あらすじ
T字迷路、行き止まり実験、水包囲実験、綱引き……
ユニークな実験の中でダンゴムシが取る行動は、この身近で小さな生物に「心」があることを示唆する。
ダンゴムシへのさまざまな実験を通して、「心とは何か」の問いの答えに迫る科学書の名作がヤマケイ文庫化。
■内容
はじめに
第1章 心とは何か―「心の定義」を提案する
心とは言葉である/日常的な心の概念/内なるわたくし/心の気配/隠れた活動部位/心の実体とその遍在性/心と脳/感情としての心/器官としての心/「裏」としての心/
魔の二歳児/心の成長/魔の出来事/心は現前するか/思いもかけない大泣き/未知の状況/心の現前/空は緑色/オレンジの絵を見ながらメロンジュースを飲む実験/
甘いみそ汁の味がする水/抑制と潜在/石の心/心を見いだす流儀/ジュラルミン板の心と職人の流儀
第2章 ダンゴムシの実験
会社で学んだこと/ダンゴムシとの出会い/ダンゴムシの生態と分類/ダンゴムシの体と生活/あなどれない飼育/交替性転向/交替性転向の意味と仕組み/
特定行動としての交替性転向/未知の状況としての多重T字迷路実験/変則転向の発現/行き止まり実験/壁登り行動の発現/水包囲実験/泳ぐダンゴムシ/
壁登り行動、再び/ 意味深長なパターンを見つける/「ジップの法則」と予想外の行動/アリも泳ぐ/ダンゴムシで世界へ/勇気と確信/何とかなるさ/
北の大地でダンゴムシ/環状通路実験/障害物へ乗り上がる/壁境界群の行動/水境界群の行動/ダンゴムシの自律性/障害物を伝う行動/道具使用の萌芽——ダンゴムシの知能/
ダンゴムシの綱引き/アンテナにチューブ/弓なりのアンテナ/チューブの杖で、距離を探る/丸くなるのは反射的、元に戻るのは自律的/ダンゴムシの心、再考
第3章 ダンゴムシ実験の動物行動学的意味
心の研究と動物行動学/動物行動学における四つの「なぜ」/擬人化/動機づけ/定型的活動パターンと動物の心/研究者と動物の心/葛藤行動と動物の心/「心の科学」という遺産
第4章 「心の科学」の新展開
心とは何であったか/知能の遍在性/タコとの出会い/タコの分類と生態/エサをせがむタコ/迷路でのタコの行動/予想外の「歩き」の発現/タコの問題解決/
ミナミコメツキガニとの出会い/ミナミコメツキガニの分類と生態/予想外の迷走者と小集団/ミナミコメツキガニは社会を作るか/待つ科学/結び——心の科学と社会
あとがき
文庫版あとがき
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ダンゴムシを用いた実験を中心に取り扱う科学書だが、「心とはなにか」「ダンゴムシに知能はあるのか」といった哲学的な要素も含まれている。
科学者としてのダンゴムシとの付き合い方から人間関係に繋がる内容まで、単なる科学書で終わらない面白さがある。
Posted by ブクログ
先日、垂水の駅前の公園で、さあ、何歳くらいのお子さんでしょうね、下段を覗きこんで叫んでいらっしゃいました。
「あー、ここにもいる。ここにも。」
ママも、一緒にのぞき込んで、ときどき夢中になっていらっしゃるお子さんの写真を撮っていらっしゃるようで、下段の端に座り込んで、お茶など飲みながら一服をもくろんでいたゐた老人は、いつもは平気なのですが、さすがにタバコをくわえるわけにも行かず、だからといって、「あのね、ボク、ダンゴムシには心があるらしいよ。」ともいえないのですが、でも、「あのね、ダンゴムシの心を探した学者さんがいるんだよ。」とか、こころの中で、ちょっと声をかけたくなる体験でした。
まあ、森山さんが「ある」というのが、ホントに心と呼ぶべきなのかどうか、老人にはよくわかりませんでしたが、努力は拍手!ですね。
Posted by ブクログ
心について。
心の評価方法が興味深かった。
心=隠れた行動部位。
心を確認することは、未知なる環境に置かれたときに発現する『隠れた行動部位』を確認すること。
動物実験で、通常心によって抑圧されている行動を発現させるためには、骨の折れる作業が必要なんだろうなと感じた。
準備段階から対象動物に対する理解、付き合いを深めていかなければならない。
様々な角度から実験結果を提示されることで、ダンゴムシにも心があるのかもなぁと同意するようになった。タコやイトヨなども。
あるいは石にも?
生き物はもちろん、モノに対しても、丁寧に扱うように心がけようかと。。