。そしてどこへ向かうか。19世紀には宇宙は熱的に一様な「熱死」に向かうとされていた。
しかし重力を考慮に入れた重力熱力学では,もっともエントロピーの高い状態は,宇宙のあちこちにブラックホールがぼこぼこあるような状態らしい。宇宙論的時間の矢。宇宙は膨脹しているが,その宇宙膨脹が低エントロピーを供給してくれている。最初の星が核融合反応をしつくしてしまうことなく核融合が途中で終わったために宇宙に大量の水素が残った。この宇宙膨脹による低エントロピーが,宇宙の進化,生物の進化をもたらした。進化はエントロピーが減少していく過程。「宇宙が…適切な速さで膨張を始めたこと…があらゆる種類の時間の流れの原因と考えられるのです。」p.196
タイムマシンについても紹介。ワームホールやタキオンは実在が確認されていないが,普通の物質でできた高速回転円筒によってもタイムマシンが構成できるんだという。原子核の密度くらいの巨大円筒を,軸周りに高速回転すると時空が引きずられて,円筒付近では何物も円筒の回転方向に逆らって運動することができなくなる。通常時間は未来にしか行けない一方通行,空間はどちらでも自由に行けるのだが,高速回転円筒の近傍ではこの時間と空間の性質が逆転。すなわち,空間を一方向にしか行けなくなるかわり,時間をどちらにでも進めるようになる。
勉強になる。でもいつもちょっと疑問に感じるのは,エントロピー増大の話で,ある巨視的状態がいくつの微視的状態で実現されてるか勘定するとこ。どういう微視的状態を特定の巨視的状態として観察するかは,すごく恣意的な話ではなかろうか。微視的状態としてはすべて区別がつくはずなのに。
Posted by ブクログ
物理理論をもとに時間とは何かの研究成果を述べる。時間と空間は時空として離れたものではない。相対性原理、宇宙論、なるほどと思ったが、時間研究の最前線の章は分からないところが多かった。
Posted by ブクログ
多大な興味を持って読み始めたが、結局内容の半分も理解できず、表題の答えもわからぬまま終わってしまった。元来理数系には弱いが、これほどまでにわからないとは何とも情けない。時間が流れる理由を熱力学を用いて説明しているのだが、エントロピーの概念が理解できずお手上げ状態になった。
Posted by ブクログ
普段考えもしないことを考えさせられました。その分、脳内の普段使っていない部分を使ったような気分です。
時間を考えることは、物理学を考えることになるんですね。そして、必ず相対性理論の話になる。でも数式や難しい言葉は出来るだけ控えられており、とてもわかりやすかったです。もちろん、私の頭が固すぎて理解出来ないところもありましたが。
タイムマシンが出来たらどうなるんだろうなー