あらすじ
「非ユークリッド幾何学、集合論、囚人のジレンマ、ゲーデルの不完全性定理、自己複製マシン、ゲーム理論、量子の非局在性…フォン・ノイマンの休むことない知性を追いかける旅だ」――『ガーディアン』紙単なる評伝を超えて、本書は20世紀半ばの驚くべき科学発展を明らかにし、ジョン・フォン・ノイマンというひとりの男の物語をたくみに編み上げている。――ザビーネ・ホッセンフェルダー(フランクフルト高等研究所)「同僚のあいだでは、彼は実は人類よりも優れた種の末裔なのだが、人類を詳しく研究して完璧に真似できるようになったのだ、などという冗談さえ飛び交っていた。…フォン・ノイマンが20世紀中頃になした数学的貢献には気味が悪いほどの先見性があった。そんな感が年々強まっている。…彼は実はタイムトラベラーで、地球の未来の舵取りに欠かせなくなることが彼にはわかっていたアイデアの種をこっそり蒔いていたのでは、と勘ぐりたくなる。…だがフォン・ノイマンは単なる知的パズルでは、そこにどれほどの深みがあろうと満足できなかった。彼はその数学の才を応用できる新たな実用分野を絶えず探しており、どの分野を選んだときにも、人間社会の諸事に革命を起こす可能性を嗅ぎつける確かな嗅覚を活かしていたようだった」(はじめに)20世紀科学史における異才にして天才、そして「悪魔の頭脳」と呼ばれた男の全仕事を鳥瞰するベストセラー評伝。「身の回りに目を向ければ、ジョニーの指紋が至るところに付いていることがわかるはずだ」(はじめに)
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Posted by ブクログ
身の回りにあるコンピュータの基本構造を設計した科学者ノイマン。現代稼働しているコンピュータはノイマン型コンピュータの枠をまだ出ていない。ノイマンが天才であることは知っているので、どれくらい天才なのかを知るために読んだ。ノイマンの業績としてはコンピュータだけではない。核兵器開発やゲーム理論、人工生命などに及ぶ。現代生活の基盤や危機の原因などは現代まで影響を及ぼしている。ノイマンは未来が見えていたのだろうか。きっと見えていたと思うが、そういう人ほど短命であるのが残念だ。少し難しい本であるが、科学好きでノイマンについて知りたいのなら読んだ方がいい。
Posted by ブクログ
ガーディアン紙が本書を説明する「非ユークリッド幾何学、集合論、囚人のジレンマ、ゲーデルの不完全性定理、自己複製マシン、ゲーム理論、量子の非局在性…フォン・ノイマンの休むことない知性を追いかける旅だ」この言葉通り、数々の功績を解説しつつ、ノイマンの人となりにも触れているのが本書。
功績における影響が甚大で、そこから世界が変わっていった事を考えると、まるで逆算して未来から世界を導いたようにも見える。また、頭脳が異常値過ぎていて、タイトルの通り、「未来から来た男」となるのだろう。「火星人」とか「悪魔」とも呼ばれていた。
本書はそうした功績を一つ一つ解説していくので、それがどれだけ凄かったかという雰囲気は分かるが、その中身は難解だ。着いていけるはずもない領域でもあり、仕方ない。
フォン・ノイマンは普段から、準備をし過ぎないスタンスとで講演に臨んでいた。話の内容は会議へ向かう列車のなかで考え、メモを持たずに会場に現れると、数式を書き殴る。彼ほど理解の早くなかったほぼ全員 ー とあるが、彼を理解できた人は同時代から多くないのだから。
その分、3カ国語の何語でも際どい冗談を言って場を和ませることができ、議論が張り詰めてくると実際にそうしていた。他人の発表がつまらなかったときは、集中しているそぶりをしつつ、頭の中では部屋を出て、別のもっと面白い数学の問題について考えていたなど、エピソードを楽しむ。
ー 私は大のチェス好きだったので、もちろんこう返した。「ということは、ゲーム理論とはチェスのようなものだと?」「いえいえ、違います」と彼は言った。「チェスはゲームじゃありません。明確に定義された計算処理形式の一種です。現実問題としては解けないかもしれませんが、理論上、解は存在するはずで、どのような盤面にも正しい手順があります。本当のゲームはそれとはまるで違います。実生活はそういうものじゃありません。実生活をなしているのは、はったりとか、ちょっとしたごまかし戦術とか、自分の目論みを他人がどう思うかという自問とか。これこそ僕の理論でいうゲームというものですよ」
非合理な駆け引きこそゲームであり、合理性を競うテーブルゲームは計算処理に過ぎない。一度言ってみたい神やAIの領域である。