【感想・ネタバレ】創造論者vs.無神論者 宗教と科学の百年戦争のレビュー

あらすじ

宗教と科学の長い戦争、なかでも、それぞれの陣営の最も過激な人々である創造論者と無神論者の戦いは、21世紀に入ってますます過熱している。それは、抽象的・理論的な戦いではなく、教育・医療・福祉・行政といった現実をめぐる戦いでもある。本書は、おもに欧米で激しく展開する両者の戦いに密着し、信念をぶつけ合う人間たちのドラマを描き出す。
サッカーの神様・マラドーナを祀る「マラドーナ教会」、『スター・ウォーズ』に感化され、宇宙の平和と正義のために戦う「ジェダイ教」、「空飛ぶスパゲッティ・モンスター」なる異様な創造主を崇める「スパモン教」。乱立するこうした「パロディ宗教」は、近年台頭する創造論への反抗であり、「そもそも宗教とは何か」という根本的な問いかけである。
100年前のテネシー州で、進化論教育の是非をネタに企画された「町おこしのための茶番」が、文字通りの死闘となった「猿裁判」。2005年のカンザス州で開かれた公聴会では、20名以上の科学者・知識人が進化論を否定し、公教育に創造論を組み込むように訴える。そして、「穏健な信仰者」も敵とみなす「新無神論者」の登場で戦場は拡大し、戦いは激化する。
ヒトゲノム解読に成功したコリンズ博士の信仰と友情、新無神論を代表するドーキンスが到達した意外な宗教観、さらに、これから展開する戦いの見通しは――。

目次
序章 本書を導く十の信念
第1章 パロディ宗教の時代――銀河の騎士とモンスターの逆襲
第2章 猿の町のエキシビションマッチ
第3章 ポケモン・タウンの科学者たち
第4章 四人の騎士――反撃の新無神論者
第5章 すべてがFになる
終章 宗教と科学の次の百年
あとがき

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

葬式仏教上等っていう話。

科学が発展途上の段階では人類にとって宗教は必要な機能であったけど、ある程度科学が発展すると宗教は衰退していく。

それぞれの国や地域で文化や習慣と深く結びついているのでなくなりはしないと思うけど、宗教との距離感は文化保存という意味では葬式仏教くらいがちょうど良いんじゃないかな、と。

信仰は神や宗教ではない別のモノに対象を移して消えずに残っていくと思うけど。

最初から最後までとても読み易く大変面白かった。





p. 151
ヒッチンズの戦力として知られる定型句に、「根拠のない主張は根拠なく否定してよい」というものがある。「神が実在する」という途方もない主張をしたいなら、途方もない証拠を出せ。証拠がないなら無視して構わないというのである。またドーキンスに言わせれば、無神論という呼称すら不適切である。なぜなら、無ユニコーン論者、無妖精論者、無サンタクロース論者とは言わない。神についてだけ無神論者と言うのがそもそもおかしい。エビデンスのない神の実在という仮説は、ユニコーンや妖精やサンタクロースの実在説と同じく到底受け入れられず、そうした虚構への仰を強要する宗教は滅びるべきだというのである。


p. 249
また、宗教の生物学的役割の終焉を指摘する研究も興味深い。
カトリック教会に典型的なように、宗教は「離婚・中絶・同性愛・避妊や、その他の生殖・繁殖につながらない性行動」を抑止する教えを説いてきた。生殖繁殖という点では、宗教を信じるのは適応的だったのだ。しかし、一九八〇年代以降、先進社会では(もちろん科学の恩恵で)乳幼児死亡率が低下するなど、生存への不安は大幅に払拭され、生殖繁殖よりも、多様な生き方に関わる個人の選択が重視されるようになった。その結果、高所得の社会ほど宗教離れが進んできたのである。

0
2024年08月11日

「学術・語学」ランキング