あらすじ
■80年代金融自由化からバブル崩壊を経て、恐怖の金融庁検査、対話型への転換、地域金融の再定義まで、40年間にわたる地銀史をキーパーソン二人が明かす。
■一人は大蔵省の護送船団行政の原体験をもち、金融庁長官として「金融処分庁」から「金融育成庁」への大転換を実行した遠藤俊英。もう一人は、広島銀行に30年勤務したのちに金融庁に転じ、歴代長官を支えた日下智晴。役所と銀行の生々しい現場体験をもとに、地銀と行政の実相を描く異色の金融史。
■専門人材不足だった大蔵省、金融自由化に翻弄された地域金融、恐怖と混乱をもたらした金融検査、歴代長官の金融行政の舵取り――当事者ならではの視点で率直に語る。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
金融自由化から金融庁による厳格な検査、そして対話型行政への転換まで、地銀改革の40年を描いた一冊。著者が「行政」と「現場」双方の立場を経験しているため、制度の意図と現場の実感のギャップが生々しく伝わってくる。
特に、金融検査マニュアルが現場の融資実務に与えた影響や、「短コロ」ができなくなった弊害についての指摘は印象に残った。行政の方針が必ずしも現場の信用創造機能と一致しない現実は、金融機関に身を置く者として共感する部分が多い。
同時に、「処分庁」から「育成庁」、そして「共創」への転換は、行政と地銀がともに地域経済を支えるための方向性として重要だと感じた。日々の業務でも、制度の背景や意図を踏まえ、行政との対話を通じて柔軟に対応していく姿勢が求められると改めて考えさせられた。
Posted by ブクログ
政治家、官僚(一部の学者)は無謬性の呪縛に取り憑かれている。彼らは誤りを認めることができないので、間違った政策であっても延々と継続されてしまう。
バブル崩壊後の日本の凋落ぶりから、私は上記のような思いを持っている。そこで本書である。
元金融庁長官の遠藤氏が「在任時の苦悩を実に率直に述べておられる」ので驚いた。退官後ではあるが、所属官庁の政策について批判的に語る姿勢は尊敬に値する。
大手地銀の広島銀行から金融庁に転じた日下氏の双方向の視点も参考になるし、金融エディター玉木氏の見解も妙な偏りがなく公正なものだと感じた。
読者を選ぶ書籍だが、金融業界、特に地域金融機関に勤務しているなら読む価値はあると思う。
Posted by ブクログ
金融検査マニュアルの弊害と地方活性化に関する事例が学べる。
地銀の歴史、行動意識、文化についても分かりやすい文章で書かれている。
保証会社に勤めている人は読んだほうが良い。
Posted by ブクログ
検査マニュアルの最大の問題は、「短コロ」ができなくなったことだというのが、本書を執筆した金融庁関係者の認識らしい。
これには驚いた。
手形貸付を減らして当座貸越を増やせば条件変更で不良債権扱いの疑義は生じないはずだが、現実には手形貸付は減り、証書貸付が増えた。それがなぜだか著者には見当がつかないだろう。
ちなみに、検査マニュアルの廃止は国際的な償却引当ルールの厳格化に平仄をあわせることが目的であって、国内金融の円滑化は建前の目的にすぎない。
Posted by ブクログ
地銀改革史 回転ドアで見た金融自由化、金融庁、そして将来
著:遠藤俊英, 日下智晴、玉木淳
本書は、立場は違うものの、地方銀行、地域金融行政に長く関わった3人の合作である。そして金融庁と地銀の両方の支店で立体的に描かれている。
地銀改革史は裏を返せば、金融庁自身の改革史でもある。相互不信に陥った地銀との関係を修復し、どうすれば信頼関係を取り戻すことができるのか。相互に運命共同体になることで地銀経済を活性化させる共通価値を創造できないのか。金融処分庁から金融育成庁への転換を思考した遠藤氏、地銀から金融庁に身を移した日下氏の思考回路を綴ることで、地銀改革の意味を映し出しながら表現している。
本書の構成は以下の6章から成る。
①金融自由化の時代
②金融処分庁の時代
③金融育成庁の時代
④金融共創の時代
⑤金融挑戦の時代
⑥座談会 金融庁模索の時代
読み手の立場や環境によって、得られるモノも違い、感じ方は様々ではあるものの、共通して言えることは、目の前のお客様への貢献、地域への貢献、日本への貢献からの持続可能な成長・発展を目的としている。
時代により相対する立場であったり、ある意味、戦略的パートナーであったり、仲間であったりその関係性は、表面的な関係性の変化に留まらず変化している。
組織という大きな括りでの対話・真の協働ということは、叶いきれていないかもしれないが、組織の枠を越えて、個人同士の心のつながりである、強い個人同時での絆は確実に増えてきており、その強い個人・絆が組織を変えつつある。
私たち読み手にとって、これほど臨場感ある、改革史にはなかなかお目にかかれない。それは、改革を成し遂げた当事者によって書かれているからである。世界や日本という大きな視点を持ちながらも、地域や組織、それだけではなく、目の前のヒトとの交流や細かな業務や心の揺れ等も表現されており、「鳥の目・虫の目・魚の目」という絶妙なバランスでリアルな空気感で記されている。
私自身も金融業務に関わって22年目となるものの、大きな括りでの視点というフィルターを通して、現状の業務を振り返ることは、真の意味で本書との出会いで初めて行ったのかもしれない。
そして、多くの読者が本書によりあらためて、自身の業務と外の世界とのつながり・関係性を見直すきっかけをいただいたと感じる。
金融改革を成し遂げるという大きなインパクトへの直接的な関わりは出来ないかもしれないが、「個の力」と「個と個のつながり」が大きなうねりとなり変革に貢献している。どれほど大きなうねりへの貢献が出来るかはわからないが、熱い気持ちと大きな展望を持ちながら出来ることを愚直に行い、周りの仲間への貢献と成長の中でその一部となりたい。
まだまだ出来ることは多くはないものの、今だけではなく、未来に向けて歩みを止めることなく進み続けたい。
先輩方の大きな生き様を見せていただき、自身の覚悟を行動に直結させていきたい。
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