あらすじ
※本作品は、2021年発売の単行本版『スモールワールズ』を文庫化した作品となります。重複購入にご注意ください。
2022年本屋大賞第3位
第43回吉川英治文学新人賞受賞!
共感と絶賛の声をあつめた宝物のような1冊。
夫婦、親子、姉弟、先輩と後輩、知り合うはずのなかった他人ーー書下ろし掌編を加えた、七つの「小さな世界」。生きてゆくなかで抱える小さな喜び、もどかしさ、苛立ち、諦めや希望を丹念に掬い集めて紡がれた物語が、読む者の心の揺らぎにも静かに寄り添ってゆく。吉川英治文学新人賞受賞、珠玉の短編集。
ままならない、けれど愛おしい
「小さな世界」たち。
1冊では滅多に味わえない満足感!
親族を殺した相手と文通する女性の話や、15年ぶりに娘と名乗る男にあった男性など、
6つの物語が詰まった短編集。
ネオンテトラ/魔王の帰還/ピクニック/花うた/愛を適量/式日で構成されています。
各物語に総じて言えることは、どの話もあなたの心を動かすこと間違いなしということ。
特にオススメなのは「魔王の帰還」です。
私は現在20代後半なのですが、人生で一度も味わったことのない感情に動かされ、
「人生まだまだだな」と思った記憶があります。
短編集ですが、1話で1冊以上の充実感を得られるはず。
本好きの方はもちろん、忙しくて読書なんて!という方にも届いてほしい作品です。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
どの短編も個性的な設定で展開が全く読めずドキドキして面白かった。重い話が多いけど、深いと思わされるセリフや優しいラストもあり良かった。一穂ミチさんの本を初めて読んだが、作風が好きなのでこれから他の本も読みたいと思う。
各話の感想は以下です。
【ネオンテトラ】
笙ちゃんを見る目が子供を見る目ではなく異常で怖かった。不穏な空気の話だと思って身構えていたけど、ラストは予想以上にゾッとした。
【魔王の帰還】
お姉ちゃんがかっこよすぎる。自分もこんな風に生きたいと思った。離婚届けの真相が予想外で涙した。思いの強さの勝ち負けの話が、勇さんの「綺麗な思い出のまま死にたい」という気持ちよりも、お姉ちゃんの「最後まで一緒にいたい」という思いが上回ったことを示唆していて良かった。
【ピクニック】
希望のあるラストと見せかけて、最後が怖すぎる。警察が正しかったのか...
【花うた】
ピクニックやネオンテトラの最後に恐ろしい締め方だったので、警戒しながら読み進めたが、優しい終わりで安心した。脳震盪は因果報応だけど、生い立ちを考えると少し同情してしまう。パズルの話が深いと思った。
【愛を適量】
久々に再会する娘が息子になっているという設定が斬新で面白い。佳澄に利用され元の寂しい生活に戻るバッドエンドかと思ったので、優しい終わり方で良かった。
【式日】
2人の好きの違いが切ない。自分は嫌われてもいいけど、嫌いにはなりたくないという気持ちで、先輩とは別の形だけど後輩にとっても大きな存在だと分かって良かった。
他のレビューを読み、後輩が笙ちゃんだと気付いた。「ネオンテトラ」や「妊娠」や「アル中の父親」ってそういうこどだったのか。だとすれば、余計に切ない。事なかれ主義だった先輩が自分の意思で未来を切り開こうとしたことだけが希望だ。
匿名
初めて読む作家さんではあったが、人間の小さな心の機微を書くのが上手だなと感じた。
特に「ピクニック」「愛を適量」の2編が気に入った。
「ピクニック」は母親にも祖母にも感情移入してしまい、小さな娘の命が失われたばかりなのに犯人扱いし心を壊してくる医者や警察が敵に思え憤りを感じながら読んでいたのに最後でひっくり返される。でも祖母が悪い訳でもなく、刑務所に入る事に意味もなく、真実を見つける難しさと適切な医療へと繋げる難しさなど、リアルだからこそ色々と想いを巡らせてしまった。
「愛を適量」ではどちらの心情も理解でき、泣けた。親子そろって不器用で適量が理解できず、周りから見放されてしまったが、娘(息子?)からの接触で、再び少しずつ歩み寄り、お互いに未来に向けて歩き出せたのかなとポジティブな感情になれた。
他のお話もライフステージの変化や読む時期などで刺さったりするのかな。
Posted by ブクログ
一穂ミチ作品は初めて。2022年本屋大賞3位、文庫解説は辻村深月と来たら読まないわけにはいかないよ。
短篇集だけどどれも大変読みやすく、それなのに読み応えもあって夢中で読んでしまった。
ネオンテトラ
美和はなかなか子宝に恵まれず、夫の不倫も気づいてはいるが表面上は何事もなく過ごしていた。
父親に罵声を浴びせられている笙一を見かけて、姪の同級生ということもわかり、家に帰りづらくなっている彼を構うようになっていく。家庭も仕事もイマイチな自分が、不思議と彼と時間を共有する間はホッとしていた。
ある日不在にしていた自宅で姪と笙一が身体を重ねていることを知った美和は、ある計画を実行する。
魔王の帰還
離婚すると言って巨体の姉が出戻って来た。鉄二もスポーツ推薦で入学した高校を退学となって実家へ戻ってきて、やっとその生活にも慣れてきたところだったのに今なぜ。
新しい学校では浮いた存在の鉄二は、同じく浮いていた住谷と姉をきっかけに話すようになり、なぜか3人で金魚すくい大会出場のため練習に励む。やがてそれぞれが抱えていた事情や、離婚の原因を話さない姉のことも気掛かりとなって…
ピクニック
祖父母、夫婦、その娘という一家を見守る視点から始まる物語。
あの日、何が起こったのか。
花うた
傷害致死事件で兄を喪った深雪は、犯人である秋生へ手紙を送る。時に怒りをぶつけ、時に半生を語り、被害者と加害者の想いに変化が。
更生プログラムを受けている秋生、それが修了する春に面会の約束を交わした。だが所内での転倒事故で秋生は次第に記憶が朧げに、読み書きも不自由になっていってしまう。
愛を適量
「昨夜の電話で、好きなだけいていいって言ったろ」と言いながら現れた娘は、男の姿だった。離婚後の面会も乏しくなって15年。
自分の身なりも住まいも手を掛けず、仕事も最低限の働きのみで寂しく暮らしていた慎悟は戸惑いながら、久しぶりに娘との同居生活が始まった。タイへ渡って性転換手術をするという娘に何と声を掛ければいいのか。
料理の適量がわからないように、生徒へ向けても家族へ向けても愛の適量がわからずにいた。
式日
定時制高校に通っていた頃の後輩から「父の葬式に来てくれないか」という連絡を受け、遠いところまで出向いた自分。ネオンテトラの笙一のその後を描いた作品。
スモールスパークス
Posted by ブクログ
ネオンテトラは、解説で辻村さんが言っていたことと同じストーリー展開を想像していた人なので初っ端から度肝を抜かれた。式日は後輩が先輩に救われていたことが先輩に伝わってよかったし、2人の関係がこれからも途切れずにいてほしいなと思う。
Posted by ブクログ
初っ端のネオンテトラの話から出鼻を挫かれました。心温まる話かと想像して読んでいたのに、思いがけない方向に話が進んでいき驚きました。心にぽっかり開いた穴に何を埋め合わせるか。ネオンテトラ?子供?第一話から独特な一穂ミチワールドに迷い込んでしまいました。
魔王の話でも、真央が心に開いた穴を何かで埋め合わせしようとしているような。その後も過去に父親から虐待を受けていた子や、久々に再開した娘からお金を擦られた父親など、独特な境遇の主人公が次々と出てきますが、全員が苦しい境遇の中で希望を見つけて、もがきながら生活している。フィクションなのは承知ですが、読んでいる側も少し心が痛くなるそんなお話。
「嫌われたらそこで終わりじゃん。好かれたら始まっちゃうから、そっちの方が怖いよ。」
辻村先生のあとがきでも触れていましたが、この言葉が一番印象に残っています。ちょっと共感できる。
Posted by ブクログ
短編集
それぞれのストーリーの最後に次のストーリーに繋がるフレーズが入ってるなと思って注意していたのだけれど、全ての作品で見つける事ができなかった。
好きだったストーリーは魔王の帰還と愛を適量、花うたかな
短編で読みやすく、すぐに読めてしまった。
花うたは、紙の本だからこそのストーリーだなと思った。二人が結婚しているのは最初にわかって、そうなっていく過程が手紙のやり取りで綴られていく。
面白かった。
ピクニックも嫌いではない。
最後にわかる真実にぉぉと思う(しんじつとまみ これもワザと?)
やっぱりお祖母さんだったのかと。でも、記憶がない状態での出来事なので、結末は悲しいけれど少し安堵してしまう。
一穂ミチさんて、少しスパイシー