あらすじ
紀州の山間の小さな町に紅滝という美しい滝がある。その滝には運命の恋と信じた相手に裏切られた姫の、哀しい伝説があった。だが、彼女と男の、逃れることのできない、さだめの、のろいの恋は、そんな生やさしいものではなかった。現代から、大正、江戸、安土桃山、そして南北朝へと、いびつな螺旋を描きながら、二人の恋は繰り返す。切なく愛しい感動のクライマックスに心の震える傑作小説。
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Posted by ブクログ
邂逅と書いて「わくらば」と読ませる。白川道の小説「病葉流れて」を思い出したが、葉っぱが色づいた状態も「わくらば」らしく、そこに邂逅の字を充てる意味のすごさが、読後じっくりしみ込んでくる。
奈良と和歌山にまたがる紀伊山中の深い場所にある紅滝にまつわる切な哀しい恋物語の連作短編集。ここんとこ出会い続けている連作短編集(ex.青山美智子etc)とはかなり味付けが違う。
「望月」姓の男と紅に纏わる女の悲恋が時代を超えて南北朝の時代まで遡っていく。最終話で全ての伏線が回収される。「トレラン会場の場所まで回収するんか!」ってのにびっくりしたのと、「これって火の鳥や、でもそれなら未来編も書いて輪廻をつないで欲しかった」と登場人物たちの辛苦を考慮しない感想を抱いてしまった。
遠田潤子は小説でブルースを奏でる、と思っているのだが、今回のブルースはややレクイエム寄りで土着風味が味わい深い。とはいえ、「アーム式自動閉塞信号機の夜」は期待の遠田ブルース全開やったけど。