あらすじ
「さて、エディ。こう呼ばれたいなって思う名前はあるの?」
「アシュリー」
本当はそんな名前、考えたこともなかった。〈自分は男じゃないらしい〉という認識は、〈どうも女性のようだ〉とは直結していなかったからだ。それなのに訊かれたら口をついて出た。アシュリーは子どもの頃に可愛がって大切にしていたぬいぐるみだ。
(「エディ、あるいはアシュリー」より)
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性の多様性。移民。失われた日々。喪失。再生。暴力……。
どこにでもあるリアルな世界を、時を越え、現実と幻想とを自由に行き来しながら、未来と希望を信じて描いた短編集。
ジェンダー・アイデンティティの不確かさを自らに問いかける表題作「エディ、あるいはアシュリー」、第63回現代文学賞受賞作「相続」など8作品を収録。
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避けようのない過酷な現実と、その先にある柔らかな希望……。
韓国ファンタジー界の旗手が織りなす物語のタペストリー8編。
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【目次】
■レオニー
■エディ、あるいはアシュリー
■海馬と扁桃体
■正常人
■木の追撃者 ドン・サパテロの冒険
■へその唇、嚙みつく歯
■相続
■メイゼル
■あとがき
■訳者あとがき
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Posted by ブクログ
過去と現在、希望と絶望、生と死など、相反するけれど切っても切れないものを描いている。
人々のさまざまな苦悩は、容易には想像できないものもあった。自分が経験していないからといって社会に問題が無いことにはできない。自分には無い視点であったり、どういう意味だろう、どういう感覚だろうと探りながら読むのは刺激的な時間だった。
現実的でありながら幻想的でもあって、何が起きるのか先が読めないところも良かった。共通して魂の話をしているのも興味深く、うわべではない心を浮かび上がらせている。そこにはあたたかくきらめく核となるものが眠っている……そんなイメージを持った。
特に「海馬と扁桃体」は忘れられない作品になりそうだ。